尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

政府の「自粛要請」に異議ありー新型コロナウイルス問題

2020年02月27日 22時47分08秒 |  〃 (新型コロナウイルス問題)
 安倍首相が新型コロナウイルスの対応で相次いで「自粛要請」を行っている。2月26日には「全国的なスポーツ、文化イベント」の自粛を呼びかけ、それを受けて萩生田文科相は「国立の美術館や博物館は閉鎖」するよう要請し、また「国立劇場などの公演も中止や延期」を求めた。その結果、国立博物館は27日から突然休館になってしまった。国立劇場も主催公演は休館だけど、貸劇場の場合は主催者に判断をゆだねている。何故か国立美術館は1日遅れて、28日から休館と発表された。
 
 それだけでも非常におかしいと思ったのだが、安倍首相は続いて27日になって、全国の小中高校に3月2日から春休みいっぱいの休校を求めた。入学検査や卒業式は別だというけど、突然こんなことを言われても学年末試験が終わってない多くの学校では卒業、進級の判断に困ってしまう。けっして生徒のためにならないと思うけど、それ以上に大きな問題がある。そのことを批判的に考えてみたい。なお、新型コロナウイルスのリスクをどう評価するか。また安倍政権の対応をどのように考えるか。またクルーズ船問題の対応はどう考えるべきかなどのの問題はまた別に考えたい。
(学校休校を要請する安倍首相)
 まず学校の方から。学校が休みになれば、児童生徒は家庭で過ごすわけだ。長期休業と同じだが、それは予定のものだから親も判っている。今回は突然だから、親が休めるとは限らない。宿題も出て静かに自宅学習を行うタテマエなんだろうが、おとなしく家にいる生徒ばかりじゃない。1ヶ月も自宅で過ごすなんてあり得ない。じゃあどこに出かけるか。この機会に博物館や美術館を勧めたいところだが、休館してたら行けない。それなら皆で誘い合わせて繁華街に出かけようとなる。必ずそういう子どもが出るわけで、かえって感染リスクを増大させる措置だし、事件に巻き込まれる危険も増大する。

 小学校低学年の場合、昼食はどうするんだろうか。いや中高生の場合も同様だが、親が作れる家庭は少ないだろう。良くてコンビニ弁当、多くはカップ麺お菓子である。親も働いてるんだから見張ってられないし、どうしたってそうなりそうだ。多くの小中学校は給食があるだろう。栄養バランス的には給食の方が絶対いい。小学校の給食だけでもやった方がいいと思う。もうお金は払ってあるんだし、農家など地域の零細食材供給業者への影響もある。学校は単に学力育成だけではなく、地域の子どもたちを様々に支えている。安倍内閣は首相以下私立しか知らないから知らないのかもしれないが。

 じゃあどうすればいいか。何もしなくていいとは言わない。都会では教職員が朝晩の通勤ラッシュで感染する可能性は否定できない。だから始業・終業時間を変えることが重要だ。北海道など一部地域は独自対応が認められるべきだが、基本線は「お昼をまたいだ短縮授業」で良いのではないか。もう3月である。試験、面談、卒業式練習など、中高ではもともと教科の授業が少ないと思われる。「卒業生を送る会」などもあるだろうけど、それは中止でやむを得ない。部活動も一時休止。2011年も多くの行事が影響を受けたと思うが、一週間もすれば被災地を除く学校は機能していたと思う。今の日本の状況では、学校が機能しないと家庭も決壊してしまうことが心配だ。

 学校の話で長くなったので、スポーツ、文化イベントの方は短く。僕が思ったのは、人が大変だと思ってる仕事の方は放っておいて、楽しみにしてる方を奪ってしまっていいのかということだ。前日ならまだしも、突然東京ドーム(Perfume)や京セラドーム大阪(EXILE)に行ってみたらコンサートが中止になってた。きっとこれに行くのを楽しみに仕事を頑張ってた人も多いだろうに。チケット代は戻るかもしれないが、交通費は返してくれないだろう。それにおとなしく帰るんじゃなくて、どこかで食べたり遊んでいったに決まってる。これじゃ感染リスクを高めてるんじゃないか。
(国立劇場等の閉館を要請する萩生田文科相)
 PerfumeやEXILEのコンサートにどんな人が行くのか。僕はよく知らないけど、重症化リスクが高い「糖尿病持ちの80代」は多分一人もいない。ドーム会場だったら、新型コロナウイルスは判らないけど、間違いなくインフルエンザウイルス感染者はいると思われる。だが観客層は重症になる可能性は低い。この観客は新聞を読んでいるだろうか。新聞ぐらいみんな読んでると言える時代じゃないから、多分テレビニュースもきちんとフォローしてない人もいると思う。だったら、むしろコンサートの冒頭10分を貰って、ウイルス対策の基本を伝える方がいいんじゃないだろうか。問題は若い層が感染した場合、本人は軽症でも同居老人がいて感染すると重症になりうる。そういう基本を伝えた上で、今回は立ちあがって叫んだりしないことを求めればコンサートをやっても良かったのかと思う。

 それでもスポーツ観戦やコンサートは感染可能性がある程度あることは否めない。それに比べて、博物館や美術館って何だろう。「国立」だからとシンボル的に狙われたんだろうが、人気の特別展はまだしも常設展示なんか空いてるじゃないか。それとも最近は外国人客でいっぱいなのか。世の中で一番静かに個々バラバラに鑑賞する場所なんだから、感染リスクは非常に低い。千代田区立の日比谷図書館も閉館するらしいが、本や美術に静かに親しめる場所は社会に必要だ。戦争や大災害ならやむを得ないが、今回は社会の余裕を失わせる方向の措置になっている。

 政府は自分の下にあると思ってるらしい、国立の博物館、美術館、あるいは学校なんかに「自粛の要請」を行う。その前に要請すべきは財界の方じゃないのか。会社の方で独自にテレワークなどを実施しているところがある。じゃあ政府は会社の方には何も要請しないのか。そっちをやってないのに、楽しみにしている人がいるだろう文化・娯楽を先に目の敵のように槍玉に挙げる。どうも腑に落ちない。その奥にあるものは何だろう。また学校関係では卒業式に関してはどうすべきなんだろうか。それは改めて書くことにする。
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