政治や国際問題を書く元気がだんだん戻ってきたが、そこへ行く前に「違和感のある言葉」を取り上げるシリーズを数回。前に「グローバル・フェスタ」とか「空気感」「目線」「○○学的」などを取り上げていて、カテゴリーの「言葉」にまとめている。さて。久しぶりに書くのは「マイ」である。
ピーター・フランクル氏(数学者、大道芸人)だったと思うが、前にこんなことを書いていたとことがある。日本のあちこちを旅していて、ずいぶん遠くの山奥なんかも訪ねている。鉄道とバスで訪れたある宿で、翌日行きたいところへの行き方を支配人(?)に聞いたところ…。
「そこはバスが廃止されてしまったので、マイカーで行くしかありません。」
そこで次の日、ずっとロビーで待っていたのだが、何の連絡もないまま時間だけが経っていく。またフロントで聞いたところ、昨日聞いた支配人は非番で今はいないから判らないと言われてしまった…。
説明は不要だと思うが、念のために解説しておくと。ピーターさんは支配人が「マイカー」で行くと言ったから、支配人が彼自身の車(マイ・カー)で案内してくれるとは、何と親切な宿だろうと感動して、翌日はずっと待っていたのだ。一方、支配人の方は「バスがないから、車で行くしかありません」と言っただけで、もちろん自分で案内するつもりなどなかった。それは日本人客なら自明のことだけど、考えてみれば確かに「マイカー」はおかしく、「ユアカ―」(your car)でないと。というか、車で来ていない客なんだから、タクシーやレンタカーの案内をすべきだったわけである。
英語の勉強の最初の時期に、「I my me mine 」というのを覚えさせられる。順番に、主格、所有格、目的格、所有代名詞というらしいけど、これは忘れていて今調べた。これを二人称や三人称についても覚えるわけだけど、案外それは忘れずに残っているのではないか。だけど、先の場合を見ても、こんな簡単な単語だけど、実際の使い方で間違う時がある。所有格の所有者のとらえ方が反対になってしまったわけである。否定疑問文の答え方なんかと同じく、英語と日本語の感覚の違いである。
そんなことを思い出したのは、例の「マイナンバー制度」とやらがきっかけである。政府の広報を見ると、「あなたのマイナンバーが通知されます」とか書いてある。あなたの番号なら、「ユア・ナンバー」と言うべきではないの?それはともかく、今はこの制度そのものの問題は扱わないが、一体この制度を正式には何と言うのかがよく判らない。政府の広報は「マイナンバー」で統一されているけど、このナンバーは自分で勝手に提供してはいけないとあるし、基本的には一生変わらないとある。つまり、勝手につけられたままなのだから、言葉の正確な意味では「マイナンバー」ではない。
パソコンやケータイ電話のメールアドレスなんかは、自分で変えられるではないか。インターネットで登録している様々なサイトのパスワードなども変えられる。むしろ時々変えなさいと向こうから言ってくる。今度の「マイナンバー」とは全然違うではないか。だから、この番号の正式な名前を知りたいと思ったのだが、なかなか見つからない。いろいろ見ていると、要するに根拠法は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」と言うことが判った。このぼう大な法律をざっと読んでも、どこにも「マイナンバー」と言う言葉はないようだ。「個人番号」で通している。
「個人番号」というなら、意味は理解できる。英語で言うなら、“personal number"になるのだろうか。英語で言いたいなら「パーソナル・ナンバー」、あるいは法律どおりに「個人番号」と言ってればいいと思うんだけど。そこを「マイナンバー」などと言うのは、国民自身が望んでいる「いいもの」であるかのごとく印象付けたいということではないだろうか。とにかく「あなたのマイナンバー」なんて言うのは、慣れてはいけない表現だろう。
ピーター・フランクル氏(数学者、大道芸人)だったと思うが、前にこんなことを書いていたとことがある。日本のあちこちを旅していて、ずいぶん遠くの山奥なんかも訪ねている。鉄道とバスで訪れたある宿で、翌日行きたいところへの行き方を支配人(?)に聞いたところ…。
「そこはバスが廃止されてしまったので、マイカーで行くしかありません。」
そこで次の日、ずっとロビーで待っていたのだが、何の連絡もないまま時間だけが経っていく。またフロントで聞いたところ、昨日聞いた支配人は非番で今はいないから判らないと言われてしまった…。
説明は不要だと思うが、念のために解説しておくと。ピーターさんは支配人が「マイカー」で行くと言ったから、支配人が彼自身の車(マイ・カー)で案内してくれるとは、何と親切な宿だろうと感動して、翌日はずっと待っていたのだ。一方、支配人の方は「バスがないから、車で行くしかありません」と言っただけで、もちろん自分で案内するつもりなどなかった。それは日本人客なら自明のことだけど、考えてみれば確かに「マイカー」はおかしく、「ユアカ―」(your car)でないと。というか、車で来ていない客なんだから、タクシーやレンタカーの案内をすべきだったわけである。
英語の勉強の最初の時期に、「I my me mine 」というのを覚えさせられる。順番に、主格、所有格、目的格、所有代名詞というらしいけど、これは忘れていて今調べた。これを二人称や三人称についても覚えるわけだけど、案外それは忘れずに残っているのではないか。だけど、先の場合を見ても、こんな簡単な単語だけど、実際の使い方で間違う時がある。所有格の所有者のとらえ方が反対になってしまったわけである。否定疑問文の答え方なんかと同じく、英語と日本語の感覚の違いである。
そんなことを思い出したのは、例の「マイナンバー制度」とやらがきっかけである。政府の広報を見ると、「あなたのマイナンバーが通知されます」とか書いてある。あなたの番号なら、「ユア・ナンバー」と言うべきではないの?それはともかく、今はこの制度そのものの問題は扱わないが、一体この制度を正式には何と言うのかがよく判らない。政府の広報は「マイナンバー」で統一されているけど、このナンバーは自分で勝手に提供してはいけないとあるし、基本的には一生変わらないとある。つまり、勝手につけられたままなのだから、言葉の正確な意味では「マイナンバー」ではない。
パソコンやケータイ電話のメールアドレスなんかは、自分で変えられるではないか。インターネットで登録している様々なサイトのパスワードなども変えられる。むしろ時々変えなさいと向こうから言ってくる。今度の「マイナンバー」とは全然違うではないか。だから、この番号の正式な名前を知りたいと思ったのだが、なかなか見つからない。いろいろ見ていると、要するに根拠法は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」と言うことが判った。このぼう大な法律をざっと読んでも、どこにも「マイナンバー」と言う言葉はないようだ。「個人番号」で通している。
「個人番号」というなら、意味は理解できる。英語で言うなら、“personal number"になるのだろうか。英語で言いたいなら「パーソナル・ナンバー」、あるいは法律どおりに「個人番号」と言ってればいいと思うんだけど。そこを「マイナンバー」などと言うのは、国民自身が望んでいる「いいもの」であるかのごとく印象付けたいということではないだろうか。とにかく「あなたのマイナンバー」なんて言うのは、慣れてはいけない表現だろう。