2019年のキネマ旬報ベストテンが発表された。2年前までは新年になって10日ぐらい経つと、キネ旬ベストテンがマスコミに報道されたものだ。しかし、昨年から発表しなくなり、2月5日のベストテン発表号発売の前日になって、ようやく日本と外国のベストワン映画と個人賞受賞者だけを発表するようになった。キネ旬の経営方針なんだから、別にそれでもいいんだけど、長らくキネ旬ベストテンが一種の基準のようになってきたから残念な気はする。発売されたら構わないだろうから、ここで紹介と寸評。
別にベストテンにそんなにこだわっているわけじゃない。人によって好みも分かれるし、評価が変わるのは当然だ。しかし一応人間というものは「社会の評価」に全く無関心でもいられない。年末年始になると、映画・演劇・文学などの賞が発表になる。アメリカのアカデミー賞ノミネートも発表されて、大々的な宣伝とともに公開される季節になる。どうも少し気になっちゃうのである。僕にとって、12月上旬の「このミステリーがすごい!」発売に始まり、2月のアカデミー賞発表頃までが大体そういう季節だ。
さて早速日本映画のベストテンを紹介すると…。(自分で記事を書いた作品はリンクを貼った。)
①火口のふたり(荒井晴彦監督)
②半世界(阪本順治監督)
③宮本から君へ(真利子哲也監督)
④よこがお(深田晃司監督)
⑤蜜蜂と遠雷(石川慶監督)
⑥さよならくちびる(塩田明彦監督)
⑦ひとよ(白石和彌監督)
⑧愛がなんだ(今泉力哉監督)
⑨嵐電(鈴木卓爾監督)
⑩旅のおわり世界の始まり(黒沢清監督)
次点以下は、⑪新聞記者 ⑫岬の兄妹 ⑬長いお別れ ⑭楽園 ⑮町田くんの世界 ⑯タロウのバカ ⑰凪待ち ⑱カツベン! ⑲月夜釜合戦 ⑳多十郎殉愛記 (20位まで)
ちなみに、「閉鎖病棟」は24位、「天気の子」は25位、「翔んで埼玉」は35位、「決算!忠臣蔵」は45位、「台風家族」は51位、「ダンスウィズミー」は60位、「キングダム」は83位、「人間失格 太宰治と3人の女たち」は94位、といった具合。131本が1点以上を獲得している。
ここで他の映画賞を見てみると、毎日映画コンクールは日本映画大賞が「蜜蜂と遠雷」、優秀賞が「新聞記者」だった。作品賞候補作は他に「火口のふたり」、「ひとよ」、「宮本から君へ」である。日本アカデミー賞は3月6日発表だが、作品賞候補作は「蜜蜂と遠雷」、「新聞記者」、「キングダム」、「翔んで埼玉」、「閉鎖病棟」である。日本アカデミー賞は業界大手のための賞だとみんな判っていると思うが、このノミネートはちょっとひどいんじゃないか。
日本アカデミー賞は個人賞部門でも疑問が多い。特に主演男優賞の候補が中井貴一、菅田将暉、松坂桃李、GACKT、笑福亭鶴瓶なのである。毎日映画コンクールの主演男優賞候補は、池松壮亮、稲垣吾郎、柄本佑、香取慎吾、成田凌(受賞)で一人も共通していない。「新聞記者」を入れてるから「配慮」したつもりなのか。しかし「宮本から君へ」の池松壮亮が候補にも入らない男優賞は無意味としか思えない。元SMAPの二人も有力な主演男優賞候補だと思うが「忖度」で外れてるのか。
(池松壮亮)
キネ旬に戻って、僕はベストテン選出作品では「嵐電」だけ見逃している。見るチャンスは(株主優待で)あったのに、つい見逃したのは残念。「愛はなんだ」は見たけれど書かなかった。ちょっと前の富永昌敬監督「南瓜とマヨネーズ」も同様だが、見ていて歯がゆい。『「愛はなんだ」はなんだ』とでも言いたくなる展開に、面白いけど書きようがない感じ。ミニシアターから始まり拡大公開された面白さは評価出来るけど、正直「岸井ゆきの」と「江口のりこ」で揺れるのもなあ。岩井俊二「ラストレター」では姉が広瀬すずで、妹が森七菜なんだって!ま、それは幻想世界で現実じゃないだろうが。
成田凌は「カツベン!」で毎日映コン主演男優賞を取ったけれど、この周防正行作品は残念ながら期待したほど面白くなかった。シナリオに問題があった。それより「さよならくちびる」の成田凌は良かった。門脇麦と小松菜奈もいいけど、やはり成田凌がいてこその映画だ。小品だと思うが、僕は気に入って記事を書いた。ベストテン6位になるとまでは全然思わなかったけど。僕が10位内に入ってもいいと思うのは「楽園」と「岬の兄妹」である。
1位になった「火口のふたり」は2019年の一番とまでは思わなかったが、見た時に完成度の高さや映像美に感心した。そんな映画があったのかと思う人もいるだろうが、まあベストワンでもいいかなと思う。キネ旬では瀧内公美が主演女優賞を取った。しかし、「火口のふたり」や「半世界」はラストの展開に納得できない部分もあった。その意味では最後まで力で押し切った「宮本から君へ」は、助成金取り消しというバカげた問題もあったから応援したい気もある。「よこがお」も誰も描いていない問題を提出していた。それは「ひとよ」「楽園」も同様。「蜜蜂と遠雷」も悪くはないけど、これは恩田陸の原作の面白さが三分の一ぐらいになってるから、2019年のベストワンにはしたくない。ま、そんな感じ。
別にベストテンにそんなにこだわっているわけじゃない。人によって好みも分かれるし、評価が変わるのは当然だ。しかし一応人間というものは「社会の評価」に全く無関心でもいられない。年末年始になると、映画・演劇・文学などの賞が発表になる。アメリカのアカデミー賞ノミネートも発表されて、大々的な宣伝とともに公開される季節になる。どうも少し気になっちゃうのである。僕にとって、12月上旬の「このミステリーがすごい!」発売に始まり、2月のアカデミー賞発表頃までが大体そういう季節だ。
さて早速日本映画のベストテンを紹介すると…。(自分で記事を書いた作品はリンクを貼った。)
①火口のふたり(荒井晴彦監督)
②半世界(阪本順治監督)
③宮本から君へ(真利子哲也監督)
④よこがお(深田晃司監督)
⑤蜜蜂と遠雷(石川慶監督)
⑥さよならくちびる(塩田明彦監督)
⑦ひとよ(白石和彌監督)
⑧愛がなんだ(今泉力哉監督)
⑨嵐電(鈴木卓爾監督)
⑩旅のおわり世界の始まり(黒沢清監督)
次点以下は、⑪新聞記者 ⑫岬の兄妹 ⑬長いお別れ ⑭楽園 ⑮町田くんの世界 ⑯タロウのバカ ⑰凪待ち ⑱カツベン! ⑲月夜釜合戦 ⑳多十郎殉愛記 (20位まで)
ちなみに、「閉鎖病棟」は24位、「天気の子」は25位、「翔んで埼玉」は35位、「決算!忠臣蔵」は45位、「台風家族」は51位、「ダンスウィズミー」は60位、「キングダム」は83位、「人間失格 太宰治と3人の女たち」は94位、といった具合。131本が1点以上を獲得している。
ここで他の映画賞を見てみると、毎日映画コンクールは日本映画大賞が「蜜蜂と遠雷」、優秀賞が「新聞記者」だった。作品賞候補作は他に「火口のふたり」、「ひとよ」、「宮本から君へ」である。日本アカデミー賞は3月6日発表だが、作品賞候補作は「蜜蜂と遠雷」、「新聞記者」、「キングダム」、「翔んで埼玉」、「閉鎖病棟」である。日本アカデミー賞は業界大手のための賞だとみんな判っていると思うが、このノミネートはちょっとひどいんじゃないか。
日本アカデミー賞は個人賞部門でも疑問が多い。特に主演男優賞の候補が中井貴一、菅田将暉、松坂桃李、GACKT、笑福亭鶴瓶なのである。毎日映画コンクールの主演男優賞候補は、池松壮亮、稲垣吾郎、柄本佑、香取慎吾、成田凌(受賞)で一人も共通していない。「新聞記者」を入れてるから「配慮」したつもりなのか。しかし「宮本から君へ」の池松壮亮が候補にも入らない男優賞は無意味としか思えない。元SMAPの二人も有力な主演男優賞候補だと思うが「忖度」で外れてるのか。
(池松壮亮)
キネ旬に戻って、僕はベストテン選出作品では「嵐電」だけ見逃している。見るチャンスは(株主優待で)あったのに、つい見逃したのは残念。「愛はなんだ」は見たけれど書かなかった。ちょっと前の富永昌敬監督「南瓜とマヨネーズ」も同様だが、見ていて歯がゆい。『「愛はなんだ」はなんだ』とでも言いたくなる展開に、面白いけど書きようがない感じ。ミニシアターから始まり拡大公開された面白さは評価出来るけど、正直「岸井ゆきの」と「江口のりこ」で揺れるのもなあ。岩井俊二「ラストレター」では姉が広瀬すずで、妹が森七菜なんだって!ま、それは幻想世界で現実じゃないだろうが。
成田凌は「カツベン!」で毎日映コン主演男優賞を取ったけれど、この周防正行作品は残念ながら期待したほど面白くなかった。シナリオに問題があった。それより「さよならくちびる」の成田凌は良かった。門脇麦と小松菜奈もいいけど、やはり成田凌がいてこその映画だ。小品だと思うが、僕は気に入って記事を書いた。ベストテン6位になるとまでは全然思わなかったけど。僕が10位内に入ってもいいと思うのは「楽園」と「岬の兄妹」である。
1位になった「火口のふたり」は2019年の一番とまでは思わなかったが、見た時に完成度の高さや映像美に感心した。そんな映画があったのかと思う人もいるだろうが、まあベストワンでもいいかなと思う。キネ旬では瀧内公美が主演女優賞を取った。しかし、「火口のふたり」や「半世界」はラストの展開に納得できない部分もあった。その意味では最後まで力で押し切った「宮本から君へ」は、助成金取り消しというバカげた問題もあったから応援したい気もある。「よこがお」も誰も描いていない問題を提出していた。それは「ひとよ」「楽園」も同様。「蜜蜂と遠雷」も悪くはないけど、これは恩田陸の原作の面白さが三分の一ぐらいになってるから、2019年のベストワンにはしたくない。ま、そんな感じ。