尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

柳亭小痴楽真打昇進披露興行

2019年10月07日 22時47分40秒 | 落語(講談・浪曲)
 東京の寄席では、落語協会と落語芸術協会どっちも順次真打披露興行を行っている。今日は浅草演芸ホールに落語芸術協会(芸協)の柳亭小痴楽(りゅうてい・こちらく)の昇進披露を見に行った。珍しく一人の昇進で、二つ目時代から人気者だったので大盛況。いや、元気よくてすごく面白いな。NHK教育で時々やってる「落語ディーパー」を見てる人なら、柳亭小痴楽の面白さを知ってるだろう。同じく二つ目の落語協会・柳家わさびも今回昇進だ。6日夜に二人の昇進を追う特番を見たばかり。
(終了後にホール前で客に応える小痴楽)
 小痴楽は芸協二つ目11人で作ったユニット「成金」の一人で、最初に真打に昇進した。「成金」の面々も日替わりで高座に出ているが、今日は来年2月の昇進が決まっている超人気者の講談師・神田松之丞。初めて聞いたんだけど、やはりすごくエネルギッシュで、大物感を感じる。松之丞だけ聞いて出ていく人がいるんでビックリした。トリの小痴楽がマクラで松之丞らとのベトナム旅行での様子などを暴露しまくっていたら、着替え終わっていた松之丞が高座に乱入してきた。珍事に大笑い。

 柳亭痴楽と言えば、4代目を思い出す。「破壊された顔の持ち主」を売り物にして、「痴楽綴方教室」というネタでテレビの人気者だった。1973年に大阪で脳卒中で倒れ、20年間闘病生活を送った。その様子は弟子で、小痴楽の師匠である柳亭楽輔が笑いの中に哀歓を込めて語っていた。4代目痴楽の弟子が2代目小痴楽で、1996年に5代目痴楽を継いだ。しかし、5代目も2005年に脳卒中で倒れ、2009年に亡くなった。この5代目の次男が今回の3代目小痴楽で、父が病気のため現・桂文治に入門した。ところが度重なる遅刻のために破門となって、父の弟弟子の楽輔の門下に移った。

 このエピソードの裏に何かあるのか知らない。(「起立性失調障害」などがあったのかもしれない。)でも、高校も中退で落語家になるって、大学落研ばかりの昨今の落語界の中で貴重だと思う。その後もいろんなエピソードがあるようで、なんだか「生きていた与太郎」みたいで、こんな人がいたのかと楽しくなった。トリの落語も大受けで、エネルギッシュ。「磯のあわび」というネタで、与太郎が吉原を知らず、儲かると聞いて行きたがる噺。町内にいるという「女郎買いの師匠」に吉原の作法を教わり、そっくり再現してみせるおバカぶりが楽しく演じられる。

 襲名披露だと口上を述べる協会幹部がそろって一席語る。今日も三遊亭小遊三雷門助六春風亭柳橋らが出て盛り上げた。でも圧倒的に小痴楽と松之丞が場内の人気をさらった感じ。やがて6代目痴楽を襲名すると思うけど、その儀が楽しみだ。期待して待っていたい。

 落語ブームとかで、土日は寄席もいっぱいのことも多い。今日も後半の襲名披露あたりからは立ち見だったが、平日なら早く行けば座れるだろう。今はヒット映画も前日には席を取って見ることがほとんど。でも体調によっては、無理して行くことになる。演劇だと人気舞台なら、大分前に席を押さえる必要がある。突然行って自由席で見られる落語はいいなと思う。だから高齢者で満杯である。僕など若い方。若い頃はオリジナリティを求めていたけど、年取ったら同じ噺、同じ奇術や曲芸、紙切りなんかが楽しくなった。同じマクラでもいいのである。自分でもそうなんだと不思議。
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