(昨日『病理医は遅すぎる、なんてことはない(上)』からの続き)
現代の医療は複数の専門家が同時進行で病気の診断・治療にあたる。もちろん、自分一人でなんでもやっているんだ、みたいな臨床医もいるが、その先生はその範囲でできることをやっているだけだ。複数の専門家が対応するとなると、どこか一つのパーツが欠けても困る。
だから、なんでも知っていなくてはいけない病理医が欠けたり、勉強不足で力量が足りなかったりしたら、それはそれで困るのだ。そして、同時進行であるということは、あとから病理医が追いかけるなんていうことがあってもいけない。
病理医は遅すぎてはいけないのだ。
最近の医療の高度化は著しくて、悪性腫瘍の分類には免疫組織学的、分子生物学的な判断がほぼ必須のものとなったものもある。最近改定された癌取扱い規約のうち、頭頸部腫瘍取扱い規約(第6版、2018年1月)で、中咽頭扁平上皮癌の病理組織学的組織分類にp16の免疫染色が要求されることに違和感を感じる病理医は多い。そもそもp16の免疫染色ができない施設は少なくないので、”行なっていない腫瘍”が含まれているのもなんだかなのだけど、いずれにしてもそのことが診断に要求されるのであれば仕方ない。また、脳腫瘍(脳腫瘍取扱い規約第4版、2018年3月)は診断確定には遺伝子異常の検討が必須事項となってきた。診断の章のⅡが分子診断で、病理診断はⅢになってしまっている。かといって、病理診断がなくなるわけでも無く、結局は勉強しなくてはいけない。
病理医の仕事が、腫瘍の形態学的診断、病変の広がりとこれに関連する予後などついて診断していた時代から、臨床”各”科から矢継ぎ早に要求されるこれらの、先端診断について、十分に知らなくてはいけなくなった。
というようなわけで、病理医にはしなくてはいけないことが山盛りで、病理は遅くてもしょうがない、なんて開き直ってはおられず、しなくてはいけないことがどんどん増えている内科医や外科医、そのほかの臨床医と協力し、一緒に走っていかなくてはいけない時代となった。
冗談にならない