同じ問題を書いていると飽きてくるけど、今回書くことは是非指摘しておきたいと思う。そもそも検察庁法では検察官の定年延長は認めていない。それに対して安倍首相は「国家公務員法の解釈を変更した」と述べている。その措置は法的に見て正しいのだろうか。それは誰がどこで判断するのだろうか。学者であれ、一般国民であれ、学問・研究の自由、言論・表現の自由を持っているから、自分で考えて違法だと主張することが出来る。しかし、国家的には「裁判所の確定判決」がなければ有効性を持たない。そして、裁判所に対して、違法かどうか判断してくれという裁判は出来ない。
出来ないというか、裁判を起こすこと自体は出来る。集団的自衛権を一部認める憲法解釈の変更は憲法違反かどうか。そういう裁判はたくさん起こされて、一部で注目すべき判断もあった。しかし、全部の裁判は終わってないけれど、多くの裁判は「門前払い」みたいな判決が出ている。それはそれとして、今回のケースではどのような裁判が可能だろうか。実はもう安倍首相を「偽計業務妨害」で告発した人がいる。ただそれはかなりの「無理筋」じゃないか。考えようによっては「検察の業務妨害」と言えなくもないだろうが、首相の指示を「偽計」と判断するのは難しい。(偽計業務妨害は、市役所に電話をかけ続けて嫌がらせをしたようなケースで適用されている。)
そこで「森雅子法務大臣は公務員職権濫用罪にあたる」という考えを書いておきたい。東京高検検事長の定年延長がどのように実行されたのか、僕はよく知らない。安倍首相の明確な指示があったのかどうかも不明だ。しかし、はっきりしているのは、法務省で実務的処理を行ったのは間違いない。ただ口頭で延長すると告げたわけじゃない。閣議決定を経ているので、閣議にかける書類を事前に法務省で作成したはずだ。定年延長を違法と見るなら、森法相はやるべきではない仕事を部下に命じた。
(国会で答弁する森法相)
これは刑法193条の「公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮に処する。」に該当しないだろうか。法務官僚に対し「義務のないこと」をさせたのだ。「特別公務員職権濫用罪」というのもある。「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者」が職権を濫用した場合、特に重く罰する規定である。無実の人に覚醒剤を持たせて逮捕したケースなどに適用されている。法務大臣もこれに該当するのではと思ったが、ちょっと無理か。一般的な「公務員職権濫用」になるだろう。
「公務員職権濫用罪」の場合、検察官が不起訴にした場合、付審判請求という制度を使うことが出来る。「特別公務員暴行陵虐罪」という罪があり、これは警察官や検察官の拷問などを重く罰する。疑われた側が拷問を訴えても、身内である検察官はなかなか起訴しないことも考えられる。そこで主に「公務員職権濫用罪」や「特別公務員暴行陵虐罪」など7つの罪に限って、裁判所に直接審判を求める制度がある。その他の罪の場合、不起訴に納得できない場合、「検察審査会」に申し立てることが多い。2009年以後は、2回にわたって検察審査会で「起訴相当」となると「強制起訴」する制度が出来た。
検察審査会のことは、近年の「強制起訴」事件によって、知っている人が多いだろう。一方、付審判制度の方は、最近あまり例がないので、知らない人が多いと思う。付審判請求があると、裁判所が双方の主張を聞き、審判を開始するかどうかを判断する。審判開始となったら、指定弁護士が検察官役となり普通の刑事裁判と同様の仕組みで進行する。ウィキペディアを見ると、1949年以来1万8千人の警察官や刑務官が付審判請求されたが、審判が開始されたのは23人だという。そしてその半数ぐらいは無罪になっている。だからほとんど機能しない制度になっているが、それでも検察官が起訴すべきかどうかを一手に判断する中で、特例的に裁判所に訴えられる制度があることは重要だ。
諸外国では大臣などが「職権濫用」を問われることがけっこう多い。政治的に混乱している国で、勝った側が前政権の大臣を職権濫用に問うケースもある。職権濫用を濫用してはいけないと思うが、逆に日本では政治家の政治的行為が罪に問われることが少なすぎる気がする。その事によって政治家に緊張感が薄れているのではないか。今回書いたのは、検察官の定年延長問題に関して、裁判所に法解釈の正当性判断を求める道があるかどうかを考えたわけである。裁判所が審判開始を認めることは難しいと思うが、それでもどんなリクツで判断するかを見ることが出来る。(なお、法律的には「濫用」と書くが、日常的には「乱用」と同じ。「濫」は「みだりに」の意味。)
出来ないというか、裁判を起こすこと自体は出来る。集団的自衛権を一部認める憲法解釈の変更は憲法違反かどうか。そういう裁判はたくさん起こされて、一部で注目すべき判断もあった。しかし、全部の裁判は終わってないけれど、多くの裁判は「門前払い」みたいな判決が出ている。それはそれとして、今回のケースではどのような裁判が可能だろうか。実はもう安倍首相を「偽計業務妨害」で告発した人がいる。ただそれはかなりの「無理筋」じゃないか。考えようによっては「検察の業務妨害」と言えなくもないだろうが、首相の指示を「偽計」と判断するのは難しい。(偽計業務妨害は、市役所に電話をかけ続けて嫌がらせをしたようなケースで適用されている。)
そこで「森雅子法務大臣は公務員職権濫用罪にあたる」という考えを書いておきたい。東京高検検事長の定年延長がどのように実行されたのか、僕はよく知らない。安倍首相の明確な指示があったのかどうかも不明だ。しかし、はっきりしているのは、法務省で実務的処理を行ったのは間違いない。ただ口頭で延長すると告げたわけじゃない。閣議決定を経ているので、閣議にかける書類を事前に法務省で作成したはずだ。定年延長を違法と見るなら、森法相はやるべきではない仕事を部下に命じた。
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これは刑法193条の「公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮に処する。」に該当しないだろうか。法務官僚に対し「義務のないこと」をさせたのだ。「特別公務員職権濫用罪」というのもある。「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者」が職権を濫用した場合、特に重く罰する規定である。無実の人に覚醒剤を持たせて逮捕したケースなどに適用されている。法務大臣もこれに該当するのではと思ったが、ちょっと無理か。一般的な「公務員職権濫用」になるだろう。
「公務員職権濫用罪」の場合、検察官が不起訴にした場合、付審判請求という制度を使うことが出来る。「特別公務員暴行陵虐罪」という罪があり、これは警察官や検察官の拷問などを重く罰する。疑われた側が拷問を訴えても、身内である検察官はなかなか起訴しないことも考えられる。そこで主に「公務員職権濫用罪」や「特別公務員暴行陵虐罪」など7つの罪に限って、裁判所に直接審判を求める制度がある。その他の罪の場合、不起訴に納得できない場合、「検察審査会」に申し立てることが多い。2009年以後は、2回にわたって検察審査会で「起訴相当」となると「強制起訴」する制度が出来た。
検察審査会のことは、近年の「強制起訴」事件によって、知っている人が多いだろう。一方、付審判制度の方は、最近あまり例がないので、知らない人が多いと思う。付審判請求があると、裁判所が双方の主張を聞き、審判を開始するかどうかを判断する。審判開始となったら、指定弁護士が検察官役となり普通の刑事裁判と同様の仕組みで進行する。ウィキペディアを見ると、1949年以来1万8千人の警察官や刑務官が付審判請求されたが、審判が開始されたのは23人だという。そしてその半数ぐらいは無罪になっている。だからほとんど機能しない制度になっているが、それでも検察官が起訴すべきかどうかを一手に判断する中で、特例的に裁判所に訴えられる制度があることは重要だ。
諸外国では大臣などが「職権濫用」を問われることがけっこう多い。政治的に混乱している国で、勝った側が前政権の大臣を職権濫用に問うケースもある。職権濫用を濫用してはいけないと思うが、逆に日本では政治家の政治的行為が罪に問われることが少なすぎる気がする。その事によって政治家に緊張感が薄れているのではないか。今回書いたのは、検察官の定年延長問題に関して、裁判所に法解釈の正当性判断を求める道があるかどうかを考えたわけである。裁判所が審判開始を認めることは難しいと思うが、それでもどんなリクツで判断するかを見ることが出来る。(なお、法律的には「濫用」と書くが、日常的には「乱用」と同じ。「濫」は「みだりに」の意味。)