頭脳派DF(堀之内聖)

昨日、浦和はベテラン堀之内聖選手に戦力外通告をしました。戦力外通告はリーグ戦終了後5日以内と決められているので、他チームへ移籍する選手は出るかもしれませんが、0円提示は堤と堀之内で完了です。

堀之内は苦労してトップに上がり、浦和の黄金時代を支えた名脇役にまで成長した選手です。東京学芸大学を出た堀之内は、日本サッカーの黄金世代と呼ばれた1979年生まれで、ユニバ金メダルの実績をひっさげてボランチのポジションを狙いましたが、前の年に２つ年下の鈴木啓太がボランチのポジションを奪い、世代交代が完了する不運がありました。

しかし、サテライトで当時のコーチだった柱谷哲二氏(現J2水戸監督)から指導を受けた堀之内は、CBに転向すれば試合に出られるというアドバイスを受け、サテライトリーグでは明らかに格の違うDFに成長して、柱谷氏からも「堀之内はいつでもトップに送り出せる」と太鼓判を押してもらいました。

当時の浦和は3バックでしたが、一見不動に見えた闘莉王も坪井も、結構負傷欠場がありました。そんなときにいつでも穴を埋められたのが堀之内で、当時の浦和で絶対的な存在だった日本代表の闘莉王が欠場したら普通は心配になるところですが、堀之内の代役出場は頼りになり、心配ではありませんでした。

堀之内のベストゲームで思い出すのは、2007年のACLのグループリーグ最終戦、シドニーFC戦です。闘莉王が出場停止でリベロに入った堀之内は、1トップに入った相手の長身FWズドリリッチが自分の位置を狙っていることに気付きます。

シドニーFCはサイドアタッカーのドリブルから攻めてくるチームでしたが、豪州代表の経験もあるズドリリッチにとっては堀之内なら勝てると思っていたかもしれません。しかし、この試合の堀之内はズドリリッチに正確に競って、上背では劣る相手のバランスを崩して、苛立ったズドリリッチが下がり始めるほどでした。

ズドリリッチのポストプレーはシドニーFCの武器でしたが、低い位置でポストプレーをさせれば怖くないと、試合を通してズドリリッチを堀之内が抑え切った結果、浦和は貴重なスコアレスドローで決勝トーナメント進出を決めます。

どうしても地味なDFなので、完全に相手を抑え切った試合でないと印象に残らないのが残念ですが、浦和を支えてくれた名脇役だったことは疑いのない事実です。浦和はスタッフ入りを打診していますが、現役続行するにしても、納得ゆく道を見付けて欲しいと思います。