ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

羽二重団子 @東京・日暮里

2015年06月09日 | 東京都(老舗)

日暮里駅の東、谷中墓地から跨線橋を跨ぎ、芋坂を下りたところにある、創業が文政2年(1819)という「羽二重団子」。夏目漱石をはじめとする文豪達の作品にもその名前が出てくる由緒ある店だ。駅から近い場所にも関わらず、周囲には寺もあるし、住宅が多いせいか、のんびりとした雰囲気の感じられるところ。建物の傍には史跡を示した立て札などがいくつも並んでいる。平日の午前とあって店の中もまだ静か。庭の見えるテーブル席に案内された。品書きから煎茶セットを注文。店内では課外授業だろうか、近くの中学生らしきグループが当主を囲んで店の取材中。色々な質問をしていたので、興味深く聞かせてもらった。おっとりとした感じの主人は、「大切にしている事は?」という問いに、「変えないこと」と答えていらっしゃったが、ただ変えないだけでは200年も店が続く訳はない。様々な努力あっての「変えない」なんだろう。

程なくしてお茶と団子が運ばれた。皿の上にのった2本の団子は、1本が醤油味で焼いたもの、もう1本が餡子で包んだもの。どちらも平べったい形をしており、串に4つづつ刺さっている。醤油の方は焼きたてという感じではなかったが、とても柔らかい口当たり。餡子の方は淡い色のこし餡で、甘さは控えめでとても柔らかい。さすが「羽二重」と名のつくだけはある。こりゃ、旨い。

店内には古くから使用された道具や帳簿類、歴史的な遺物などが飾られているスペースがある。上野戦争では敗走した彰義隊が店に侵入したそう。その際に置いて行った武器なども展示されている。すごい。そろそろ何組か客が入ってにぎやかになってきた。お勘定をしてもらっていると、主人から中学生諸君に団子が振舞われていた。今の中学生は団子好きかな。自分が中学生の頃っていうと…、全然好きじゃなかったなァ(笑)。(勘定は¥540)

羽二重団子

東京都荒川区東日暮里5-54-3

( 日暮里 東日暮里 根岸 根ぎし 羽二重團子 はぶたえだんご 戊辰戦争 ) 

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上野藪そば @東京・上野

2015年06月08日 | 東京都(老舗)

上野駅から南下すると観光客でいっぱいのアメ横商店街や、昼から酒呑みが集まるガード下の酒場など、人がごったがえしている。そんな雑踏のど真ん中にありながら、蕎麦好きが愛して止まない名店がここ「上野藪そば」。創業は明治25年(1892)というから、数ある藪蕎麦の屋号の中でも、最も早く本筋の「かんだやぶそば」から暖簾分けされた歴史ある店。建物はビルになっているので風情はないが、店先に掲げられた屋根付きの灯篭看板が渋い。伺った時間は午後遅い時間とあって、店内に客はまばら。しめしめ、この様子なら心置きなく蕎麦前が楽しめるというもの。カウンターに囲まれた麺打ち場を眺めることの出来るテーブル席に腰を下ろした。中は改装されたばかりのようで、特に老舗らしさはないのだが、妙に落ち着く雰囲気。力みが無く、自然体。観光客の多い上野だけに外国人客の姿も。給仕の女性は慣れたもので、ゆっくり丁寧に説明している。最近はみな箸使いも慣れたもので、なかなか上手に手繰っていた。啜らない(啜れない)ので旨そうには見えないが。

まずは菊正宗の「「みぞれ酒」を注文。文字通り凍らせたお酒で、陶器の片口に入れられ、塗りの升と一緒に運ばれた。蕎麦味噌の他に塩も付いてくるのがうれしい。汗ばむ陽気だったので、冷たいお酒としゃりしゃりした口当たりが堪らない。他にも頼んでおいた焼き海苔が登場。専用の蓋付き木箱(焙炉・ほいろ)に入れられた海苔の下には、しっかりと火の熾った炭片が入っている。これで海苔はパリパリの状態が保たれるという仕組み。一枚づつ海苔をつまみ、山葵をのせたり、醤油をつけたりして口の中に放り込む。そこへすかさず冷たいお酒をグイッと…。天国。麺打ちの作業を眺めつつ、ゆっくりと楽しんだ。もちろん呑んだあとは蕎麦を追加。こちらには酒呑みに嬉しい、量が少なめの「さくらせいろう」がある。蕎麦はしっかり締められ、喉越しもいい。つゆは藪らしい辛汁。キリッとしていて蕎麦が引き立つ。銅の色をした小さいやかんに入れられた蕎麦湯はサラッとしたタイプ。温かい蕎麦湯を辛汁に足していただくと冷えた胃の中が落ち着いてとてもいい按配。場所柄昼どきは混むんだろうけれど、外の喧騒から逃れて素晴しい時間を過ごすことが出来て、幸せ。(勘定は¥1,800程)

 ↓ 「上野駅」の駅舎は昭和7年(1932)に完成。約2年の工期には「上野戦争」の遺品が多く掘り出され、工事が始まると事故が相次ぎ、あわてて供養を行ったら事故が無くなったとか。

[

上野藪そば

東京都台東区上野6-9-16

 

( 上野 うえの 上野薮そば うえのやぶそば 上野藪蕎麦 上野薮蕎麦 かんだやぶそば 神田薮蕎麦 みぞれ酒 ほいろ 焙炉 海苔箱 )

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ケース・バイ・ケース 1987~1991 / 泉谷しげる

2015年06月07日 | ロック(日本)

ケース・バイ・ケース 1987~1991 / 泉谷しげる (1991)

1991年に発表された泉谷しげるのベスト・アルバム。88年のルーザー(Loser)との名盤「吠えるバラッド」から、下郎の「下郎参上」までの、ビクター在籍時のアルバムやシングルから選曲されている。アルバムからの曲もリミックスされていたり、「New Version」と称されるものになっていたりして、一応、ただの寄せ集めとは違う作りになっている(でもオリジナルと聴き比べたりはしていません)。1、8、10がリミックスされているんだけど、エンジニアはなんとLarry Alexander。ニューヨークのスタジオ「Power Station」を中心に、数々の大物アーティストのエンジニアリングを担当した凄腕だ。HPを見ると、結構日本のアーティストも手掛けたようだ。何かそういうルートというか、流行りでもあったんだろうか。おふざけの16を収録するぐらいだったらシングルB面の「肉弾列車に赤いバラ」とか「ロックンロールにゃ金かかる」を収録してくれた方がよかったのに…。

老け顔だったから気が付かなかったが、88年当時、泉谷はまだ40歳。へぇ、意外。当時はもっといっている印象だった。まぁ、自分がまだ学生だったのでそう感じたのも仕方がないが。「ジジイ達がこんなすげえロック出来るのか…」と学祭ライヴやコンサートを追っかけたりしたなァ。何しろこの頃のルーザーは圧倒的な演奏力だった(あのメンバーなら当たり前だけど)。村上”ポンタ”秀一のド迫力のドラム、何をやってもキマる仲井戸”チャボ”麗市のかっこよさ、バンマスとしても重要だった長年の相棒、吉田健のベース、U2のエッジ(The Edge)に大きく影響されたこの時期の下山淳のギター、どれを取っても逸品だった。泉谷は音程が外れようが、客にヤジられようが、グダグダになろうが、彼らをバックにして好き放題やっていればよかったのだ。とは言いつつも、泉谷は粗暴なようで気ィ使いで、サービス精神の塊だし、メンバーが強者揃いなので、いつも後ろにはかなり気を使っている様子だったが(笑)。

ブックオフにて購入(¥500)

  • CD (1991/12/16)
  • Disc: 1
  • Label: ビクターエンタテインメント
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鶴丸 @岐阜県大垣市 (※閉店)

2015年06月06日 | 岐阜県(西濃・老舗)

創業が明治17年(1884)という岐阜県大垣市の老舗食堂「鶴丸」。JR大垣駅の北側にあり、その佇まいがとても素敵。間口は広くないが、昔の食堂がこうだったろうという典型的なしつらえをしていて、なんともいい感じだ。夏仕様の白い暖簾をくぐって店に入ると、土間の上にいくつかのテーブル席があるだけ。店内に手洗いが付いているのもこういう大衆食堂の典型。給仕は物腰のやさしい主人で、奥のガラス戸で仕切られた厨房の中には調理担当の女将さんがいらっしゃった。こういう食堂で時々目にするが、壁には鏡が張り巡らされている(広く見せる視覚効果?)。壁に並んだ品書きを眺めて迷う。こちらには麺とご飯、おかずがお椀型の2段のお重に入っているという魅力的な「定食」があるのだが、食べ切れないかもしれなかったので、軽く「うどんきし」を注文。実は「うどんきし」がどんなものなのか知らずに適当に頼んだんだけれど…。

しばらくしてうどんきし登場。うどんきしとはつまり、麺はうどん、つゆはきしめんというものだった。なるほど。つゆは白醤油だろうか、薄い色をしていて、きしめんのつゆらしく、刻み揚げと鰹節が散らされている。麺はやわめの茹で加減で、やさしい口当たり。つるつるっとあっという間に平らげて、甘味のあるつゆもいただいた。丼ぶりものも充実しているので食べてみたいし、次はなんと言っても「定食」を食べてみないと。(勘定は¥450)

この後の記事はこちら

※残念ながら令和2年5月末を以って閉店されました

 ↓ 食事後に訪れた美濃赤坂。下左は「赤坂港会館(旧・警察屯所)」(明治8年(1875)・建造・復元)と、「榎屋旅館(旧・中山道赤坂宿脇本陣跡)」。

 

 ↓ 古い街並みには蔵が備わる大きな屋敷がいくつも残っている。石灰や大理石の有数の産出地とあって、財を成した地元有力者一族の住宅は新旧問わず一望出来ない程に広大。

 

鶴丸 (つるまる)

岐阜県大垣市林町2-30-4

 

( 大垣 つるまる 中華そば定食 麺類食堂 矢橋家 矢橋大理石 矢橋大理石株式会社 中山道 赤坂宿 閉店 廃業 )

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桃乳舎 @東京・日本橋 (※閉店)

2015年06月05日 | 東京都(老舗)

銀行や証券会社など金融関係の大きな建物が立ち並ぶ日本橋兜町界隈。そんな界隈にひっそりと佇む2階建の風格ある近代建築。しかもそこが創業明治22年(1889)の喫茶・軽食「桃乳舎」と知っては行かずにはいられない。路地を曲がってその建物が見えると、まるで時空を飛び越えた感じ。変わった店名からも分かる通り、牛乳販売→ミルクホール→洋食屋、という変遷があったのだとか。スクラッチタイル壁の小さいながらもどっしりとした建物の上部には桃の形をしたレリーフまで彫ってある。入口の左側には小さいながらもサンプルケースがあり、建物は昭和8年(1933)建造とのこと。いやぁ、素晴しい佇まい。着物と草履にハンチングを被った株屋の小僧でも出て来そうな雰囲気。

 ↓ 建物上部にある桃のレリーフ。ちゃんと最初から「桃乳舎」っていう名前だったんですね。

店の前には昼どきとあって数人の待ち客が居たが、すぐに店に入る事が出来た。もちろん相席。土間にテーブル席があるだけで、奥に厨房があり、コック帽を被って調理する人の姿が見える。店内は近所のサラリーマン、OL、年輩の方など様々。給仕を任されているのは女性で、満員の店内をテキパキと捌いている。日替わりのランチをはじめとして、ほとんどのメニューがワンコインという驚きの安さ。ちなみにこちらの最高額メニューがエビフライ(3本)ライスで700円(笑)。近辺に居たら全メニュー制覇は間違いのないところ。いろいろ迷ってハヤシライスをご飯少なめで注文した。カツハヤシにしても値段が100円も変わらないのですごく迷ったんだけど…。最近は古い建物でも中が綺麗にリノヴェーションされている事が多く、近代建築好きにとっては良し悪しなんだけれど、ここは中も往時を彷彿とさせる雰囲気。ワクワクして待つ。

程なくしてハヤシライスが登場。少なめで頼んでも盛りがいいのは老舗ではよくあること。福神漬が添えられているハヤシのドミグラス・ソースは見た目の色濃いもの。玉葱の甘味が充分に出ているが、甘ったるいだけでなく、しっかりと苦みとコクがある。いやァ、ウマイなー。あっという間に完食。カツのせてもよかったかな…。この味をワンコインでお釣りがくるってスゴイ。毎日通いたい。近くの方が羨ましいです。次は日替わりのランチか、ハンバーグか…。昔懐かしいクリームソーダも捨てがたい。(勘定は¥470)

 

 


 

  ↓ 近くには大正11年(1922)建造の「山二証券(旧・山二片岡商店」。壁に配された丸窓の周りにも凝った装飾がされていたりして素晴しい。威厳ある店舗入口(下右)。

 

 ↓ そのすぐ隣は「フィリップ証券(旧・成瀬証券)」(昭和10年・1935)。意匠は違うが、実は上の「山二証券」と設計者(西村好時)が同じだそう。

 


 

喫茶・軽食 桃乳舎

東京都中央区日本橋小網町13-13

※臨時休業されていましたが、令和5年2月を以って残念ながら閉店されました

 

( 日本橋 小網町 兜町 茅場町 とうにゅうしゃ 洋食 ミルクホール 西村好時 閉店 廃業 )

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Room For Squares / John Mayer

2015年06月04日 | オルタナティヴ・ロック

Room For Squares / John Mayer (2001)

今をときめくジョン・メイヤー(John Mayer)のデビュー・アルバム。当時若干23歳。昨年だったか、大阪での来日公演に行こうと思っていたが、都合があって行けなかった。アルバムも1枚も持っていないのに行こうと思った訳は、ストーンズ(The Rolling Stones)がゲストに呼んでステージに上げている実績があったから(2012年だっけ)。共演した「Respectable」でのギター・プレイがなかなかのものだったし、業界の流れに敏感な御大ミック・ジャガー(Mick Jagger)先生が推挙(多分)したとあっては聴いておかねばならなかった。現在では米ローリング・ストーン誌(※)が選ぶ「現代の3大ギタリスト」なんかにも選ばれていて、その実力、人気ともトップクラス。現在、ポップ界で世界中を席巻するテイラー・スイフト(Taylor Swift)の元彼でもあるらしい(笑)。

※ いまだによく間違えている記述を目にするが、この雑誌はバンドの「ザ・ローリング・ストーンズ」とは何も関係がないです

遅れてファースト・アルバムを購入した訳だが、第一印象は…、ジャケットにもアルバム・タイトルにも表れているが「爽やか」。ま、数々の女性と浮名を流す今の彼は「Square」ではないだろうが…。こんな楽曲を演るアーティストとは知らなかった。うーん、正直言うと、自分が絶対にファンにならないタイプの音楽。決して叫ぶことなく、あくまでもやさしく語りかけるようなヴォーカル、破たんや歪みのない演奏、自分の心象をつぶやくような歌詞、どれをとっても何も自分の中に入って来ない(笑)。でも日本でも評判が良かったので、みんなこういうの好きなんだね。今もこういう音楽を続けているのかどうかは全く知らないのだが…。容姿だけ見ると、この頃と比べ随分とワイルドになってきているのかな。現在の彼の人気は絶大なので、何かしら訴えかけるところがあるのだろう。このアルバムだって、何しろ450万枚も売れたらしいし。

ブックオフにて購入 (¥380)

CD (2001/9/20)

  • Disc: 1
  • Format: Import
  • Label: Sony
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共栄堂 @東京・神田神保町

2015年06月03日 | 東京都(老舗)

宿泊先の「學士会館」から歩いて神保町の交差点へ。横断歩道を渡ってすぐの「共栄堂」(創業大正13年・1924)へ。実は何度も来ている割には、カレーのメッカと言われる神保町でカレーを食べるのは初めて。実は前回上京した時も来たのだが、残念ながら「ご飯切れ」で、目前で断られてしまっていた。この日はまだ早い時間だったのでそんな事はないだろう。ビールの旨い老舗ビア・レストラン「ランチョン」の入っているビルの地下へ。階段を下りていくとすぐにガラス張りの店がある。夕食には早い中途半端な時間だったが、先客が何組か入っていた。さすが。店内は喫茶店のような雰囲気。店内には額に入った「純スマトラカレー」という古い書(絵?)が飾られている。席に座ってメニューの中から、先頭に書いてある「ポーク」を注文した。ここは盛りが多いと聞いていたので、ご飯は半分にしてもらう。

しばらくしてまず、カップに入ったポタージュ・スープが運ばれる。熱々のスープを口に運んでいると、平皿のライスと、銀色のグレイビーボートに入れられたカレーが運ばれた。付け合わせは別容器に入れられた福神漬けとらっきょう。カレーにはクリームが垂らしてあり、色はかなり黒っぽい。「スマトラカレー」というものに何の知識も持ち合わせていなかったので、まずルーだけスプーンで食べてみた。ひとくち口に入れても大した辛さではない。すぐにご飯の上にかけて食べてみる。カレーには苦みとも思える独特のコクがあり、辛さは随分後になってからやってきた。うん、旨い。クセになりそうな味。ご飯の量は半分とはいえ、普通に一人前くらいの量はある。やや硬めに炊いてあるので、カレーとの相性もとても良い。この手のカレーにしてはスパイス感もしっかりあり、濃厚だが、後味がすっきりしているので、あっという間に食べ終えた。このスマトラカレーにはチキンもビーフもエビもあるのだが、それぞれどんな風に風味が変わるのか試してみたいなァ。(勘定は¥950)

 ↓ 上京の際、常宿にしている「學士会館」(昭和3年・1928建造)と、向かいにある「共立講堂」(昭和13年・1938建造・昭和32年改修)。

 

 

スマトラカレー 共栄堂

東京都千代田区神田神保町1-6

( 神保町 神田 カレー スマトラカレー きょうえいどう 焼きりんご ランチョン )

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松井屋酒造場 @岐阜県加茂郡富加町

2015年06月02日 | 岐阜県(中濃・老舗)

岐阜県加茂郡富加町にある酒造「松井屋酒造場」。こちらは江戸時代の町屋がそのまま残り、現在でも昔のままの手法でお酒を造っているという貴重な酒造。どこかで野立ての看板を見たことがあり、以前から存在は知っていたが、酒に精通した知人のK氏と話していて話題に挙がったので、初めて店に入ってみた。この店のある「加治田(かじた)」の近辺は狭い街道沿いの集落なのだが、近くに「清水寺」があるものの、すでに昔の面影を残す建物はほぼ無くなっている。店の横に車を停めて、中に入ると帳場には主人がいらっしゃった。店の奥は暗いが、昔の生活の道具が色々置いてあり、酒蔵は酒造りの時期以外は「酒造資料館」として公開しているのだそうだ。見上げると信じられないくらい太い梁が渡っていて、へーっと感心していると、主人が色々説明してくれた。

建物は220年前そのままだそうで、太い梁は大人が上に寝転がることが出来るほどの幅だとか。長さは6間半(約12m)もある。街道に面した窓もつっかい棒を使って開ける「蔀戸(しとみど)」だし、格子は「鬼格子(おにごうし)」と呼ばれる太いもの。名称をよく知らないのがもどかしいが、店を終う際の表の木戸も時代劇で見るような小さい入口がついたもの(主人がわざわざ引き出して見せてくれた)など、実際に今も使われているのが信じられないくらいの代物だ。主人はこの地方の歴史にもすごく詳しく、信長などの歴史上の人物がどのようにこの地方に関わったかを丁寧に教えてくれた。主人によると、ここはその昔、美濃と飛騨を結ぶ交通要所として栄えたのだが、大正時代に国有鉄道・越美南線(現・長良川鉄道)が敷設された際に、汽車が通ることを拒んで、路線と駅(現・富加駅)が南にずれてから、人の通りが無くなって没落したのだとか。

この日はもう夕方だったのでこれ以上居る事が出来なかったが、次はその酒蔵資料館にも入らせてもらおう。という訳で、こちらで醸している酒を買ってみた。基本の酒は上撰「睦鳥」、純米酒「半布里戸籍※」、本醸造酒「加治田城」の3種。今では上撰(昔でいう2級酒)も本醸造もほとんど変わりがないとのこと。そこでクラシックなラベルの「睦鳥」を購入した。炭濾過が控えめなのか、色が濃く、しっかりとした印象。昔風にもっと甘ったるい感じを想像していたが、そんな事はなく、燗で引き立つなかなかいい酒だった。(勘定は¥870/720ml)

※ こちら富加町は奈良・正倉院に残る日本最古(1,300年前)の戸籍「半布里戸籍(はにゅうりこせき)」に載っている土地として有名なのです。

 ↓ こちらが件の「富加駅(旧・国鉄加茂野駅)」(大正12年・1923・建造)。松井屋酒造から南西に4km程。駅舎にテナントとして税理士事務所が入っている。(下右・線路側より撮影)

 

松井屋酒造場

岐阜県加茂郡富加町加治田688-2

( 富加町 加治田 とみかちょう かじた むつみどり はにゅうりこせき 長良川鉄道 越美南線 )

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Made Up Mind / Tedeschi Trucks Band

2015年06月01日 | オルタナティヴ・ロック

Made Up Mind / Tedeschi Trucks Band (2013)

テデスキ・トラックス・バンド(Tedeschi Trucks Band)の2枚目のオリジナル・アルバム。前回の来日公演はこのアルバム発売後のツアーという感じだったので、このアルバムからも1、5、7、8、10などが演奏された。来日に合わせて予習するべく、音としては以前から持っていたので、公演後にCDとして買い直し。ワクワクさせるような音色のギター・フレーズから始まる1を初め、デレク(Derek Trucks)の神々しいギターと、スーザン(Susan Tedeschi)のソウルフルなヴォーカルが充分に楽しめるアルバムとなっている。ファーストで感じられた「ごった煮」感は薄れて、まとまりが良くなっている。彼らはしばしばブルース・ロックというジャンルで語られるが、サブ・ヴォーカルとのの掛け合いや、ラッパ隊、曲構成なんかを聴いていると、やはりブルースというよりはソウル・ミュージックとしての印象が強い。

デレクのメインのギターと言えばギブソンSG。ギブソンSGと言えばAC/DCのアンガス・ヤング(Angus Young)が真っ先に思い浮かぶ(自分だけか・笑)。音楽スタイルは違えど、SG特有の艶やかな音色は共通。どちらのアーティストもライヴ会場で聴くと微妙なタッチまで聴き感じられるが、2人ともほとんどエフェクターに頼らず、ギターとアンプそのままの音でプレイする(らしい)のが興味深い。それであの音だもんなァ。凄過ぎる。近年はデレクのシグネチャー・モデルも発売されたというから、すっかりSGの顔となったようだ。

amazonにて購入(¥1,063)

CD (2013/8/20)

  • Disc: 1
  • Format: CD, Import
  • Label: Masterworks
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