松竹大歌舞伎「襲名披露・口上」「双蝶々曲輪日記・引窓」「色彩間苅豆・かさね」 (7月25日・岐阜市民会館)
梅雨が明けようかという強い日差しで酷暑の岐阜市内。市バスを待ってバス停に立っているだけで額から顔から汗がダラダラと落ちてくる。もちろん会場は冷房が入っているのだが、自分の座った2階席は冷房の効きが悪く、汗もなかなか引いていかない。いつもの岐阜巡業公演は客がしっかり埋まることは稀なのだが、なぜか今回の客入りは上々で、2階席でも空席は僅か(→夜公演が無いからのようだ)。
まだ続いている二代目松本白鸚と十代目松本幸四郎の襲名披露巡業。歌舞伎座での初披露から早や1年半。歌舞伎の名跡を継ぐという事は、かくも大事なことなのだ。長いと何年もかけて全国津々浦々まで周るのだという。例の如く口上では白鸚が独特の口跡で挨拶。何かこの節回しに拍車がかかっているような(前からあんなだったっけか・笑)。
そして「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」の「引窓」の段。二段目の「角力場」は見たことがあったけれど、この八段目を見るのは初めて。幸四郎演じる与兵衛の役は元々こういう少し道化が入ったように演じるものなのかは知らないが、染五郎の頃からこういう役は幸四郎にぴったり。幸雀演じる母お幸の声が完全に男のイメージで、なかなか台詞が頭に入ってこない(笑)。親と養子に出した実子、義理の息子とのそれぞれの関係は、現在と共通するところや、ちょっとニュアンスが違うところがあって興味深い。
「かさね」は怪奇物と呼んでいいのか、夏に背筋が冷やっとするような演目。舞台装置に高さがあって、舞踊にしては不自然で踊り辛そうな舞台だなと思っていたら、ちゃんと後からの効果が考えてあるのだった。歌舞伎のこういう演出は時代を超えていて面白い。猿之助の鬼気迫る表情が見もの。どうしてもパワフルな猿之助の”あの顔”が目に浮かぶので、美人から醜い顔へという落差はあまりないが(笑)、気持ち悪さは十二分。一幕目と違った幸四郎のクールな色男役も良かった。
この演目は清元連中(語り・歌が4人、三味線が3人の計7人)の演奏が付く。後ろ3人の三味線に注目していたのだが、演目の間中ずっと演奏が続くのに、そういえば楽譜にあたるものが全く無い。真ん中の方の合図に合わせているが、5分、10分の音楽じゃないのに一体どうやって調子を合わせながら長時間の演奏を続けられるんだろう? 凄いなァ。
一、二代目 松本白鸚 十代目 松本幸四郎 襲名披露 口上(こうじょう)
- 幸四郎改め 松本 白鸚
- 染五郎改め 松本 幸四郎
- 幹部俳優出演
二、双蝶々曲輪日記 引窓(ひきまど)
- 南与兵衛後に南方十次兵衛 染五郎改め 松本 幸四郎
- 女房お早 市川 高麗蔵
- 三原伝造 大谷 廣太郎
- 母お幸 松本 幸雀
- 平岡丹平 松本 錦吾
- 濡髪長五郎 幸四郎改め 松本 白鸚
三、色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)
かさね
- かさね 市川 猿之助
- 与右衛門 染五郎改め 松本 幸四郎