2月の訃報の続き。どうしても書いて記憶しておかないといけないのは、女性史研究家の加納美紀代氏の訃報である。22日、すい臓がんで死去、78歳。加納さんは昔よく集会で話を聞いているから、若いころの顔が思い浮かぶ。70年代に女性と戦争の関わりを追求して「銃後史ノート」全10巻を刊行していた。ウィキペディア等に情報がないので、詳しいことが判らないけれど、70年代、80年代に市民運動に関心があった人には忘れられない人だろう。「被害者」として語られがちな「女性の戦争体験」を問い直し、天皇制や植民地を問い続けた。「女性と天皇制」「戦後史とジェンダー」「まだフェミニズムがなかったころ」「ヒロシマとフクシマのあいだ」など多くの著書がある。
(加納美紀代)
3月1日になって、舞踊家の花柳幻舟(はなやぎ・げんしゅう)の訃報が報じられた。77歳。群馬県の「めがね橋」から転落したと見られ、28日の午後5時ごろに発見され1時間後に死亡が確認されたという。花柳幻舟と言われて、そういう人がいたなあと思い出すのはもう相当年齢が高い人だろう。花柳流名取となったが、家元制度打倒を唱えて活動し、70年代には反体制のアイドルになった。映画、テレビ、舞台等でも活躍し、特に日活ロマンポルノにはずいぶん出ている。田中登監督の傑作「㊙色情めす市場」の芹明香の母親役が忘れられない。革新自由連合にも関わり、歴史家羽仁五郎の「ガールフレンド」としても話題になった。
(若い頃の花柳幻舟)
そんな花柳幻舟は1980年に、言論活動を踏み越えて花柳流家元襲撃事件を起こし下獄した。傷害の程度が軽かったので、翌年には出所しているが、実際のテロにまで突き進んだのは衝撃だった。1990年には天皇の即位祝賀パレードに爆竹を投げて、罰金4万円を払わず20日間の労役に服した。その後、放送大学を卒業して「小学校中退、大学卒業」という本を書いた。著書は多くあり、「子宮からの出発」とか「無学盲目体当り」「修羅 家元制度打倒」などすごい題名が並ぶ。まさに「代替わり」の直前に訃報が伝えられたが、事故死とされている。
作家、元経済企画庁長官(小渕内閣)、元通産官僚の堺屋太一(本名池口小太郎)が死去。2月10日、83歳。テレビや新聞で大きく扱われたが、高年齢層に知名度が高く、70年大阪万博や閣僚経験など「絵になる」素材が多い。今回「巨人大鵬卵焼き」がこの人の言葉だと知った。現職官僚として「油断!」(1975)「団塊の世代」(1976)などの小説を書いた。話題になったので、前者を読んでみたが記憶がある。「団塊の世代」は要するに「ベビーブーマー」のことだが、最近では「読めない」「意味を知らない」若い人が多い。近年は安倍内閣官房参与でカジノ法案を推進した。橋下徹氏に府知事選出馬を勧誘した人で、いろいろ迷惑なことを残したものだと思う。
(堺屋太一)
書いてない訃報を国内から。
・長野重一(しげいち)、4日死去、93歳。写真家。岩波写真文庫で多くの巻を担当、その後フリーとなってドキュメンタリー写真で知られた。映画でも活躍し、羽仁進監督の「充たされた生活」「彼女と彼」「手をつなぐ子ら」「アンデスの花嫁」を撮影している。市川崑の「東京オリンピック」の撮影にも参加し、大林宣彦監督の「北京的西瓜」「ふたり」などの撮影も担当した。
・安井侑子、8日死去、80歳。ロシア文学者。安井郁の娘で、父が国際レーニン勲章を受けたときに訪ソし、そのままお茶の水女子大を中退してモスクワ大学に留学した。スターリン後の「雪どけ」時代で、エフトゥシェンコらと親交を深めた。ブルガーコフ「悪魔とマルガリータ」を初訳したほか、現代ロシア文学を多数翻訳した。
・大濱徹也、9日死去、81歳。日本近代史。軍隊史やキリスト教史の多くの著書がある。
・高橋英夫、13日死去、88歳。文芸評論家。1947年の一高最後の卒業生で、そういう経歴からかちょっと古風で正統的な印象がある。小林秀雄、河上徹太郎、志賀直哉、ブルーノ・タウトらの著書がある。文庫の解説などでは読んでるけど、著書は読んでないと思う。
・内田正人、15日死去、82歳。「ザ・キングトーンズ」を結成し、68年に「グッド・ナイト・ベイビー」がヒットした。
・富永健一、23日死去、87歳。文化功労者。戦後を代表する社会学者の一人で、社会変動を組み込んだ社会システム理論を展開した、と出ているけど僕にはよく判らないけれど。
・見崎進、25日死去、92歳。第五福竜丸の操舵手として、ビキニ環礁の水爆実験で被ばくした。
・松尾文夫、25日死去、85歳。元共同通信ワシントン支局長、日米首脳の広島、真珠湾相互訪問を提唱した。「銃を持つ民主主義」でエッセイスト・クラブ賞。
・佐藤安太、26日死去、94歳。玩具メーカー、タカラの創業者。ダッコちゃん、リカちゃん人形、人生ゲーム、チョロQなどヒット商品を続々と送り出した。2002年に経営の一線を退き、人材育成のNPO法人理事長になった。2007年には山形大学大学院に入学し、2010年に博士を授与された。すごい人だけど、名前を知らなかった。
(佐藤安太)
外国のスポーツ選手の訃報。フィンランドのスキー・ジャンプ選手、マッチ・ニッカネンが4日死去、55歳。84年サラエボ五輪で90m級金、88年カルガリー五輪で70m級、90m級、団体で金メダル。鳥人と呼ばれた。ワールドカップ通算46勝。
(ニッカネン)
メジャーリーグ初の黒人監督、フランク・ロビンソンが7日死去、83歳。歴代10位の586ホームラン、史上初の両リーグでのMVPを獲得した。インディアンスで選手兼任監督となり、オリオールズ、エクスポズなどで監督をした。
(フランク・ロビンソン)
メジャーリーグの投手として初代サイ・ヤング賞受賞者のドン・ニューカムが19日死去、92歳。この人も黒人選手で、昔あった「ニグロリーグ」出身である。代打でも起用され、通算15ホームランを記録している。1962年に中日に打者として所属した。

3月1日になって、舞踊家の花柳幻舟(はなやぎ・げんしゅう)の訃報が報じられた。77歳。群馬県の「めがね橋」から転落したと見られ、28日の午後5時ごろに発見され1時間後に死亡が確認されたという。花柳幻舟と言われて、そういう人がいたなあと思い出すのはもう相当年齢が高い人だろう。花柳流名取となったが、家元制度打倒を唱えて活動し、70年代には反体制のアイドルになった。映画、テレビ、舞台等でも活躍し、特に日活ロマンポルノにはずいぶん出ている。田中登監督の傑作「㊙色情めす市場」の芹明香の母親役が忘れられない。革新自由連合にも関わり、歴史家羽仁五郎の「ガールフレンド」としても話題になった。

そんな花柳幻舟は1980年に、言論活動を踏み越えて花柳流家元襲撃事件を起こし下獄した。傷害の程度が軽かったので、翌年には出所しているが、実際のテロにまで突き進んだのは衝撃だった。1990年には天皇の即位祝賀パレードに爆竹を投げて、罰金4万円を払わず20日間の労役に服した。その後、放送大学を卒業して「小学校中退、大学卒業」という本を書いた。著書は多くあり、「子宮からの出発」とか「無学盲目体当り」「修羅 家元制度打倒」などすごい題名が並ぶ。まさに「代替わり」の直前に訃報が伝えられたが、事故死とされている。
作家、元経済企画庁長官(小渕内閣)、元通産官僚の堺屋太一(本名池口小太郎)が死去。2月10日、83歳。テレビや新聞で大きく扱われたが、高年齢層に知名度が高く、70年大阪万博や閣僚経験など「絵になる」素材が多い。今回「巨人大鵬卵焼き」がこの人の言葉だと知った。現職官僚として「油断!」(1975)「団塊の世代」(1976)などの小説を書いた。話題になったので、前者を読んでみたが記憶がある。「団塊の世代」は要するに「ベビーブーマー」のことだが、最近では「読めない」「意味を知らない」若い人が多い。近年は安倍内閣官房参与でカジノ法案を推進した。橋下徹氏に府知事選出馬を勧誘した人で、いろいろ迷惑なことを残したものだと思う。

書いてない訃報を国内から。
・長野重一(しげいち)、4日死去、93歳。写真家。岩波写真文庫で多くの巻を担当、その後フリーとなってドキュメンタリー写真で知られた。映画でも活躍し、羽仁進監督の「充たされた生活」「彼女と彼」「手をつなぐ子ら」「アンデスの花嫁」を撮影している。市川崑の「東京オリンピック」の撮影にも参加し、大林宣彦監督の「北京的西瓜」「ふたり」などの撮影も担当した。
・安井侑子、8日死去、80歳。ロシア文学者。安井郁の娘で、父が国際レーニン勲章を受けたときに訪ソし、そのままお茶の水女子大を中退してモスクワ大学に留学した。スターリン後の「雪どけ」時代で、エフトゥシェンコらと親交を深めた。ブルガーコフ「悪魔とマルガリータ」を初訳したほか、現代ロシア文学を多数翻訳した。
・大濱徹也、9日死去、81歳。日本近代史。軍隊史やキリスト教史の多くの著書がある。
・高橋英夫、13日死去、88歳。文芸評論家。1947年の一高最後の卒業生で、そういう経歴からかちょっと古風で正統的な印象がある。小林秀雄、河上徹太郎、志賀直哉、ブルーノ・タウトらの著書がある。文庫の解説などでは読んでるけど、著書は読んでないと思う。
・内田正人、15日死去、82歳。「ザ・キングトーンズ」を結成し、68年に「グッド・ナイト・ベイビー」がヒットした。
・富永健一、23日死去、87歳。文化功労者。戦後を代表する社会学者の一人で、社会変動を組み込んだ社会システム理論を展開した、と出ているけど僕にはよく判らないけれど。
・見崎進、25日死去、92歳。第五福竜丸の操舵手として、ビキニ環礁の水爆実験で被ばくした。
・松尾文夫、25日死去、85歳。元共同通信ワシントン支局長、日米首脳の広島、真珠湾相互訪問を提唱した。「銃を持つ民主主義」でエッセイスト・クラブ賞。
・佐藤安太、26日死去、94歳。玩具メーカー、タカラの創業者。ダッコちゃん、リカちゃん人形、人生ゲーム、チョロQなどヒット商品を続々と送り出した。2002年に経営の一線を退き、人材育成のNPO法人理事長になった。2007年には山形大学大学院に入学し、2010年に博士を授与された。すごい人だけど、名前を知らなかった。

外国のスポーツ選手の訃報。フィンランドのスキー・ジャンプ選手、マッチ・ニッカネンが4日死去、55歳。84年サラエボ五輪で90m級金、88年カルガリー五輪で70m級、90m級、団体で金メダル。鳥人と呼ばれた。ワールドカップ通算46勝。

メジャーリーグ初の黒人監督、フランク・ロビンソンが7日死去、83歳。歴代10位の586ホームラン、史上初の両リーグでのMVPを獲得した。インディアンスで選手兼任監督となり、オリオールズ、エクスポズなどで監督をした。

メジャーリーグの投手として初代サイ・ヤング賞受賞者のドン・ニューカムが19日死去、92歳。この人も黒人選手で、昔あった「ニグロリーグ」出身である。代打でも起用され、通算15ホームランを記録している。1962年に中日に打者として所属した。