続けて外国映画の話。東京ではシャンテ・シネで単館上映しているフランス映画「天国でまた会おう」。「ビール・ストリートの恋人たち」を見たとき、あまりヒットしないだろうと書いたけど、この映画こそ3月1日公開で21日に上映終了となる。もう最終週は一日2回上映である。まあ知名度の問題もあるし、内容的にも受けないだろうなあとは思った。でも絢爛豪華な大ロマンにして、第一次世界大戦から始まる反戦、反権威の大作だ。原作はゴンクール賞を取り、フランスでは映画も大ヒット。そういう前提知識がないと、どんな映画かも判らないだろうが、息を継がせぬ面白さだ。

原作に関しては、ピエール・ルメートルの作品をまとめて読んで、つい最近記事を書いた。『「天国でまた会おう」「炎の色」-ピエール・ルメートルを読む』を参照。あまり原作に触れてないけど、ストーリイを紹介しない方が面白い。でも一応、映画館の紹介をコピーしておく。
1918年、休戦を目前にした西部戦線で、二人の兵士の運命が交わる。上官の悪事に気付き戦場に生き埋めにされたアルベールを、年下の青年エドゥアールが救ったのだが、その時に顔に重傷を負ってしまう。どんな事情なのか「家に帰りたくない」と訴えるエドゥアールのために、アルベールは彼の戦死を偽装する。パリに戻った二人を待っていたのは、戦没者は称えるのに帰還兵には冷たい世間だった。仕事も恋人も失ったアルベールと、過去と縁を切ったエドゥアール。そこに、声を失ったエドゥアールの想いを“通訳”する少女が加わった。一度は負けた人生を巻き返すために、彼らは国を相手にひと儲けする大胆な詐欺を企てる。
映画は原作と少し違っている。それは原作を読んだ人にしか関心がないだろうから、ここでは書かない。変えてもいいし、面白く変わった点もあると思う。長い小説は映画化に際して、「筋立てを追う」ことに注力せざるを得ない。ある程度原作の設定を変えないと、話が混乱してしまう。その意味では、この映画も原作を読む方がもっと面白い。ただ語り手の兵士、アルベールが古参兵になっている点だけは書いておく。原作はエドゥアールと同年代である。それはアルベール役のアルベール・デュポンデル(1964~)が監督もしているからだろう。自作自演するために主人公の年齢を上げてしまったわけだが、やはりそれは原作通りの方がいいかなと思う。
戦争で顔を損傷したエドゥアール(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)は仮面をつけるが、それは映画でこそよく判る。なるほどすごい迫力だ。演じた俳優はアルゼンチン生まれで、エイズ初期の患者運動を描いた「BPM」で印象的な役をやっていた。この映画はフランスのセザール賞で監督賞を得たが、作品賞を得たのが「BPM」だった。エドゥアールの姉、マドレーヌはエミリー・ドゥケンヌという人だが、ダルデンヌ兄弟のカンヌ、パルムドール作品「ロゼッタ」のタイトルロールの少女だという。その他、上手な脇役がそろっているが、名前で客を呼べるような人がいない。
(仮面のエドゥアール)
原作自体が「大ロマン」を目指す三部作の始まりである。戦場シーンから始まり、壮大なエドゥアールの一族の館、戦死者の墓、壮大な慰霊碑詐欺作戦。趣向は面白すぎるぐらいそろっている。また「国家」とは何か、戦争とは何かを考えさせる作品でもある。全体的には流れるような映像の迫力に酔うような時間を過ごした。是非紹介しておく次第。面白さだけなら、ここ数日に書いた中では「女王陛下のお気に入り」と並ぶ作品だ。

原作に関しては、ピエール・ルメートルの作品をまとめて読んで、つい最近記事を書いた。『「天国でまた会おう」「炎の色」-ピエール・ルメートルを読む』を参照。あまり原作に触れてないけど、ストーリイを紹介しない方が面白い。でも一応、映画館の紹介をコピーしておく。
1918年、休戦を目前にした西部戦線で、二人の兵士の運命が交わる。上官の悪事に気付き戦場に生き埋めにされたアルベールを、年下の青年エドゥアールが救ったのだが、その時に顔に重傷を負ってしまう。どんな事情なのか「家に帰りたくない」と訴えるエドゥアールのために、アルベールは彼の戦死を偽装する。パリに戻った二人を待っていたのは、戦没者は称えるのに帰還兵には冷たい世間だった。仕事も恋人も失ったアルベールと、過去と縁を切ったエドゥアール。そこに、声を失ったエドゥアールの想いを“通訳”する少女が加わった。一度は負けた人生を巻き返すために、彼らは国を相手にひと儲けする大胆な詐欺を企てる。
映画は原作と少し違っている。それは原作を読んだ人にしか関心がないだろうから、ここでは書かない。変えてもいいし、面白く変わった点もあると思う。長い小説は映画化に際して、「筋立てを追う」ことに注力せざるを得ない。ある程度原作の設定を変えないと、話が混乱してしまう。その意味では、この映画も原作を読む方がもっと面白い。ただ語り手の兵士、アルベールが古参兵になっている点だけは書いておく。原作はエドゥアールと同年代である。それはアルベール役のアルベール・デュポンデル(1964~)が監督もしているからだろう。自作自演するために主人公の年齢を上げてしまったわけだが、やはりそれは原作通りの方がいいかなと思う。
戦争で顔を損傷したエドゥアール(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)は仮面をつけるが、それは映画でこそよく判る。なるほどすごい迫力だ。演じた俳優はアルゼンチン生まれで、エイズ初期の患者運動を描いた「BPM」で印象的な役をやっていた。この映画はフランスのセザール賞で監督賞を得たが、作品賞を得たのが「BPM」だった。エドゥアールの姉、マドレーヌはエミリー・ドゥケンヌという人だが、ダルデンヌ兄弟のカンヌ、パルムドール作品「ロゼッタ」のタイトルロールの少女だという。その他、上手な脇役がそろっているが、名前で客を呼べるような人がいない。

原作自体が「大ロマン」を目指す三部作の始まりである。戦場シーンから始まり、壮大なエドゥアールの一族の館、戦死者の墓、壮大な慰霊碑詐欺作戦。趣向は面白すぎるぐらいそろっている。また「国家」とは何か、戦争とは何かを考えさせる作品でもある。全体的には流れるような映像の迫力に酔うような時間を過ごした。是非紹介しておく次第。面白さだけなら、ここ数日に書いた中では「女王陛下のお気に入り」と並ぶ作品だ。