先に書いた「東京高検検事長の定年延長は違法である」をさらに続けて追求することにする。これは非常に重大な問題で、野党は国会でもっと質問して欲しい。安倍内閣においては、「行政の中立性」がどんどん侵されている。行政トップは政治任命だが、その担当分野の性質から比較的に中立性が求められる分野がある。最高裁判所裁判官、内閣法制局長官、日銀総裁などがそれである。また法務、教育などの分野も同じだろう。これら「禁断の聖域」に安倍内閣は踏み込んできた。
前川喜平氏のコラム(東京新聞2月9日)によれば、同様の「異例の人事」は文科省でも起きたという。「藤原誠君は2018年3月末が官房長の定年だったが、異例の定年延長を受け、10月に事務次官に就任した。本命の小松親次郎文科審議官は退官した。藤原君は官邸に極めて近い人物、小松君は官邸と距離を置く人物だった」とのことである。今回は黒川氏の定年延長前は林真琴名古屋高検検事長が検事総長の本命とされていた。前川氏は両氏とも知っているが、「黒川氏は如才ない能吏、林氏は冷静な理論家という印象」だそうである。政権による「人事の私物化」が進んでいる。
今回の人事に関しては、画像にあるような3氏に関係がある。黒川東京高検検事長は2月7日に定年だから、後任に林真琴氏が就任する。林氏も7月には63歳を迎えるが、4月20日~27日に行われる第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)を花道に稲田検事総長が勇退し、後任に林氏が昇格する。それが検察内部の構想で、名古屋では林氏の送別会も開かれていたという。(東京新聞2月11日記事による。)ちなみにそのコングレス(国際会議)は「犯罪防止・刑事司法分野の国連最大規模の会議で、国連により5年に1度開催」されるものだという。
つまり今回の人事案は検察内部で作られたものではなく、官邸主導のものなのである。こんなことがあって良いのだろうか。「検察庁のトップが違法に就任した」という法解釈が正しいかどうかは別にして、そのように疑われるだけで検察のイメージダウンは甚だしい。時には被告人に死刑を求刑することもある検察官。法務大臣いわく、日本では検察官が有罪が見込まれる事件のみを起訴するから無罪率が低いという。そのような重大な責務を持つはずの検察官。そのトップが違法に定年を越えて在任している!! そのような疑義が生じるだけで、大問題ではないか。
(後任予定だった林真琴名古屋高検検事長)
前回も書いたけれど、この定年延長は違法と解釈するのが正しいと考える。前回書いてない検察庁法条文を指摘しておく。そもそも国家公務員法では定年は60歳である。一方で検察庁法では検察官の定年は63歳、検事総長のみ65歳となっている。そもそもちょっと前まで公務員には定年がなかった。信じられないかもしれないが、自分が教員になった1980年代初期には定年がなかった。(学校には70歳近い教師がいた。)国家公務員の定年は1981年に導入され、1984年から実施された。
そこで検察庁法第32条の2に「この法律第十五条、第十八条乃至第二十条及び第二十二条乃至第二十五条の規定は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)附則第十三条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法の特例を定めたものとする。」と明記された。15条、18条は任官に関する規定で、22条が定年規定である。検察官の定年63歳というのは「国家公務員法の特例」だとされている。もともと全員が特例なんだから、国家公務員法の特例を適用する余地がない。
(稲田伸夫検事総長)
国家公務員法の定年延長特例は、前回書いたように「1年限り」「3回まで」しか適用できない。これは「63歳を超える国家公務員は、国家公務員法における定年の延長は出来ない」と理解すべきである。検察官も国家公務員だから、定年延長出来るというのは「ヘリクツ」以外の何物でもない。それなら検事総長の65歳定年も延長出来ることになる。東京高検検事長が個別事件の捜査をしているわけじゃないだろう。定年を延長する必要があるなら、検察全体に関わることになる。それなら検事総長も名古屋高検検事長も定年を延長しないとおかしくなる。
東京高検検事長は現在、検察庁法の規定に違反して在任している。どうすればいいんだろうか。誰か検察庁法違反で告発して欲しいと思う。もっとも自分で居座っているわけじゃなくて、内閣が閣議で決定している。だから合法だという考え方もあるだろう。しかし、法的には問題があるとしても、日本では法律の解釈は裁判所にしか判断できないから、何らかの形で裁判にしないとならない。その知恵を絞るのは法律の専門家にお願いしたいと思う。しかし、僕が思うのは検察官には自浄作用が働かないのかということだ。多くの再審事件を見ていると、とても自浄など期待できない気もする。だけど検察官は司法修習を経て法曹資格を持っているんだから、今回の措置がおかしいことは判っているだろう。
黒川氏自身も検察官としての誇りが一片でも残っているならば、延長を受けるべきではなかった。そんなものはとっくにないのかもしれないけど。しかし、定年退職が延長された期間であっても、本人が一身上の都合で退職する自由はある。本人が自ら辞任して違法状態をなくすべきだ。というか、それを求めていかなくてはいけない。
前川喜平氏のコラム(東京新聞2月9日)によれば、同様の「異例の人事」は文科省でも起きたという。「藤原誠君は2018年3月末が官房長の定年だったが、異例の定年延長を受け、10月に事務次官に就任した。本命の小松親次郎文科審議官は退官した。藤原君は官邸に極めて近い人物、小松君は官邸と距離を置く人物だった」とのことである。今回は黒川氏の定年延長前は林真琴名古屋高検検事長が検事総長の本命とされていた。前川氏は両氏とも知っているが、「黒川氏は如才ない能吏、林氏は冷静な理論家という印象」だそうである。政権による「人事の私物化」が進んでいる。
今回の人事に関しては、画像にあるような3氏に関係がある。黒川東京高検検事長は2月7日に定年だから、後任に林真琴氏が就任する。林氏も7月には63歳を迎えるが、4月20日~27日に行われる第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)を花道に稲田検事総長が勇退し、後任に林氏が昇格する。それが検察内部の構想で、名古屋では林氏の送別会も開かれていたという。(東京新聞2月11日記事による。)ちなみにそのコングレス(国際会議)は「犯罪防止・刑事司法分野の国連最大規模の会議で、国連により5年に1度開催」されるものだという。
つまり今回の人事案は検察内部で作られたものではなく、官邸主導のものなのである。こんなことがあって良いのだろうか。「検察庁のトップが違法に就任した」という法解釈が正しいかどうかは別にして、そのように疑われるだけで検察のイメージダウンは甚だしい。時には被告人に死刑を求刑することもある検察官。法務大臣いわく、日本では検察官が有罪が見込まれる事件のみを起訴するから無罪率が低いという。そのような重大な責務を持つはずの検察官。そのトップが違法に定年を越えて在任している!! そのような疑義が生じるだけで、大問題ではないか。
(後任予定だった林真琴名古屋高検検事長)
前回も書いたけれど、この定年延長は違法と解釈するのが正しいと考える。前回書いてない検察庁法条文を指摘しておく。そもそも国家公務員法では定年は60歳である。一方で検察庁法では検察官の定年は63歳、検事総長のみ65歳となっている。そもそもちょっと前まで公務員には定年がなかった。信じられないかもしれないが、自分が教員になった1980年代初期には定年がなかった。(学校には70歳近い教師がいた。)国家公務員の定年は1981年に導入され、1984年から実施された。
そこで検察庁法第32条の2に「この法律第十五条、第十八条乃至第二十条及び第二十二条乃至第二十五条の規定は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)附則第十三条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法の特例を定めたものとする。」と明記された。15条、18条は任官に関する規定で、22条が定年規定である。検察官の定年63歳というのは「国家公務員法の特例」だとされている。もともと全員が特例なんだから、国家公務員法の特例を適用する余地がない。
(稲田伸夫検事総長)
国家公務員法の定年延長特例は、前回書いたように「1年限り」「3回まで」しか適用できない。これは「63歳を超える国家公務員は、国家公務員法における定年の延長は出来ない」と理解すべきである。検察官も国家公務員だから、定年延長出来るというのは「ヘリクツ」以外の何物でもない。それなら検事総長の65歳定年も延長出来ることになる。東京高検検事長が個別事件の捜査をしているわけじゃないだろう。定年を延長する必要があるなら、検察全体に関わることになる。それなら検事総長も名古屋高検検事長も定年を延長しないとおかしくなる。
東京高検検事長は現在、検察庁法の規定に違反して在任している。どうすればいいんだろうか。誰か検察庁法違反で告発して欲しいと思う。もっとも自分で居座っているわけじゃなくて、内閣が閣議で決定している。だから合法だという考え方もあるだろう。しかし、法的には問題があるとしても、日本では法律の解釈は裁判所にしか判断できないから、何らかの形で裁判にしないとならない。その知恵を絞るのは法律の専門家にお願いしたいと思う。しかし、僕が思うのは検察官には自浄作用が働かないのかということだ。多くの再審事件を見ていると、とても自浄など期待できない気もする。だけど検察官は司法修習を経て法曹資格を持っているんだから、今回の措置がおかしいことは判っているだろう。
黒川氏自身も検察官としての誇りが一片でも残っているならば、延長を受けるべきではなかった。そんなものはとっくにないのかもしれないけど。しかし、定年退職が延長された期間であっても、本人が一身上の都合で退職する自由はある。本人が自ら辞任して違法状態をなくすべきだ。というか、それを求めていかなくてはいけない。