北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

【アジアウォッチ】クレヨンしんちゃんの敗訴

2009-05-24 23:10:14 | Weblog
 日本の商品を他国が自国内で商標登録してしまい、本来の正当な名前で売り出すことができない、というトラブルが中国などで起きています。

 そのなかのシンボリックな話題が「クレヨンしんちゃん」の登録でしたが、この度双葉社が側が行政訴訟で敗訴したようです。ヤレヤレ…。


---------- 【以下引用】 ----------



2009年05月23日
双葉社 中国の「クレヨンしんちゃん」商標問題 行政訴訟で敗訴[ 著作権 ]
  http://animeanime.jp/biz/archives/2009/05/post_620.html


 雑誌、書籍の出版を行なう双葉社は、5月19日に中国で起きている『クレヨンしんちゃん』の商標権を巡る訴訟についての最新の経緯報告を公開した。
 この事件は双葉社が、中国において臼井儀人さんの著作マンガ『クレヨンしんちゃん』の商業展開を行なうとした時に発生した。『クレヨンしんちゃん』の中国語のロゴとそのキャラクターが、既に中国企業に登録されていたことが発覚したためである。

 双葉社は自らが本来の商標の保有者として、2004年に中国企業の登録の著作権侵害訴訟(民事訴訟)と登録商標の取消訴訟(行政訴訟)を行なった。 
 しかし、今回の双葉社の発表によれば、民事訴訟については再審請求が認められ訴訟が継続しているが、行政訴訟については双葉社の請求は退けられ、中国企業の類似登録商標が維持されることになった。

 もともと『クレヨンしんちゃん』は中国でも人気の高いキャラクターであったが、その人気は海賊版を通じて中国に広がっていたものである。そうしたなかでの2004年の双葉社による正規版の『クレヨンしんちゃん』での中国進出は、中国での日本のキャラクタービジネスの新展開として話題になった。
 その後に起きた長期にわたる商標問題は、中国におけるキャラクタービジネスの難しさの象徴ともなっていた。それだけに今回の行政訴訟における最終的な判断は、中国における日本企業のキャラクタービジネスにネガティブな印象を与えることになりそうだ。

 今回の訴訟で双葉社は、中国企業 恩嘉公司などが登録した商標のデザインが、単行本『クレヨンしんちゃん』8巻の91ページから盗用したものであることを主張した。
 また、文字部分にある「蠟筆小新」は「クレヨンしんちゃん」の繁体字版の中国語訳で、これは双葉社と台湾・香港の出版社が正式に契約をした際に決められたタイトルあるとしていた。

 最高人民法院は、今回の中国企業の商標の登録行為が悪意のあることは認めた。しかし、最高人民法院は登録無効の請求は、該当する登録商標の登録日から5年以内に請求しなければならないとした。
 そのうえで、今回の商標の登録の無効請求は登録から5年以上が過ぎており、中国企業の所有する『クレヨンしんちゃん』の商標の登録を維持することを認めた。中国司法も登録者の悪意を認めながら、結果としてその状態が今後も続く、歪んだ状態となる。

 こうした結果について双葉社は、行政訴訟では負けたが民事訴訟は継続中であるため、審理の場がはまだ与えられているとしている。そのうえで、民事訴訟の結果は商標権の今後のあり方に大きな影響を与えるとする。
 そして、著作権を侵害している図形商標が、著作者と関係のない他人の所有権として認められている状態は問題だとし、何としても取り消したいという。同社は今後も著作権者の権利を守るべく、著作権侵害訴訟に取り組む構えである。

双葉社 http://www.futabasha.co.jp/

                   posted by animeanime at 2009.05.23

---------- 【引用ここまで】 ----------

 裁判所側も、中国の業者に悪意があったことを認めていながら、手続き上の問題で行政訴訟上での敗訴というお粗末な結果でした。

 登録されてから5年以内という決まりがあるのだったら、まず中国当局として行政指導を行わなかったのか、というあたりの疑問と、数多ある商標権の問題を5年で切るというのは、事実上全部の取り締まりは不可能ということのように思います。

 こういう事に対してオリジナル制作者の権利が守られないということは世界に対して大きくマイナスなイメージになるはずですが、今が良ければよいのか…。

 こんなことを世界の各国の法律の中で勝手にやられたんでは、絶対に全てを補足はできませんね。著作権の問題については、ちょっとウォッチを続けてみることにします。 
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大学もchange!

2009-05-23 23:01:55 | Weblog
 卒業した大学の講座の教授が学会で上京するというので、東京近在の卒業生が集まって囲む会を開きました。

 参加者のほとんどが平成十年代の卒業と言うことで場違いな感じもしましたが、中にはこのブログを読んでいるという後輩や、人づてに私の名前を知っている方、さらには掛川出身の大学後輩までいて、まあそれなりに楽しめました。

 大学の先生と話をしていると、喫緊の課題は大学の人件費の削減なのだとか。そのために、教授を減らすのか助教(むかしは助手と言いました)を減らすのか、そうした改革の原案を作れと言われて、辛い思いをしているとのこと。

 大学改革とはまず経費の削減、それも人件費の削減のことになってしまっていて、手段が目的化してしまっているようです。

 しかしそのために講座の統合などもありえるわけで、特に伝統ある大学になると歴史を変える事への抵抗も強そうです。

「僕なんか、そうした伝統が大事じゃないか、と思う質なので、軽々しく統合なんて言い出せないんですよ」と教授。

「しかし、さんざん調整したあげくにもぎ取られるよりは、積極的に絞り込んで浮かせた分を戦略的に再びとりもどす、ということもあるかも知れませんよ」と私。

「そうか~、やっぱり変化しないと駄目なのか…」

    ※    ※    ※    ※

 伝統があるだけに変えにくくて、それが時代に取り残される要因になりかねないという現実をどうしましょうか。

 大学も歴史と伝統ばかりではなく、これからの未来にどのような貢献ができるのかを冷徹に見なくてはならない時代になったようです。

 OBとしてできる限りの応援をするつもりですが。 

コメント (2)
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日本感染症学会からの緊急提言 ~【後編】

2009-05-22 23:59:56 | Weblog
  【前編】からの続き

⑤ 重症例にはウイルス性肺炎よりも細菌性肺例や呼吸不全例が多く見られます
 今回のS-OIVの流行では、初発地のメキシコを除けば死亡率が通常の季節性インフルエンザのそれを少し上回る0.1%台を現時点で示しており、軽症例が多いとみられています。

 一方、多数の死亡例が出たメキシコでは、発症から受診までの期間の長短が死亡率と相関している(死亡例のほとんどが発症から1週間以上を経て初診)と言われています。また、死亡例の多くは細菌性肺炎を併発していたとも言われています。実際、過去の新型インフルエンザにおいても同様のことが見られました。スペインかぜの際の死亡原因を詳細に解析した報告があります。

 当時の死亡者58名の保存病理材料の再調査と8,000人以上の病理解剖記録を詳細に解析した米国NIAID(国立アレルギー感染症研究所)所長のAS Fauciらの報告10)では、死亡の96%は細菌性肺炎であり、約70%が菌血症を併発していたとしています。

 また、Fauciらはその後の1950年代後半のアジアかぜ、1960年代後半の香港かぜにおいても同様であったとしています。抗菌薬がなかったスペインかぜの当時では細菌性肺炎による多数の死亡は避けられないことでしたが、抗菌薬療法が発達している現在、同じことが起こることはありません。

 細菌性肺炎の多くは肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌(インフルエンザ
ウイルスとは異なります)、レンサ球菌などで起こりますが、備えるべきは多数発生す
る重症肺炎への準備であり、重症呼吸不全に対応するレスピレーターの整備、そして予防です。CDCも今回のS-OIVの流行では細菌性肺炎と脱水が主な入院の契機であり、64%が基礎疾患や合併症を持っており、主なものは慢性呼吸器疾患、免疫低下~不全状態、慢性心疾患、糖尿病、肥満であるとしています1)。

 しかし、今回のS-OIVの流行ではこれまで大多数の患者が軽症で改善治癒しています。たとえ肺炎を併発したとしても多くは軽症であり、在宅での治療が可能ですし、わが国の市中肺炎ガイドライン11)はその目安を提示しています。なお、細菌性肺炎では肺炎球菌肺炎の頻度が最も高くて重症化し易いですから、接種対象として肺炎球菌ワクチンの添付文書に挙げられている65歳以上の高齢者や慢性の呼吸器疾患並びに慢性心疾患、糖尿病などをお持ちの患者にはこのワクチンの接種を積極的に考慮して下さい。

 また、肺炎球菌ワクチンの接種については、今回の流行を受けて海外でもさらに推奨する動きがあります8)。



⑥ 一般予防策ではうがい、手洗い、マスクが効果的です
 流行が懸念される時期には不要不急の外出を避け、人ごみにはなるべく出ないこと、外出時にはマスク着用、互いの咳エチケットの遵守、外出後のうがいと手洗いが必要です。新型に対するワクチンは、本年の秋から冬にかけて予想される流行には間に合わない可能性も考えられますので、ハイリスク群においてはノイラミニダーゼ阻害薬の予防投与も考慮すべきです。現実的には患者との接触後1週間前後の予防が考えられます。

 先述の肺炎球菌ワクチンの接種については、優先的に接種すべき患者が添付文書にも記載されており、その内容は前項(⑤)にも示しましたが、これはインフルエンザワクチンの優先接種の対象者とほぼ同じです。ただ、わが国では肺炎球菌ワクチンの再接種は認可されておりません。米国その他の先進国では再接種適応者を定めていますが、当局と関係各位との協力によってわが国でも再接種が承認されることを望みます。

 マスクの有効性については賛否両論があります。日本では肯定的な意見が多く、一方、欧米では否定的な意見が多いため、現実にカナダや米国では一般の人はマスクを着用していません。しかし、数年前のSARSの流行時にはサージカルマスクやN95マスクが院内感染予防に効果があったとする報告12)や一般的に呼吸器ウイルス感染の防止対策の一環としてマスクを含めた総合的な対策が有用であるとするシステマティックなレビュー報告13)があり、WHOは後者の報告を引用して今回の新型インフルエンザ対策としての市中でのマスク着用を勧めています14)。

 ただし、マスクは正しく着用しなければ効果はありません。うがいの有用性については、インフルエンザそのものに対しての効果という訳ではありませんが、上気道感染症やインフルエンザ様気道疾患に対する予防効果が認められるという報告15)があり、同様に急性呼吸器疾患等に対して手洗いの予防効果が認められるという報告16)もあります。



⑦ 医療従事者の感染予防にはサージカルマスク、手洗い等が効果的です
 わが国の新型インフルエンザ対策では水際撃退作戦が重要視され、空港や港湾における検疫の強化が取られています。

 そこで行われる予防策では厳重な防護服やヘルメット、ゴーグル、手袋、等の着用が行われていますが、もし国内で流行が蔓延して爆発的に患者数が増加した際には全ての医療機関を多数の患者が受診することになり、これらはもう実用的ではありません。

 日本の医療従事者は一般市民と同様、新型インフルエンザに対して強い恐怖を抱いているという報告17)もありますが、ここまでで見たように、また、今回のS-OIVの内外での流行状況を見る限り通常の感染予防策で臨めば大きな心配はありませんし、万が一感染したとしても対応策は万全です。

 すなわち、医療機関では、サージカルマスクと手洗いを原則とした感染防止策で臨むべきと考えますが、重症肺炎を併発した新型インフルエンザ患者における医療処置(痰の吸引、その他)ではN95マスクやゴーグルなどの使用が考慮されるべきです。なお、必要に応じて抗ウイルス薬(オセルタミビル、ザナミビル)の予防内服も検討すべきです。



⑧ 全ての医療機関が新型インフルエンザ対策を行うべきです
 ここで問題なのは、現在の検疫で行われているような、また、昨年来全国で実施されている新型インフルエンザ対策のシミュレーション訓練等で行われている宇宙服のような防護服に代表されるような対策を目の当たりにして「我々の病院では新型インフルエンザ対策は困難なので新型インフルエンザの患者は診療しない」として最初から対策を放棄してしまう病院の多数出ることが予想されることです。

 新型インフルエンザの流行蔓延期にはすべての医療機関に患者が受診することが予想されます。自分たちが普段から診ている通院患者からも新型インフルエンザの患者は多数出てくると予想され、診療を忌避することは出来ません。全医療施設が取り組むべき対策を構築しておかなければ、助かるべき多数の患者が助からない、といった事態が起こり兼ねません。そのためにも本提言をすべての医療機関においてご検討いただき、効果的な対策の行われることを望みます。関係各位の協力を仰ぎたく、よろしくお願い申し上げます。


文献
1) CDC: Hospitalized patients with novel influenza A (H1N1) virus infection ---
California, April – May, 2009. MMWR.2009(May 18);58:1-5.
2) Richard SA, Sugaya N, Simonsen L, Miller MA, Viboud C : A comparative study
of the 1918-1920 influenza pandemic in Japan, USA and UK: mortality impact and
implications for pandemic planning. Epidemiol Infect. 2009;12:1-11.
3) Viboud C, Grais RF, Lafont BAP, Miller MA, Simonsen L: Multinational impact
of the 1968 Hong Kong influenza pandemic: evidence for a smoldering pandemic.
J Infect Dis.2005;192:233-48.
4) 高橋美保子、永井正規:1987年-2005年のわが国におけるインフルエンザ流行による

超過死亡―性別、年齢階層別、死因別死亡による推定-. 日衛誌.2008;63:5-19.
5) 国立感染症研究所感染症情報センター:インフルエンザ超過死亡「感染研モデル」
2002/2003シーズン報告.IASR.2003;24:288-9.
6) Murray CJ, Lopez AD, Chin B, Feehan D: Estimation of potential global pandemic
influenza mortality on the basis of vital registry data from the 1918-20
pandemic: A quantitative analysis. Lancet.2006;368:2211-8.
7) 福見秀雄、後藤敏夫、平山 雄、草野信男:アジアかぜ流行史.東京: 日本公衆衛
生協会; 1960
8) Miller MA, Viboud C, Balinska M, Simonsen L: The signature features of influenza
pandemics ― implications for policy. N Engl J Med. 2009;1056:903-6.
9) Peiris JS, Yuen KY, Osterhaus AD, Stöhr K: The severe acute respiratory syndrome.
N Engl J Med. 2003;349:2431-41.
10) Morens DM, Taubenberger JK, Fauci AS: Predominant role of bacterial pneumonia
as a cause of death in pandemic influenza: implications for pandemic influenza
preparedness. J Infect Dis. 2008;198:962-70.
11) 日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」作成委員会:成人市中肺炎診
療ガイドライン.日本呼吸器学会,東京,2007年1月15日発行,1-86.
12) Seto WH, Tsang D, Yung RW , Ching TY, Ng TK, Ho M, et al: Effectiveness of
precautions against droplets and contact in prevention of nosocomial
transmission of severe acute respiratory syndrome (SARS). Lancet. 2003;
361:1519 - 20.
13) Jefferson T, Foxlee R, Del Mar C, Dooley L, Ferroni E, Hewak B, et al: Physical
interventions to interrupt or reduce the spread of respiratory viruses:
systematic review. BMJ. 2003;336:77-80.
14) WHO. Advice on the use of masks in the community setting in influenza A(H1N1)
outbreaks, Interim guidance. 2009. May 3.
15) Satomura K, Kitamura T, Kawamura T, Simbo T, Watanabe M, Kamei M, et al:
Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: a randomized
trial. Am J Prev Med.2005;29:302-7.
16) Luby SP, Agboatwalla M, Feikin DR, Painter J, Billhimer W, Altaf A, et al: Effect
of handwashing on child health: a randomized controlled trial. Lancet.2005;
366:225-33.
17) Imai T, Takahashi K, Todoroki M, Kunishima H, Hoshuyama T, Ide R, et al:
Perception in relation to a potential influenza pandemic among healthcare
workers in Japan: Implications for preparedness. J Occup Health. 2008;50:13-23.

社団法人日本感染症学会・新型インフルエンザ対策ワーキンググループ
石田 直、岩田 敏、賀来満夫、國島広之、菅谷憲夫、三鴨廣繁、渡辺 彰[座長]
〒113-0033 東京都文京区本郷3丁目28-8 日内会館2F
TEL:03-5842-5845 e-mail:kansen@oak.ocn.ne.jp

---------- 【引用ここまで】 ----------


 防護服で完全防備した医師たちが水際で感染者を発見して防ぐということはもはや現実的ではない、と言う見解です。

 また「新型と言っても、それはやがて季節性のインフルエンザとして周期的に感染が始まる」というのも驚きです。今の季節性インフルエンザもウィルスが最初に変異した時は新型だったのです。

 我々一般庶民は、マスクと手荒いを励行して感染リスクを減らし、かかった場合でも冷静に治療に専念するということが極めて現実的な対応だと言えるでしょう。

 そう言う意味で滑稽さも失敗も、次の対応に繋げる建設的な出来事としたいものですね。
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日本感染症学会からの緊急提言 ~【前編】

2009-05-22 23:58:46 | Weblog
 日本のインフル対策は滑稽なのか?という話題を提供したところ、社団法人日本感染症学会というところから、素晴らしい提言が出されているのを知りました。

 こういう文章をきちっと読み込めば、現在の新型インフルエンザに対する現実的な対応のあり方がよく分かります。

 厚労省からはまだ正式なコメントは出されていませんが。


---------- 【以下引用】 ----------
 http://www.kansensho.or.jp/news/090521soiv_teigen.pdf

                        平成21 年5 月
        社団法人日本感染症学会緊急提言

「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」
~㈳日本感染症学会・新型インフルエンザ対策ワーキンググループからの提言~

 先日、メキシコ共和国に端を発した新型インフルエンザ、swine-origin influenza A
(H1N1) (S-OIV と略す)に罹患・発病した日本人が成田空港の検疫で複数名発見され、さらに5 月16 日以降、渡航歴のない関西居住の高校生から多数の感染発病者が発見されるに至り、わが国国内での感染の拡大・流行が強く懸念されています。また、WHO もフェーズ6 の流行段階の宣言を検討しています。

 今回のS-OIV が感染力・伝播力は強い一方で、発症時の臨床的重症度は季節性インフルエンザ(seasonal influenza)と同程度ではないかと楽観視する意見も強まっています。しかし、米国CDC が中心となってまとめた米国カリフォルニア州内の4 月15 日から5 月17 日までの流行状況の報告1)では5%以上の例が入院し、その1/5(全体の1%)はICU で治療を受けたことも明らかにされております。これをわが国に当てはめると、毎年の季節性インフルエンザと同様に1,000 万人以上がS-OIV に感染した場合、短期間に10 万人以上がICU に入院することになります。このことからも感染症を専門とする本学会の立場からは、S-OIV は現時点でも軽症であると言い切ることはできません。さらに、今秋以降は1968 年の香港かぜ以来の大流行が起こる可能性は極めて高くなると多くの専門家が考えています。

 本年2 月17 日に厚生労働省が発出した「新型インフルエンザ対策ガイドライン」は高病原性鳥インフルエンザを想定したものであって、しかも水際撃退作戦を想定したいわば行政機関向けといえるガイドラインであり、今回の新型インフルエンザが実際に流行して蔓延する際には、一般医療機関における対応は当然異なってしかるべきです。医療者、特に臨床医におかれましては予想される状況を正確に把握して適切な対策に務めていただきたく、日本感染症学会・新型インフルエンザ対策ワーキンググループから以下の提言をいたします。


 内容
① 過去の我が国における新型インフルエンザ流行の実態から学んでください
② 新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です
③ 新型が流行すると青壮年層の被害が甚大となるのには理由があります
④ 流行初期から一般医療機関への受診者が激増します
⑤ 重症例にはウイルス性肺炎よりも細菌性肺炎例や呼吸不全例が多く見られます
⑥ 一般予防策ではうがい、手洗い、マスクが効果的です
⑦ 医療従事者の感染予防にはサージカルマスク、手洗い等が効果的です
⑧ 全ての医療機関が新型インフルエンザ対策を行うべきです


① 過去の我が国における新型インフルエンザ流行の実態から学んでください
 新型インフルエンザが蔓延するとわが国では32 万人から64 万人が死亡すると厚生労働省が試算していますが、これはスペインかぜの致死率を1~2%として、推定患者数が3,200 万人(人口の25%)と考えられるので、掛け算して出した数値です。最近の報告2)では、スペインかぜは日本国内で1918 年から1920 年にかけて2 回流行し、48 万人の死亡者が出たことが明らかとなりました。

 これを現在の人口に外挿・敷衍すると108 万人の死亡となり、和歌山県や香川県などの一県分の人口に相当します。スペインかぜは20 世紀最大の疫病と言われてきたことがよく分かります。しかし、当時はインフルエンザウイルスの発見(豚から1932 年、ヒトからは1933 年)前であり、二次感染として多い細菌性肺炎の治療薬である抗生物質が実用化される(1941 年のペニシリンG)よりはるか前の出来事です。

 インフルエンザがウイルス感染症であることが分かってから、及び抗生物質が実用化されてからの新型インフルエンザ(1957 年からのアジアかぜ、1968 年からの香港かぜ)では我が国でいずれも4 万人~7 万人が亡くなったと報告されています3)。香港かぜは、1968 年~69 年の第1 波では2 万人程度と死亡者数が少なかったものの、翌年の第2 波で5 万人を超える大きな被害が出ています。現在の人口に外挿・敷衍すると8 万人から9万人の死亡者となり、比較的軽かったと思われがちな香港かぜは実は大きな流行であり、国民や社会への影響は大きく、特に当時の医療関係者の苦労は相当なものであったと思われます。

 今回の新型インフルエンザ(S-OIV)が今後大流行した場合、わが国の死亡者数や死亡率が香港かぜの場合を大きく超えるようなことはないと思われます。しかし、これまで流行してきた季節性インフルエンザでは毎年1 万人前後の死亡者が出ていて4,5)、医療現場ではその都度多忙を極めていますから、数万人の死亡者が出る流行が起これば入院ベッドが不足し、人工呼吸器や救急車が足りない、病院や診療所の外来は混雑を極めるなど、準備の不足は医療現場の大混乱となって現れるのは必至です。

 ところで、スペインかぜ当時の死亡者の大多数は発展途上国に集中しており、英米の死亡者数は少なかったことも知られています。日本の全人口に対する死亡率は0.87%、英国0.3%、米国0.6%、シンガポール1.4%、インド4.4%と報告されています。当時のわが国はまだ発展途上国から完全には脱していなかったため、死亡者数が英米に比べてやや多かったと考えられています。

 こうしたことから、新型インフルエンザによる死亡は、各国の経済状態の反映、あるいは医療水準の反映といわれています6)が、日本は、現在、スペインかぜ当時とは、全く異なって経済や公衆衛生の向上は著しく、個人の栄養・感染防御能も著しく向上しております。また、インフルエンザの迅速診断とノイラミニダーゼ阻害薬による治療では圧倒的に世界をリードしており、日本で確立したインフルエンザの診断と治療を生かすことができれば、新型インフルエンザの被害を大幅に制御することが可能と思われます。

 また、20世紀の新型インフルエンザは、国内では、すべて2回の流行を起こしている事実を理解して対策を考えることも重要です。世界では、時に3回の流行も記録されています。前述のごとく、スペインかぜは1918~19年の大規模な第1波、1919~20年のやや規模の小さな第2波と2回流行しました。アジアかぜは、1957年春の第1波、秋の第2波とやはり2回流行しました。

 香港かぜでは1968~69年の第1波は小さな流行でしたが、翌1969~70年に大きな第2波の流行となりました。ですから、最初の流行が小規模に終わっても、決して油断は出来ないのです。今回の新型インフルエンザ(S-OIV)が、現在は症状も軽く、患者数も比較的に少なくても、今年の秋か、冬に大きな流行になると専門家が警戒しているのは過去の大流行の事実からです。



② 新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患
しうる病気です

 今回のS-OIVが出現・流行する以前のわが国では、来るべき新型インフルエンザでは高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)がいずれヒト-ヒト感染性を獲得して主役をなすという想定が支配的であったことや、数年前のSARSで被害が甚大であったことの影響から、どのようなものが出現しても新型インフルエンザは死亡率の高い感染症であり、可能な限り罹患を避けるべき疾患であると大多数の国民から思われてきました。しかし、過去のどの新型インフルエンザでも、出現して1~2年以内に25~50%、数年以内にはほぼ全ての国民が感染し、以後は通常の季節性インフルエンザになっていきます。現在流行している香港かぜもこのようにして季節性インフルエンザとなった歴史を持っており、今回のS-OIVもやがては新たなH1N1亜型のA型インフルエンザとして、10年から数十年間は流行を繰り返すと見込まれます。すなわち、今回の新型インフルエンザ(S-OIV)の罹患を避けることは難しいのです。

 例えば、1957年のアジアかぜ出現時、全国の保健所職員と家族を調査したところ7)、同年5月から7月の第1波で26%、9月から11月の第2波では30%が罹患したことが明らかにされています。アジアかぜの流行が始まってからわずか半年間に56%が罹患発病したのです。特に、小児では80〜90%が罹患したことも分かっています。しかし、アジアかぜはその後通常の季節性インフルエンザとなり、1968年の香港かぜに代わるまで毎年流行しました。その香港かぜも最初は新型でしたが、今では季節性インフルエンザとなっています。



③ 新型が流行すると青壮年層の被害が甚大となるのには理由があります

 1918年から大流行したスペインかぜでは青年・壮年層を中心に世界中で4000万人の死亡者が出ました。今回の新型インフルエンザでも初発地のメキシコでは高齢者に被害が少ない一方で若年層に大きな被害が出ています。我が国ではこれについて、若年層では炎症反応が過剰に発現してサイトカインストームによる被害が拡大するためとの見解もあります。しかし、スペインかぜだけでなく、その後のアジアかぜや香港かぜの際にも初期には若い年齢層に被害が多く見られ、数年後に被害は高齢者中心に移行することが観察されています。

 高齢者の多くは過去に型の変異したインフルエンザの洗礼を何度も受けたため免疫のメモリーがありますが、若年層ではそれが乏しいため新型が流行する初期には被害が甚大となるものの、数年して若年層の多くが免疫を保持するようになると全年齢層がほぼ等しく免疫を保持するようになり、その結果、相対的に抵抗力の弱い高齢者に被害の中心が移って行くと考えられています。例えば、スペインかぜでは、高齢者の死亡が少なかったことが報告されています2)が、1873年以前に同じH1 サブタイプの流行があったと推測されています8)。

 また香港かぜでも、当時77歳以上の高齢者では死亡が少なかったのですが、それは1892年以前のH3 サブタイプの流行の影響と考えられています2)。

 今回のS-OIVにおいても、高齢者の感染者、重症者が少ないことが注目されています。いずれにしても、来るべき新型インフルエンザの蔓延期には通常の季節性インフルエンザの場合に加えて若年層のインフルエンザ患者が多数発生して医療機関を受診するようになることが予想されますので、その対策が必要です。



④ 流行初期から一般医療機関への受診者が激増します
 厚生労働省では各自治体に対して発熱相談センターの設置や特定少数の発熱外来の設置を行って蔓延拡大を阻止しようとしています。流行初期の水際対策として有効ではありますが、インフルエンザは発熱前から感染性を持つことや、患者が多数発生すればもはや少数の発熱外来では対応しきれず、そのこともあって欧米では発熱外来を設置する動きは見られません。

 流行の各段階に応じて対応を変える実際的な方策が必要となります。また、患者の中には自分の症状を新型インフルエンザだとは自覚せずに一般医療機関を受診する方が当然存在します。また、普段からかかりつけ医をお持ちの患者は当然のことながらかかりつけ医を受診する確率が極めて高いと思われます。

 1968 年の香港かぜの初発期には多数の患者が一般診療所を受診しており、深夜まで診療業務に当たられた経験をお持ちの医師が多数おられます。流行拡大期には、自分の診療所ではインフルエンザの診療は行わない、とするのはほとんど不可能となりますが、発熱の有無で時間帯を分けて診察したり、医師会を中心として近隣の医療機関が時間を分けて分担したりするなどの方策が効果的と考えられます。

 たとえば、仙台市では医師会傘下のすべての開業診療所が発熱外来を担当してより高度の医療が必要な患者を専門医療機関へ転送する方針を打ち出していますが、各地域の実情に合った対応策を考える必要があります。

 なお、数年前のSARSの場合は発熱してから周囲への感染性を持つまでの期間が約1週間と長かった9)ために対応策を準備する時間的余裕があり、封じ込めには成功しましたが、S-OIV の潜伏期は1~5日と短く、発症前から感染性を持つため封じ込めは困難です。このことも、流行の拡大時期における一般医療機関への患者の集中が起こる理由です。


   ~ 長すぎるので後編に続く ~

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インフル対策は滑稽か

2009-05-22 23:53:19 | Weblog
 連日感染者数が増えつつある日本ですが、どうやら弱毒性らしいということがわかって、国民の緊張も緩みつつあるようです。

 一方で、水際で防ぎきるのは半ば無理だろうと思っていた人も多いと思いますが、水際作戦を標榜した政府の対策は、徹底したやり方を貫かざるを得ませんでした。

 しかし、その徹底したマニュアル的なやり方は見方によっては滑稽に見えるようです。


---------- 【以下引用】 ----------



新型インフルエンザ対策をアメリカ人に爆笑される理由=為替王 2009/05/20(水) 09:11
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0520&f=business_0520_021.shtml


  昨日、出張でアメリカから成田に着いたアメリカ人が、成田空港で見た新型インフルエンザ対策について、猛烈な勢いで感想を話してくれました。

  「飛行機が成田に到着したら、水色の服と帽子をかぶった集団が10人くらい、でっかいゴーグルとマスクつけて、長靴はいて乗り込んできた。日本と間違えてアフガニスタンにでも着いたのかと思った。テロ集団の乗っ取りかと思った。」

  「全員毒ガスマスクのようなものをつけていた。日本人は頭がおかしくなったのか?」

  「1時間くらい飛行機で拘束された。勘弁してくれ。」

  「全員にマスクが配布されてつけろと命令された。余計なお世話だ。」

  「大阪で新型インフルエンザが広まっていて医者が不足していて大変なパニックになっていると脅された。本当なのか?」

  「トイレに行こうとしたら、同じ飛行機でアメリカから来た日本人が、“なにをやってるの!マスクをつけなさい!”とおばさんに注意されたそうだ。君の国は、本当に何がどうなったんだ?」

  「変なカメラで全員チェックされた。まるで病原菌扱いだ」

  「まるで、映画のワンシーンのようだ。日本中でこのようなコメディが繰り広げられているのか?」

  「出張が多いという近くにいたアメリカ人にも聞いてみたが、こんな奇妙な国は初めてだといっていた。ちなみに我が国(アメリカ)では新型インフルエンザで死者も出ているが、こんな騒ぎは一切ない。テレビでもやってない。」

  「ただ。。。アメリカの私の地元でも、マスクで防備している人はいるんだが。。。どうも日本からやって来た日本人だけがマスクをしてるようなんだ。マスクをつけてる人を見たらそれは日本人だってちょっとした笑いものになっている」

  「私も含めてアメリカ人はみな、もらったマスクをどう処理すべきか困っていたよ。私はもう捨てたけど。」

  「まさか、日本は税金でこんなことをやっているのか? 日本人はこのように税金を無駄遣いされて怒らないのか? なんて心が広いんだ。」

  「しかし、これは本当に有能といわれている日本の官僚が考えた新型インフルエンザ対策なのか? 本当に信じられない。」

以上が、アメリカ人の率直な意見です。
最後に、アメリカ人の彼はこう白状しました。

  「私はビジネスクラスでやってきて、そこにいたのはほぼ全員アメリカ人だったが、最初はみんな我慢していたんだが、途中からみな我慢できなくなった。なにがかって? 別に我慢できなくなって怒ったわけではないぞ。みんな我慢できなくなって爆笑したんだ。あれはもう笑わずにはいられない。私も今年一番大笑いさせてもらったよ。」

  「ごめんよ。私も君の事は好きだが、こんな日本の対応には爆笑せずにはいられなかったんだ。あっはっは。いま思い出しても笑いが止まらないよ。はっはっはっ、ごめんごめん。」

  「私の近くの座席にいたのはジャーナリストかもしれないが、彼は写真を撮っていた。気の毒だが、この日本の滑稽なシーンが世界中に配信されるかもしれない。」(執筆者:為替王)

---------- 【引用ここまで】 ----------

 結果として弱毒性だったから対応の徹底振りが喜劇にも見えるかもしれませんが、次に強毒性のインフルエンザが襲ってきたことを考えると、良い練習になったのではないでしょうか。

 まあ「笑わば笑え」でしょうかね。危機管理は「やりすぎだ!」位の対応をしないと、世間は納得しないものですから。

 最初から強毒性が襲ったらどうだったか、ということを考えると、世界標準の対応はそれでよいのか、と思います。インフルエンザ対策のどこまでが自己責任でどこからが社会としての対応なのかは、国民性や文化、医療水準によって随分違いそうですね。


 そうそう、マスクの不足している関西方面に台湾からプレゼントがあったそうです。


---------- 【以下引用】 ----------
「大地震の時のお礼にマスク」台湾から兵庫・大阪へ 2009年5月21日5時34分
 http://www.asahi.com/national/update/0521/OSK200905200151.html

台湾から寄贈されたマスクが入った段ボール箱を県災害対策センターに運び入れる職員=20日午後、神戸市中央区、西畑志朗撮影
 新型インフルエンザの感染が広がる兵庫県と大阪府に20日、台湾当局がマスク計20万枚を贈った。99年の台湾大地震の際、兵庫県から職員の派遣や義援金約2億8千万円を受けたことへの「お返し」という。計200万枚が届くことになっており、両府県は配布先を検討する。

 神戸市中央区の県災害対策センターには20日夕、マスクの入った段ボール箱100個が到着した。台北駐大阪経済文化弁事所の黄諸候所長は「台湾は新型肺炎でとても苦しい経験をしたので、いち早く届けたかった」と話した。

---------- 【引用ここまで】 ----------

 困ったときの友人は真の友人です。

 アサヒがこれを書いたのはちょっと驚き 
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貧富の差が見える

2009-05-21 23:21:30 | Weblog
 昨日、フィリピンへ赴任中の友人が一時帰国したのを捕まえて、しばしの懇談会を開きました。

 「日本は貧富の差が目立たないね」という話で盛り上がりましたが、今日の中国系ブログもそんな話題でした。


---------- 【以下引用】 ----------



貧富の差を示すジニ係数、警戒ラインの0.4超え上昇続く―中国 2009年5月18日
 http://rchina.jp/article/31536.html

中国国家統計局によると、改革開放以来の経済成長に伴って貧富の差を表すジニ係数が上昇していることが分かった。中国新聞網が伝えた。

統計によると、78年には0.317だったジニ係数が06年には0.496にまで上昇した。ジニ係数とは社会における所得分配の不平等さを測る指標で、係数の値がゼロに近いほど格差が少ない状態を表す。社会の不安定が生じる警戒ラインは0.4とされているが、中国は00年からずっとこのラインを超えている。

これに対する専門家の意見は様々だ。都市と農村の格差が激しい中国では国際的な基準は当てはまらないとする楽観的な意見がある一方、早急に効果的な措置を取らなければ貧富の差はますます拡大し続けるといった懸念を示す専門家もいる。

ジニ係数が最も低いのは浙江省で最も高いのは貴州省だ。浙江省には民営企業が多く中流層も厚いが、ジニ係数が高い貴州、甘粛、青海省などは民営企業が少ない。中国の著名な経済学者の周天勇(ジョウ・ティアンヨン)氏は「農民に起業させ、民営の中小企業を増やすことで中流層も増えるはずだ」と指摘している。(翻訳・編集/NN)


    ※    ※    ※    ※


【中国ブログ】限界水準を超えつつある中国の「貧富の差」   2009/05/20(水) 19:07

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0520&f=national_0520_037.shtml

  中国における急速な経済発展ばかりに光が当てられているが、その影には急拡大する「貧富の差」がある。高級車や高級ブランドで自らを飾ることが出来る人間もいる一方で、満足な食事すらとれない人も存在すると言う。このブログは中国で拡大する貧富の差について綴ったものである。以下はそのブログより。
---------------------------------------------------------
  改革開放以来、中国では経済が急成長すると同時に「貧富の格差」も拡大してきている。中国におけるジニ係数(所得分配の不平等さを測る指標、数値が大きいほど不平等であることを示す)が警戒すべきレベルをすでに超えていることは紛れもない事実である。

  中国国家統計局のデータによると、2000年以来、中国のジニ係数は0.4を超え、年々上昇を続けている。1978年の中国のジニ係数は0.317であったが、2006年には0.496にまで上昇しているのである。

  この数値が意味しているのは、中国における「貧富の格差」はすでに限界を迎えようとしているということだ。中国の総人口の二割に当たる貧困層が獲得できる富は、富全体のわずか4.7%に過ぎないが、同じく総人口の二割にあたる富裕層が富全体の50%を獲得するのである。

  中国においてジニ係数が最も小さく、格差が小さいのは浙江省であり、ジニ係数が大きく格差も大きいのは貴州省である。浙江省では一般庶民による起業・創業が多いため、民間企業の数が多い。そのため中流階級に属す人数が多いのである。逆に貴州省では民間企業の数が非常に少ないのが現実だ。

  中国の著名経済学者の分析によると、中国のジニ係数が高いのには二つの原因があると言う。一つ目は中小企業の発展が不十分であり、中流階級の人々が少ないこと、二つ目は第一次産業における収入が少なすぎること、および第三次産業の発展が不十分であることだという。

  経済学者は続けて、「基本的な構想としては、農民を農業分野から脱出させるのと同時に中小企業を発展させ、多くの人間に就業機会を提供することだ。そうすることで中流階級は拡大するだろう。さもなくば中国の『貧富の差』は解決しない」と語っている。(編集担当:畠山栄)


---------- 【引用ここまで】 ----------

 この「ジニ係数」というのは不平等の程度を表す尺度として良く用いられるのですが、前提が異なるとかなり違った数字が出るので注意が必要です。

 それでもまあ信用出来る総務省統計局のホームページから見ると、日本の評価は、
 ①単身世帯を含めたすべての世帯(以下「総世帯」という。)における年間可処分所得(等価可処分所得)のジニ係数をみると,平成16年は0.278。

 ②各国によって調査年は異なるが,日本はスウェーデンなどより所得格差が大きいものの,アメリカ,イギリスなどより小さく,OECD加盟諸国のなかでは中位に位置。

 …というものだそうです。一昨年来の世界恐慌の結果としての所得格差についてはまだ統計に繁栄されていると言い難いのですが、「格差社会」という言われただけで悲観的になるのではなく、どんな数字の変化をもってそれを表すかを冷静に見極めたいものです。

 個別の事例を挙げ始めたら上には上が、下には下があるものですからね。

 それにしても、中国の0.496というのは非常に恐ろしい数字です。暴動が起きなければよいのですが…。

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反対でも守って

2009-05-20 23:56:29 | Weblog
 日本人は「恥」の文化だと思っていましたが、時代と共に変質してきているようです。いや、変質した人たちもいるということでしょうか。


---------- 【以下引用】 ----------

 
「反対、でも守って」 ピースボート、海自が護衛 ソマリア沖 5月14日7時57分配信 産経新聞
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090514-00000113-san-pol


 海賊対策のためアフリカ・ソマリア沖に展開中の海上自衛隊の護衛艦が、民間国際交流団体「ピースボート」の船旅の旅客船を護衛したことが13日、分かった。ピースボートは海賊対策での海自派遣に反対しており、主張とのギャップは議論を呼びそうだ。

 海自の護衛艦2隻は11日から13日にかけ、ソマリア沖・アデン湾を航行する日本関係船舶7隻を護衛。うち1隻がピースボートの船旅の旅客船だった。ピースボートは社民党の辻元清美衆院議員が早稲田大在学中の昭和58年に設立。船旅は寄港地の非政府組織(NGO)や学生らとの交流などを目的としている。

 ピースボート事務局によると、船旅の企画・実施会社が護衛任務を調整する国土交通省海賊対策連絡調整室と安全対策を協議し、海自が護衛する船団に入ることが決まったという。

 ピースボートは市民団体による海自派遣反対の共同声明にも名を連ねている。事務局の担当者は「海上保安庁ではなく海自が派遣されているのは残念だが、主張とは別に参加者の安全が第一。(企画・実施会社が)護衛を依頼した判断を尊重する」と話している。


---------- 【引用ここまで】 ----------

 
 「憲法9条があるからこそ平和が保たれる」という主張をする方は多いですが、平和な国内での幸せな議論であることがよく分かるというものです。

 どうして海賊に対して平和の価値を説いて聞かせないのでしょうか。それがあれば平和になるはずなのに、自らの主張のよりどころが役に立たないということを、よりによって反対している相手に助けを求めることで証明してしまうとは・・・。

 日本人は筋が通らないことを理屈よりも「恥」という形で嫌う国民性ですが、いろいろな人たちが混じってくると、矛盾した行動を恥とも思わなくなってくるのでしょうか。

 そもそも「反対」という立場が、いかにそれが起こっている現場についての想像力を欠いたものであるかということで、ピースを唱えながらボートに乗っている人たちには「海賊に襲われる」という現場の現実が分かったということなのでしょうか。

 この矛盾を今後どう説明してくれるのでしょうか。ううむ…気になる。
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土地と食べもののイメージ

2009-05-20 23:40:23 | Weblog
 土地のイメージと食べ物のイメージは結びつきやすいものです。でもそれも案外商売上の意図で作り上げられたものなのかも知れません。

 天津飯っていったらどんな食べ物を思い浮かべますか?ご飯に卵とあんかけが…、う~、美味しそうですけど…。

---------- 【以下引用】 ----------

 

【中国ブログ】中国人から見た日本「天津飯って何?」 2009/05/20(水) 08:28
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0520&f=national_0520_006.shtml


 日本の中華料理と本場中国の中華料理とでは見た目や味付け、調理法など異なる点が多いが、そのなかには日本で生まれた中華料理も存在する。その一つとして「天津飯」を挙げることが出来るが、中国人にとって見れば「天津飯」とは一体どのようなものなのか、想像もできないだろう。このブログは外国における料理の名前に対して外国の地名を付ける理由を考察するものである。以下はそのブログより。
---------------------------------------------------------
 日本でよく見かける中華料理「天津飯」は、実は中国本土および天津には存在しない料理である。中国人にとって「天津」といえば、まず思い浮かぶのは「中華まん」であるが、日本人にとっては「天津飯」であり「天津甘栗」なのである。

 天津を訪れた日本人は、本場の「天津飯」や「天津甘栗」を食べたがるが、「天津飯」は天津には存在しない料理であり、「天津甘栗」のクリはどの季節でもあるわけではないのだった。

 大学に合格し、アモイ(福建省南部に位置する市)に住むことになったとき、私は「福建肉骨茶」という料理を食べたくてしようが無かった。この料理はかつて、マレーシアで食したことがあり、非常に美味しかったからである。しかし、アモイには「福建肉骨茶」という料理は存在しなかったばかりか、福建省全体で見ても存在しない料理だった。

 このように、料理の名前にある土地の名前が付けられていながら、その土地には存在しない料理は数多く存在する。外国人にとって見れば、地名が料理名に付加されていることで異国情緒を感じ取ることができ、売れ行きが良くなるのかも知れない。(編集担当:畠山栄)

---------- 【引用ここまで】 ----------


 そう言えば、以前札幌へ遊びに来た先輩が、私と会う前に札幌でラーメンを食べたらしく、しきりに「美味しかった、美味しかった」と言うのでした。

 その感動があまりに大きそうなので、「先輩どんなラーメンを食べたんですか?」と訊いてみました。すると答えは「それがね、牛乳ラーメン!北海道らしくて美味しかった~!」

 うっう~…、思わず「そうですか…、地元じゃあまり食べませんけど…」と答えるのが精一杯でしたが、そんな話を思い出しました。

 皆さんのところには土地のイメージと合った名物料理がありますか?

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定額給付金は寄付で

2009-05-19 23:44:03 | Weblog
 今夜も友人たちとの4人組で情報交換会という名の飲み会です。

 いつしか話題は定額給付金のことになりました。

「そう言えば定額給付金の使い道はどうしますか?」とAさん。
即座に「寄付します」と私。
「き、寄付ですか…、それは考えなかったなあ…」

 するとBさんが、「そうそう、以前こままささんと会話した時にその話が出ましたよね。そのときに『寄付する』と言われてしまったので、驚いて家に帰ってその話を妻と子供にしたんですよ」
「ほほー、反応はどうでしたか?」
「それが、『そう言う使い方があったのね~!』と我が家では3人分の給付金約4万円を寄付することになってしまいましたよ。今は子供が、どこに寄付しようか、と寄付する先をワクワクしながら探していますよ」

 なるほど、こんな考えに共感してくださる人も中に入るものですね。

    ※    ※    ※    ※

「それで、こままささんはどこに寄付をするんですか?」
「まだ申請もしていませんが、頂いたあかつきには、一つは白血病の骨髄バンクですね、なんとなくライフワークなってしまって。あとは今韓国に実行支配されている竹島を返せ、という団体、あとはマイナーな団体が二つで、3千円×4団体でちょうど1万2千円というわけです」

 すると同席していたCさんが発言。「こままささん、一言言わせてもらいたいですねえ。折角そこまでやるのであれば、定額給付金という経済活動の呼び水的な給付金の趣旨に鑑みて、ぜひもう1万円を足して使ってほしいですね。どうせならそこまでやりませんか?」

「う、う~…、い、1万円は大変なので、もう3千円くらい足しましょうかねぇ…」

 …というわけで、追加の出費になりそうです(笑)。

 一度は定額給付金を拒否しようかと思った私ですが、普段から協力したいと思う気持ちはありながら果たせずにいたことを思い返して、ありがたく頂くことにしました。

 この定額給付金、一時は国民の7~8割が反対だと報道されていたような記憶もありますが、その後一体どうなったのやら。

 あぶく銭の行く先をもう少しウォッチしてみたいものです。 
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流れてこない情報をつかむ

2009-05-18 23:17:54 | Weblog
 先週ある自治体の方が訪ねてきて、四方山話に花が咲きました。

 最近の市の課題は何ですか?と訪ねると、いまだに都市計画の問題だとか。それも市街地の外での開発問題。

「だって、今更市街地の拡大なんて時代じゃないでしょ?これまでの市街化区域だってまだあまり利用されていないのにまだ周辺を開発するなんて…。もう人口減少の時代ですよ?」と私。すると、
「確かにそうなんですが、市長はまだ拡大をしようというスタンスなんですよ。担当レベルでは『国からそんな許可はおりませんよ』と渋っているのですが」

「信じられないですね。それが市民の声だとでも?」
「どこかでそれが市民の声だし、市の将来のためだと思っているフシもありますね」
「やれやれ…」

    ※    ※    ※    ※

 市民のニーズや世間のニーズを拾うというのは、実はトップにとってはなかなか難しいことです。下々はともすればおべんちゃらを言いたくなるし、あまり悪い話は伝えたくはないものです。

 トップの周りにいる部下たちだって、下から上がってくる都合の悪い話はできるだけ処理をしてしまってから伝えようとするものだから。

 私がかつて使えた首長は、部下の話もよく聞いてくれましたが、会合や外部の仕事で外へ出る時は実にたくさんの人に声を掛けて、その意見を聞いていました。

 「あなたはどう思いますか?」というのが口癖のようで、ときには女子高生や子どもにまで話しかけていました。

 後から考えると、それがいかに多様な考えや情報を自分自身で仕入れるか、ということの実践だったようです。

 受動的に構えて、向こうからやって来るものを待っているだけ、真に有用な情報は手に入らないもの。流れてこないところに実は真実があったりするのです。

    ※    ※    ※    ※

 最近のマスコミにも都合の悪いニュースをスルーする傾向がありますが、ネットの台頭でメインストリームに流れてこない情報がその気になれば拾える社会になりつつあります。

 組織の隅々に情報源もなく、ネットも使えないというトップでは、情報の不足が判断のミスを招くのではないかと不安です。

 「情報は裏を読め」とは実はそういうことでもあるのかも。 
 
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