一日時間を取って、浅草演芸ホール3月上席に行った。2月下席が神田伯山襲名披露だから、続けて見に行ったことになる。その時は昼夜入れ替えだったが、ここは普段は入れ替えなしである。12時前から21時頃までいられる。しかし、今まではさすがに疲れるから、そんなことはしたことがない。今回は12時じゃあないけど、13時頃に行って最後までいることにした。昼にも夜にも聞きたい人がいるからだが、それ以上に今や寄席が「ライブ芸能最後の砦」になりつつあることが大きい。多くの劇場が閉まっている中でやってるから、こっちも最後まで付き合うかという気になったのである。
客席は最初はいい具合にパラパラで、「感染対策のために離れて座って頂いて」と笑わせていた。夜の最後になると、そこそこ入っていたけど満員にはほど遠い。寄席は超人気者が出ない限り、大体平日は満員にはならないけれど、やはり普段よりも空いていたと思う。「こんな時に来て頂き」とマクラで皆が触れる。熱演が続いて、気持ちがいい。落語や演芸は採点するつもりで見てないので、ノンキに聞いて(時にはウトウトして)脳内をクリーニング出来たかな。
一番の満足は夜のトリを取った古今亭文菊師匠。前に何回か聞いて面白かったから期待して行った。この人は風貌に気品があって、頭も剃髪だから高僧みたいなイメージがある。ちょっと前に出た林家正蔵も下がるときに「お目当て」をお楽しみにと言いながら手を合わせて去って行った。市川海老蔵の幼なじみで、学習院大学卒業。と言っても別に上流階級でも何でもないようだけど、見た目が高貴な出身に見せておいて飲んべえを熱演するから、それだけでも可笑しみがにじみ出る。
(古今亭文菊)
ネタは「猫の災難」というもので、僕は初めてだったが実におかしい。友だちが持ってきた酒をいない間に飲んじゃう様子を熱演した。落語は話芸という以上に顔芸だなあと思った。まだ知らない人多いと思うけれど、1979年生まれで40歳になったばかり。志ん生の弟子古今亭圓菊の最後の弟子だが、2012年の真打襲名には師匠は体調不良で出られず、市川團十郎が付き添ったとウィキペディアに出ていた。兄弟子の古今亭菊之丞も人気があって、要注目の一門だ。
夜の部では大御所、五街道雲助の「強情灸」もさすがの絶品で、雲助師匠は久しぶりなんだけど今見ておくべき人だなあ。その弟子の隅田川馬石も最近注目の若手だが、今までは掛け違って初めて見た。生き生きして面白かった。中入り後最初が林家たけ平で、あまり知らないと思うけど僕の地元出身で、地元で落語会を開いてきた。数年前に真打になったが、どうも今ひとつではあるものの今回の新作「宿題」は面白く聞いた。なんと鶴亀算にお父さんが悩む話である。
(五街道雲助)
昼の部はトリが林家ひろ木で、2017年に真打に昇進した林家木久扇門下の40歳。チラシに落語×津軽三味線と書いてあって、一席演じた後で津軽三味線を弾くのが趣向。正直言って本業はまだまだだと思ったが、三味線付きが面白い。この日は師匠の木久扇も出ていて、立川談志の選挙を手伝った思い出を語った。鈴々舎馬風も林家三平に連れられて銀座で飲んだ思い出話。この辺りの大御所になると落語というより昔話だけなんだが、それも貴重か。落語芸術協会の桂米丸や落語協会の三遊亭金馬、川柳川柳なんかも最近はとんと見なくなってしまった。元気なうちに見ておかないと。
(林家ひろ木)
三遊亭圓歌や春風亭一朝なども出ていたが僕には今ひとつだった。圓歌は受けていたけど、どうも噺の内容がなあ。それより久しぶりに聞いた林家三平がけっこう面白いじゃないか。笑点の大喜利ですっかり「受けない」というイメージになってしまった。本人もマクラで自虐ネタにしている。確かに昔は全然面白くなかったけど、今回は声も大きいし口跡もいいから楽しめた。笑点はなんでも「無観客収録」をしたという話で、目の前に客がいるだけでも頑張れるということだろう。紙切りも昼夜で見たし、マジックや曲芸も楽しいがパントマイムのカンジヤマ・マイムが面白かった。
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寄席は長くて腰が痛くなるときもあるが、昔より好きになったと思う。昔は落語でもホール落語の方が良かった。もちろん演劇や映画の方がずっと楽しかった。寄席だとお目当て以外の「色物」やあまり面白くない若手が時間のムダに思えた。でも今ではそんな時間が貴重に思えてきた。別に寝たっていいんだし。人生の残り時間はどんどん少なくなっていくんだけど、だからこそライブの芸を見て気持ちをリセットすることが必要に思えるようになった。ところで浅草はガラガラかと思ったら、まあ昨日はそこそこ外国人も含めて観光客がいたようだった。前よりも全然空いてるけれど。
客席は最初はいい具合にパラパラで、「感染対策のために離れて座って頂いて」と笑わせていた。夜の最後になると、そこそこ入っていたけど満員にはほど遠い。寄席は超人気者が出ない限り、大体平日は満員にはならないけれど、やはり普段よりも空いていたと思う。「こんな時に来て頂き」とマクラで皆が触れる。熱演が続いて、気持ちがいい。落語や演芸は採点するつもりで見てないので、ノンキに聞いて(時にはウトウトして)脳内をクリーニング出来たかな。
一番の満足は夜のトリを取った古今亭文菊師匠。前に何回か聞いて面白かったから期待して行った。この人は風貌に気品があって、頭も剃髪だから高僧みたいなイメージがある。ちょっと前に出た林家正蔵も下がるときに「お目当て」をお楽しみにと言いながら手を合わせて去って行った。市川海老蔵の幼なじみで、学習院大学卒業。と言っても別に上流階級でも何でもないようだけど、見た目が高貴な出身に見せておいて飲んべえを熱演するから、それだけでも可笑しみがにじみ出る。
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ネタは「猫の災難」というもので、僕は初めてだったが実におかしい。友だちが持ってきた酒をいない間に飲んじゃう様子を熱演した。落語は話芸という以上に顔芸だなあと思った。まだ知らない人多いと思うけれど、1979年生まれで40歳になったばかり。志ん生の弟子古今亭圓菊の最後の弟子だが、2012年の真打襲名には師匠は体調不良で出られず、市川團十郎が付き添ったとウィキペディアに出ていた。兄弟子の古今亭菊之丞も人気があって、要注目の一門だ。
夜の部では大御所、五街道雲助の「強情灸」もさすがの絶品で、雲助師匠は久しぶりなんだけど今見ておくべき人だなあ。その弟子の隅田川馬石も最近注目の若手だが、今までは掛け違って初めて見た。生き生きして面白かった。中入り後最初が林家たけ平で、あまり知らないと思うけど僕の地元出身で、地元で落語会を開いてきた。数年前に真打になったが、どうも今ひとつではあるものの今回の新作「宿題」は面白く聞いた。なんと鶴亀算にお父さんが悩む話である。
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昼の部はトリが林家ひろ木で、2017年に真打に昇進した林家木久扇門下の40歳。チラシに落語×津軽三味線と書いてあって、一席演じた後で津軽三味線を弾くのが趣向。正直言って本業はまだまだだと思ったが、三味線付きが面白い。この日は師匠の木久扇も出ていて、立川談志の選挙を手伝った思い出を語った。鈴々舎馬風も林家三平に連れられて銀座で飲んだ思い出話。この辺りの大御所になると落語というより昔話だけなんだが、それも貴重か。落語芸術協会の桂米丸や落語協会の三遊亭金馬、川柳川柳なんかも最近はとんと見なくなってしまった。元気なうちに見ておかないと。
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三遊亭圓歌や春風亭一朝なども出ていたが僕には今ひとつだった。圓歌は受けていたけど、どうも噺の内容がなあ。それより久しぶりに聞いた林家三平がけっこう面白いじゃないか。笑点の大喜利ですっかり「受けない」というイメージになってしまった。本人もマクラで自虐ネタにしている。確かに昔は全然面白くなかったけど、今回は声も大きいし口跡もいいから楽しめた。笑点はなんでも「無観客収録」をしたという話で、目の前に客がいるだけでも頑張れるということだろう。紙切りも昼夜で見たし、マジックや曲芸も楽しいがパントマイムのカンジヤマ・マイムが面白かった。
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寄席は長くて腰が痛くなるときもあるが、昔より好きになったと思う。昔は落語でもホール落語の方が良かった。もちろん演劇や映画の方がずっと楽しかった。寄席だとお目当て以外の「色物」やあまり面白くない若手が時間のムダに思えた。でも今ではそんな時間が貴重に思えてきた。別に寝たっていいんだし。人生の残り時間はどんどん少なくなっていくんだけど、だからこそライブの芸を見て気持ちをリセットすることが必要に思えるようになった。ところで浅草はガラガラかと思ったら、まあ昨日はそこそこ外国人も含めて観光客がいたようだった。前よりも全然空いてるけれど。
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