2月の訃報特集。大きく報道され、多くの人も知っているのはまず最初に野村克也だろう。1935~2020.2.11、84歳。プロ野球選手、監督、野球評論家だが、野球界を越えたタレントでもあった。人によって、「野村とは誰か」が異なっているだろう。ID野球と呼ばれ、ヤクルト、阪神、楽天の監督を務めた。今ではまずそれを思い浮かべる人が多いと思うけど、しかし野村と言えば「南海ホークス」だよと僕は言いたい。さらにいえば「戦後初の三冠王」(1965年)である。小学生の自分はそれを覚えている。
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野球の三冠王とは、首位打者、ホームラン王、打点王を獲得することだが、1938年に巨人の中島治康が記録して以来だったのである。その後、王貞治(2回)や落合(3回)、ブーマー、バース(2回)が記録した。21世紀では2004年の松中ひとり。その後、1969年から南海の「選手兼任監督」(プレーイング・マネージャー)になった。そしてパリーグが1973年から前後期制を取ることになり、南海は前期で優勝した。後期は3位に終わったものの、プレーオフで阪急を破って総合優勝となった。後半は力を入れずプレーオフに賭けたとか、こういう制度は良くないとかずいぶん言われたものである。日本シリーズでは巨人に破れ、それが巨人9連覇の最後の年になった。
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監督としてはヤクルトで3回優勝し、すべて日本シリーズも制覇した。選手としては、3017試合出場(2位)、657ホームラン(2位、パリーグ1位)、11970打席(史上1位)などいろいろ記録もあるが、捕手としては歴代最高なのは間違いない。監督としても逸話が多いが切りが無いのでやめる。もともと高校時代は無名選手で、テスト生として入団した。そこからのし上がっていったところに経営者なども「教訓」を読むことになる。「負けに不思議の負けなし」とか確かになるほどと思う。再婚した沙知代夫人は「悪妻」と認めつつ、2017年の死別以後は弱った感じでやはり男が残されると弱いなあと思った。
作家の古井由吉(ふるい・よしきち)が2月18日に死去、82歳。亡くなってから多くの人が「影響を受けた」とか「日本文学の最高峰」とか言ってるのにちょっと驚いた。言語表現の精緻さを極めて、幻想的、神話的な世界を描いたとか言われるが、実は僕はほとんど読んでない。すごいらしいというのは判ってて、いずれ読もうかと思いつつ、難しそうで長そうとなると敬遠してしまう。
(古井由吉)
芥川賞の「杳子」(ようこ)と文庫本で一緒に入ってる「妻隠」(つまごみ)しか読んでない。「杳子」は素晴らしいが、精神疾患の物語だと思った。古井由吉ら70年代初期に登場した作家は「内向の世代」と呼ばれたが、僕はあまり読んでない。70年代は安部公房、大江健三郎、開高健、遠藤周作らが新作を続々と発表していて、やがて中上健次、村上龍、村上春樹が出てくるとそっちを読んだから僕の文学読書歴で飛ばされてしまったのである。代表作には「栖」(すみか、日本文学大賞)、「槿」(あさがお、谷崎潤一郎賞)、「仮往生伝試文」(読売文学賞)などがある。
アメリカの俳優、カーク・ダグラスが2月5日に死去、103歳。100歳を超えて存命だったことに正直言って驚いた。50年代、60年代を通してハリウッド映画の大スターだったが、アカデミー賞は受賞できなかった。「チャンピオン」「悪人と美女」「炎の人ゴッホ」で3回主演男優賞にノミネートされている。1996年にはアカデミー名誉賞を受けた。「スパルタカス」の主役兼製作総指揮を務めている。「OK牧場の決斗」ではドク・ホリデイを演じた。長男のマイケル・ダグラスは「ウォール街」でアカデミー賞を受賞しているが、もう75歳だと知ってそっちも驚いた。まあ自分も年取ったわけだ。
(マイケルと)
エジプトの元大統領、ホスニ・ムバラクが25日に死去、91歳。「アラブの春」で退陣に追い込まれたのは記憶に新しい。群衆に発砲を命じたとして一時は裁判で終身刑になりながら、再審で無罪となった。失脚後に外国に逃げなかったことで国内では評価されてるらしい。
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今回も長くなってしまっているので、以後は簡潔に。外国人から。
・ピーター・ゼルキン 1日死去、72歳。ピアニスト。
・ジョージ・スタイナー、3日死去、90歳。哲学者、文芸批評家。「悲劇の死」「青ひげの城にて」「ハイデガー」など多くの著者が翻訳されて影響を与えた。
・ネルロ・サンティ、6日死去、88歳。イタリアのオペラ指揮者。
・ミレッラ・フレーニ、9日死去、84歳。イタリアのオペラ歌手。
・ゲオルギ・シェンゲラーヤ、17日死去、82歳。ジョージアの映画監督。「ピロスマニ」の監督。
・キャサリン・ジョンソン、24日死去、101歳。NASAで活躍した黒人女性数学者。映画「ドリーム」のモデル。
・遠藤琢郎、7日死去、91歳。劇作家、横浜ボートシアター代表。
・小林庄一郎、4日死去、97歳。元関西電力会長。大飯原発、高浜原発の営業運転時の経営者である。1987年に芦原義重名誉会長の解任「クーデター」を行ったことで知られる。NHK経営委員長も務めた。
・日下部五郎、7日死去、85歳。映画プロデューサー。東映で「仁義なき戦い」「極道の妻たち」などを製作。今村昌平「楢山節考」でカンヌ映画祭パルムドールを獲得した。著書「シネマの極道」は新潮文庫にある。
・鈴木竹柏(ちくはく)、7日死去、101歳。日本画家。文化功労者。
・小林直樹、8日死去、98歳。憲法学者。東大名誉教授。かつて社会党石橋委員長の打ち出した「自衛隊の違憲・合法論」を提唱した人だった。
・八木下浩一、10日死去、78歳。全障蓮(全国障害者解放運動連絡会議)元代表幹事。障害児の就学運動を先導した。「街に生きる―ある脳性マヒ者の半生」などの著書がある。
・芳賀徹(はが・とおる)、20日死去、88歳。比較文学者。「平賀源内」「絵画の領分」「文明としての徳川日本」など。多分一冊も読んでないと思う。
・高橋紀世子(きせこ)、22日死去、78歳。元参議院議員。三木武夫元首相の長女で、98年に当選して一期務めた。
・鶴谷寿(つるたに・ひさし)、23日死去、94歳。米国研究者。「カウボーイの米国史」など。
・金田敏子、27日死去、89歳。元宝塚女優の「雅章子」だが、昨年亡くなったプロ野球投手金田正一の妻。
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野球の三冠王とは、首位打者、ホームラン王、打点王を獲得することだが、1938年に巨人の中島治康が記録して以来だったのである。その後、王貞治(2回)や落合(3回)、ブーマー、バース(2回)が記録した。21世紀では2004年の松中ひとり。その後、1969年から南海の「選手兼任監督」(プレーイング・マネージャー)になった。そしてパリーグが1973年から前後期制を取ることになり、南海は前期で優勝した。後期は3位に終わったものの、プレーオフで阪急を破って総合優勝となった。後半は力を入れずプレーオフに賭けたとか、こういう制度は良くないとかずいぶん言われたものである。日本シリーズでは巨人に破れ、それが巨人9連覇の最後の年になった。
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監督としてはヤクルトで3回優勝し、すべて日本シリーズも制覇した。選手としては、3017試合出場(2位)、657ホームラン(2位、パリーグ1位)、11970打席(史上1位)などいろいろ記録もあるが、捕手としては歴代最高なのは間違いない。監督としても逸話が多いが切りが無いのでやめる。もともと高校時代は無名選手で、テスト生として入団した。そこからのし上がっていったところに経営者なども「教訓」を読むことになる。「負けに不思議の負けなし」とか確かになるほどと思う。再婚した沙知代夫人は「悪妻」と認めつつ、2017年の死別以後は弱った感じでやはり男が残されると弱いなあと思った。
作家の古井由吉(ふるい・よしきち)が2月18日に死去、82歳。亡くなってから多くの人が「影響を受けた」とか「日本文学の最高峰」とか言ってるのにちょっと驚いた。言語表現の精緻さを極めて、幻想的、神話的な世界を描いたとか言われるが、実は僕はほとんど読んでない。すごいらしいというのは判ってて、いずれ読もうかと思いつつ、難しそうで長そうとなると敬遠してしまう。
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芥川賞の「杳子」(ようこ)と文庫本で一緒に入ってる「妻隠」(つまごみ)しか読んでない。「杳子」は素晴らしいが、精神疾患の物語だと思った。古井由吉ら70年代初期に登場した作家は「内向の世代」と呼ばれたが、僕はあまり読んでない。70年代は安部公房、大江健三郎、開高健、遠藤周作らが新作を続々と発表していて、やがて中上健次、村上龍、村上春樹が出てくるとそっちを読んだから僕の文学読書歴で飛ばされてしまったのである。代表作には「栖」(すみか、日本文学大賞)、「槿」(あさがお、谷崎潤一郎賞)、「仮往生伝試文」(読売文学賞)などがある。
アメリカの俳優、カーク・ダグラスが2月5日に死去、103歳。100歳を超えて存命だったことに正直言って驚いた。50年代、60年代を通してハリウッド映画の大スターだったが、アカデミー賞は受賞できなかった。「チャンピオン」「悪人と美女」「炎の人ゴッホ」で3回主演男優賞にノミネートされている。1996年にはアカデミー名誉賞を受けた。「スパルタカス」の主役兼製作総指揮を務めている。「OK牧場の決斗」ではドク・ホリデイを演じた。長男のマイケル・ダグラスは「ウォール街」でアカデミー賞を受賞しているが、もう75歳だと知ってそっちも驚いた。まあ自分も年取ったわけだ。
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エジプトの元大統領、ホスニ・ムバラクが25日に死去、91歳。「アラブの春」で退陣に追い込まれたのは記憶に新しい。群衆に発砲を命じたとして一時は裁判で終身刑になりながら、再審で無罪となった。失脚後に外国に逃げなかったことで国内では評価されてるらしい。
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今回も長くなってしまっているので、以後は簡潔に。外国人から。
・ピーター・ゼルキン 1日死去、72歳。ピアニスト。
・ジョージ・スタイナー、3日死去、90歳。哲学者、文芸批評家。「悲劇の死」「青ひげの城にて」「ハイデガー」など多くの著者が翻訳されて影響を与えた。
・ネルロ・サンティ、6日死去、88歳。イタリアのオペラ指揮者。
・ミレッラ・フレーニ、9日死去、84歳。イタリアのオペラ歌手。
・ゲオルギ・シェンゲラーヤ、17日死去、82歳。ジョージアの映画監督。「ピロスマニ」の監督。
・キャサリン・ジョンソン、24日死去、101歳。NASAで活躍した黒人女性数学者。映画「ドリーム」のモデル。
・遠藤琢郎、7日死去、91歳。劇作家、横浜ボートシアター代表。
・小林庄一郎、4日死去、97歳。元関西電力会長。大飯原発、高浜原発の営業運転時の経営者である。1987年に芦原義重名誉会長の解任「クーデター」を行ったことで知られる。NHK経営委員長も務めた。
・日下部五郎、7日死去、85歳。映画プロデューサー。東映で「仁義なき戦い」「極道の妻たち」などを製作。今村昌平「楢山節考」でカンヌ映画祭パルムドールを獲得した。著書「シネマの極道」は新潮文庫にある。
・鈴木竹柏(ちくはく)、7日死去、101歳。日本画家。文化功労者。
・小林直樹、8日死去、98歳。憲法学者。東大名誉教授。かつて社会党石橋委員長の打ち出した「自衛隊の違憲・合法論」を提唱した人だった。
・八木下浩一、10日死去、78歳。全障蓮(全国障害者解放運動連絡会議)元代表幹事。障害児の就学運動を先導した。「街に生きる―ある脳性マヒ者の半生」などの著書がある。
・芳賀徹(はが・とおる)、20日死去、88歳。比較文学者。「平賀源内」「絵画の領分」「文明としての徳川日本」など。多分一冊も読んでないと思う。
・高橋紀世子(きせこ)、22日死去、78歳。元参議院議員。三木武夫元首相の長女で、98年に当選して一期務めた。
・鶴谷寿(つるたに・ひさし)、23日死去、94歳。米国研究者。「カウボーイの米国史」など。
・金田敏子、27日死去、89歳。元宝塚女優の「雅章子」だが、昨年亡くなったプロ野球投手金田正一の妻。