尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

危険な日米共同声明ー軍事的一体化を進める日米関係

2021年04月18日 22時05分07秒 | 政治
 菅義偉首相が訪米し、バイデン大統領と首脳会談を行い、2021年4月16日付で日米共同声明が発表された。正式には「外務省仮訳」で「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」である。英文では「U.S.-Japan Joint Leaders’ Statement: “U.S.-JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”」である。共同声明は国会での批准等を必要としない。その意味では法的性格を持たないはずだが、事実上国家を拘束する「約束」になる。

 この声明の全文はかなり長い。マスコミに出ているのは概要であることが多い。さらにネットで新聞社のサイトを見ると、会員登録しないと読めない社が多い。新聞に載っていても、面倒だから飛ばしてしまう人が多いだろう。一般的には「台湾に触れたこと」「菅首相が初めてバイデン大統領と直接顔を合わせた外国首脳だったこと」などに報道が集中している。それだけでは首相の「手柄」イメージが強く印象づけられるかもしれない。しかし、ちょっと流し読みしてみるだけでも、「この声明は危険なのではないか」という思いを持つことになる。

日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した。」
米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎない支持を改めて表明した。」
 ここでは外務省仮訳を使うけれど、以上の文章は前文に続いて一番最初の「自由で開かれたインド太平洋を形作る日米同盟」の最初の方に出てくる。これは大部分の日本国民が納得することなのか。日本は「自国の防衛」ならまだしも、「地域の安全保障」のために軍事力を強化するとアメリカに約束している。またアメリカの核兵器に対して「揺るぎない支持」をしている。

 またいつまでも辺野古移転に固執して「日米両国は、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である、辺野古における普天間飛行場代替施設の建設、馬毛島における空母艦載機着陸訓練施設、米海兵隊部隊の沖縄からグアムへの移転を含む、在日米軍再編に関する現行の取決めを実施することに引き続きコミットしている。」と改めて声明した。沖縄の声を聞く気が全くないのである。

 ところで最近になって、「日米豪印戦略対話」(クアッド)という枠組が語られることが多くなった。それに伴って、「自由で開かれたインド太平洋」という言葉がよく使われている。いつから日本は「インド洋」にも関与するようになったのか。まあ、原油・天然ガスの大部分は西太平洋だけでなく、インド洋も通ってくる。アフリカ東北部にあるジブチには自衛隊の恒久的拠点を築いているから、もう現実にインド洋に関与している。しかし、インド洋は日本が関与するべき地域なのか、僕は疑問だ。菅首相はインド訪問も検討しているというが、インドの核兵器に何も言わない、言えないのなら行く意味が無い

 トランプ政権の時は、アメリカは自国どころか、再選目的のためとも思える首尾一貫しない外交姿勢が見られた。それは困ることで、バイデン政権の「同盟重視」は理解しやすいが、それは同時に「日本にさらなる防衛負担を求める」ことである。安保法制の実動によって、日本は米軍との共同行動が多くなっているという。このままでは東アジアでの軍事的衝突を引き起こしかねない「日米一体化」は危険だと考える。軍事に頼る対中国政策は、逆に中国の軍事力強化、人権無視をもたらしかねない。
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