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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

大竹伸朗 全景@東京都現代美術館

2006-11-08 14:54:56 | 好きなもの・美術館や展覧会

 絵本世界で、「大竹伸朗」といえば、↓の2冊の本を思い浮かべることでしょう。

  ジャリおじさん(福音館書店)
 『ジャリおじさん』
  大竹伸朗 作

 んぐまーま(クレヨンハウス)
  『んぐまーま』
  谷川俊太郎 文 大竹伸朗 絵


 私も、「おおたけしんろう=ジャリおじさん」+なんでもかんでもコラージュする人 ぐらいのイメージでいました。
 『ジャリおじさん』を、前に図書館で借りてきたことがありましたが、それは何かの雑誌で、「私のいちおし絵本」のような特集があり、そこで『ジャリおじさん』を推している人が何人も居たので、そんなに凄い絵本ならば読んでみたい、と思ったからでした。
 『んぐまーま』は、画期的な赤ちゃん絵本!と認識しているのですが、読んであげる人が近くにいないので、ぱらぱらっと見ただけでした。


 11月5日日曜日 晴れ  東京都現代美術館にて

 抱いていた、私のちっぽけなイメージなど、秋風にそよぐ木の葉よりあっさり、どこかへ飛んでいきました。

 大竹伸朗 全景

 よくぞ、こう名づけたなあと思います。 ほんとに全部なんです。ぜんぶまるごとのオオタケさんが「そこ」に居て、まるごとのオオタケさんを、見る事ができるのです。

 小学校低学年の頃のマンガから、今回の描き下ろし作品まで、2000点余り‥と記してありましたが、その3倍くらいあったように感じています。
 展覧会の案内図からして、〈A3のコピー用紙〉×2そのままの大きさなんです。みんな折るに折れず、丸めたり、ポスターのように目の前にかざしたりしながら、見ていましたよ。

 「エスカレーターで3階へ行ってください」と、受付で案内され‥最新作のコラージュをそこでまず目にします。圧倒されながらも、気持ちは右側にずらっーと並べられているガラスケースに移っていき‥

 なんだろう、なにが入ってるの? 

 そこには、どのページも、塗られたり、貼られたりしたことによって膨れ上がった、果たしてノートと呼んでいいのだろうかというスクラップブックが、何冊あったことでしょう。
 20代の旅の記憶から始まったにちがいないその「ノート」は、作品なのか、ただの習作なのか、日記なのか。そんなことを思いながら、その行為に費やした時間を生み出したエネルギーに、感心するほかありませんでした。

 しかし、そのガラスケースは、はじまりのはじまりでしかなかったことを、後から月を見上げながら知ることとなるのですが‥。

 
 見終わった今となってみれば、オオタケシンロウを見るということが、何に似ていたかよくわかります。

 「大食い・大盛り」選手権 です。

 なかなかおいしいじゃない、これなら結構いけるかも。
 ん?ちょっと苦しくなってきた、どうしよう‥
 でもここで、辛味を加えれば、また食べられる。
 あ~もうちょっと。
 ここまできたんだから、最後までいかれるよ。
 好きなもの後から食べようと思ってとっておいたんだった‥
 最後は気力でいっきにかきこめ~。
 
 ふー。

 ごちそうさまでした ‥こんな感じ‥かなあ。


 本題にもどって。

 オオタケさんは、すごく絵がうまいのです。

 一流のアーティストに対してそれはないでしょ、と言われると思いますが、子どもの頃からほんとうに絵がうまいのです。そして、作文もかなり巧かったのでは?と思いました。物事を捉える目とそれを表す力を、10代の初めから持っていたのだなあと思いました。

 オオタケさんは、うまいゆえに描くのも、とても早いらしいのです。

 旅先でのちょっとしたスケッチさえ、みとれてしまうような色合いで、さささっと仕上げているし、とにかく作品の数がハンパじゃない!のですよ。
 最後の最後の方に、やっと「ジャリおじさん」の部屋にたどりつくのですが(さっきの比喩だと、「後から食べよう思ってとっておいた好きなもの」)、「ジャリおじさん」の原画が(原画がですよ!!)、どこに架かっているのかわからないくらい、ジャリおじさんおよび、それにまつわるイメージ画で埋め尽くされているのです。
 宙に浮かぶジャリおじさんのオブジェだってあるんです。(ちょっとしたギャラリーなら、このジャリおじさんの部屋だけで、展覧会を設けることができると思います。見応え十分なんですよ、ここだけでも)
 しかも、それプラス、部屋への入口には、奥さんやお子さんを描いたスケッチが何点もあって。(あたりまえだけど)その何気ないスケッチだって、もちろんうまいのです。

 きっと、大竹伸朗さんという人は、頭の回転のいい人で、切り替えがパパッとできちゃう人だと思うのです。

 だから、同時進行的にいくつもの作品を手がけたり、何かに取り組んでいるときも、目にした風景を手元に残して置くことができたりするのじゃないでしょうか。
 「いったい何人オオタケシンロウがいるんだろう?」一緒に行った、夫の友人のOさんがこう言っていました。
 


 全部の作品を、仮に、見ることができたとしても、その人のことを、すべてわかるはずはありません。でも、何も知らずに『ジャリおじさん』だけを手にした時よりも、『ジャリおじさん』の「むこう側」や、「下」や、「内側」にある様々なものを知った上での『ジャリおじさん』は、やはり私にとっては意義深いかなあと、思っています。

 エッチングの小さい作品や、ビルをモチーフにした絵も、心に残りました。

 これからもし見に行こうと思われる方は、元気なときのお出掛けをお薦めします。エネルギーのぶつかり合いですから、見る側にも当然元気が要求されます。





コメント (4)
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