映画の「ゲド戦記」、ご覧になりましたか。
わたしは、映画が始まってしまわないうちにと、原作を全巻読み終えたのですが、結局映画館には行ってません‥。いつの日か、テレビで見られればそれでいいかなと思って。
同じ作者、ル=グウィンの最新作、ご存知でしょか。
2度続けて、読んでしまいました。
『ギフト』
西のはての年代記Ⅰ
ル=グウィン 作
THE WESTERN SHORE 西のはて の物語3部作のⅠがこの『ギフト』です。
「西のはて」は、高地と低地に分かれていて、高地に暮らす人々は、浅黒い肌を持ち、男は膝までのズボンにすねは剥き出しのまま。「ギフト」と呼ばれる不思議な力を授かっている「ブランター」の元で、それぞれの集落を成して暮らしています。
一方、低地の人たちは町を形成し、「ギフト」を持っている人は誰も居ないけれど、そこには市場があり、本があります。そう、高地の人たちは文字を読み書きすることができず、高地には、本というものが存在していないのです。
主人公のオレックの父はブランター、母は低地から来た人です。
オレックの一族が持つギフトは「もどし」と呼ばれ、恋人のグライの一族のギフトは「呼びかけ」。父のギフトは息子へ受け継がれ、母のギフトは娘へと受け継がれます。
父が持つ強いギフトを、実は自分は受け継いでいないのではないかと思うオレック。オレック以上に、息子の力を心配に思った父が、息子に対して講じた手段はなんだったのか。
文字のない世界、本のない世界。
想像しがたい、そんな毎日の中で、オレックの母は、オレックとグライのために覚えている限りのお話を語って聞かせ、布を束にして端を綴じ、本を作って残してくれました。母の手作りの本は、後のオレックに、生きていくための「ほんとうの力」を与えます。
ファンタジーの世界を楽しむというよりは、オレックの心の動きが繊細に描かれていたことで、私はこの物語に夢中になったのかなあと思っています。
ギフト‥特別な人しか持っていないのか、望んだ人にしか手に入らないのか。それとも、すべての人が等しく賜っているものなのでしょうか‥。
にしのはての年代記Ⅱのタイトルは「Voices 」、Ⅲは「Powers」とすでに決っているそうです。邦訳される日が待ち遠しいです。