新しい総理が決まりました。
意外な人‘野田佳彦'氏でした。
今、テレビのライブで、代表決定表明挨拶をしています。
これから、どうなるのか…少しは期待したい、ですね。
今日は、そんな意味もあり、私の愛読誌「高野山教報」からご紹介します。
『本物に出会う』
近藤 堯寛(高野山 櫻池院 住職)
お大師さまの名言は、多くが悟りの境地から眺めたものですが、なかにはおかしみを
誘う言葉もあります。その中から一句ご紹介しましょう。
「カラスの目はただ朽ちたるを見る。犬の心は汚らわしき香りに耽る」
カラスの目はいつも腐った食べ物ばかりを狙っている。犬の心はいつも汚い匂い
ばかりを求めている、という意味です。
カラスは腐ったものを餌とします。空の高みから腐敗したものを物色していて、
くさい匂いをかぎつければその周辺を旋回し、チャンスをうかがって急降下して
きます。
一方犬は、道端や電柱に放尿して縄張りの匂い付けをします。他の犬が放尿した
場所を見つければ、立ち止まって匂いを嗅ぎ、自分の尿をかけて立ち去ります。
カラスや犬は、人間の食べ残したゴミこそがご馳走になります。ゴミの悪臭は
快い匂いとなります。
お大師さまの言葉は、カラスのように相手の汚い面ばかりを見る目になっては
いけないよ、犬のように臭いものばかりに心をとらわれてはいけないよ、と
忠告されています。
最近は偽物が氾濫しています。偽ブランド品も大量に出回っているし、偽の絵画も
競売に出されています。これは人間関係についても言えることです。
物や人を見る目を養うには、普段から本物に接していることが大切です。
オレオレ詐欺は、自分の家族が現在どうしているのかしっかりと把握していない
ために起きる事件ですし、振り込め詐欺は、交通事故の処理や裁判のシステムの
複雑さを手口にした事件だといえます。
うかうかと暮らしていられない、偽者が氾濫している困った時代です。
島倉千代子さんのヒット曲「人生いろいろ」を作詞した中山大三朗さんの講演を
拝聴したことがあります。
そのとき中山さんは、「人生そこそこ70点」という話をされました。
歌手の審査をする場合、普通の人は100点満点から減点していきますが、
中山さんは50点から出発していいところを見つけては点数を足していき、70点
取れば合格とします。
それが、「人生そこそこ70点」です。
この加算方式は、人の特長や特技など良い面を積極的に見ていく態度が必要と
なります。採点者にプラス志向の美点を見つけ出そうとする積極的な態度や寛容な
やさしい心が要求されるのです。
相手をカラスの目で見たり、犬のように臭いものに耽ったりすることは避けたいものです。
人にはその人なりのすばらしい長所があります。自分にはない長所を見つけ出すと
いうことは、その人に対して愛情がなければできません。
相手の欠点をあげつらっていては、お互いの発展はありません。
相手の持ち味を生かし、良い点を見つけてお付き合いをすれば、これまで自分には
気がつかなかった世界が開けて新しい人間関係のスタイルができてくるはずです。
肝心なこと大切なことを放っておいて、つまらないことにいつまでも関わり合っては
いませんか。
努めて本物に出会って、しっかりとした正しい観察の目を養いたいものです。
自分にごまかしのない道を歩きたいものです。