prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

川端龍子展

2017年08月22日 | アート
日本画というと間や空白を生かしたものが多い印象が強いけれど、これは大判でもびっちり描きこんであまり余白を残さないものが多い。
感覚的に派手で、ほとんどイラストのような印象を受けるものすらある。

スペクタキュラーなちょっとハッタリ臭さすら混ざっている。
驚いたのは単発の軍用飛行機を描いたほとんど実物大かと思う巨大な画で、大きいだけでなく機体が半透明になっていて宙に浮かんだ感じを出していることで、よく考えたものだと思う。

ススキを金で描くというのは他でもあるが、金だけでなく銀、さらには白金まで駆使しているとなると珍しいと思う。確かにやや白っぽいのです。



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ジャコメッティ展

2017年07月17日 | アート
初期の作品がキュービズムを絵画ではなく彫刻でやっているのが目を引く。

弟のディエゴの肖像や彫刻がいくつも見られるが、兄同様彫刻家だというのは知らなかった。兄のアルベルトが人間型の彫刻が大半なのに対して弟のは犬猫のが多いといい、兄の珍しい犬猫の彫刻というのも展示されていた。まったく人間型と同じ調子。

ぎりぎりまで削ぎ落とした、周囲に何か「気」の流れが張り詰めているような、あるいは重力がふっと消滅しかけてバランスをとっているような緊迫感。

女性型の像が多いのだが、えてして予想されるような豊満さや美しさは削ぎ落とされているのにも関わらず女性であることがはっきりわかる。










ジャコメッティ展 公式ホームページ





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「東京墓情 荒木経惟×ギメ東洋美術館」シャネル・ネクサス・ホール

2017年06月26日 | アート
主に人形、それも人間型のと一緒に爬虫類、あるいは恐竜(怪獣のゲスラが混ざっている)の人形と花が混然とした作品が多くを占め、生きている人間のポートレイトやヌードといったいつもの(というか一般的なイメージとしての)荒木のモチーフより多い。

「墓」情というタイトルに相応しく死の匂いが強いが、墓石屋そのものを撮った写真があって、あんまりもろなのでちょっと笑ってしまう。死の匂いといっても間に本物の昔の卵白紙による写真がいくつもあってすでにとっくに死んでいる人たちの生きている姿を見せており、写真そのものがもともとそういう性格をもっているのを示唆しているようで、猥雑で湿っているが陰々滅々としているわけではない。

横綱白鵬をはじめ宮城野部屋の関取たちが稽古後の泥まみれのままずらっと横並びに並んだ写真が異彩を放つ。

「東京墓情 荒木経惟×ギメ東洋美術館」シャネル・ネクサス・ホール




ブリューゲル「バベルの塔」展

2017年06月19日 | アート












http://www.tobikan.jp/











小さい作品が多い(もともと教会ではなく、個人宅に置くことが多いかららしい)ので、混雑していて後ろから離れて見ないといけないとなるとかなり見ずらい。美術館側もその点は考慮済で拡大した画像を上や横に置き、「バベルの塔」に至っては壁全体にほとんど本物の塔があればこれくらいの大きさになるのではないかという数分の一のスケールで展示していたのがありがたいところ。

また細かいところまで描き込んであるのです。異形でしかもなんとなくおかしい姿はちょっと水木しげるを思わせたりした。


ブリューゲル「バベルの塔」展 公式ホームページ



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特別展 雪村-奇想の誕生

2017年05月22日 | アート
線の感じが必ずしも描写的ではなく、筆さばきが何かをなぞったりするよりそれ自体がひとつの半ば独立した表現になっている感。

布袋さまが二人の童子と一緒にいる画が魅力的。おぶったり抱えたりといったはっきり庇護したりされたりといった関係でなく、童子が猫みたいに勝手にしょい袋のそばに潜り込んだりしがみついて遊んでいるみたい。

奇想には違いないけれど、割と描かれたキャラクターそのものから自然に奔放な行動に導かれているように見える。

特別展 雪村-奇想の誕生



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ロバート メイプルソープ写真展 ピーター マリーノ コレクション

2017年04月11日 | アート
顔を外した男の裸のボディのアップ。男性器(だいたい包茎)がもろに写っているのが多いけれど、ポルノグラフィックな感じはまず受けない。

マッチョなボディに魅力を感じているのかというとそういうのとも違う。もう少し無名性というか人間だけに限らず、花、刃物が刺さった果物などの、もう少し範囲を広げた性的オブジェ、それもけっこう観念がかっているのと

銀座シャネルの四階という超オシャレな場所で行われているのとの一種のコントラストがおもしろい。

ロバート メイプルソープ写真展 ピーター マリーノ コレクション



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ミュシャ展

2017年04月09日 | アート






まず居並ぶ巨大な作品のスケールに圧倒される。ポスターの印象が強いので、ここまで巨大だと思わなかった。巨大でしかも細かいところが描き込まれて全体とすると不思議と平面的。
平面的な人物が貼りつけられたように上の方に描かれて浮いているのがすごくモダン。

ミュシャ展

草間彌生展 わが永遠の魂

2017年04月05日 | アート


























入ってすぐの体育館ほどもある空間をぐるっとめぐって作品で埋め尽くされているのが壮観。ここは撮影OKなので撮りまくったが、フレームを収めるのは本質的にムリでとにかく体験してみるしかない。

ちなみに私はトライポフォビア(ぷつぷつが集まった状態が怖い)なので、こういう水玉がいっぱいというのは気持ち悪くてもおかしくないのだが、不思議と平気。

ハプニングをやっていた頃の映像とたくさん出している本とが並べて展示。「わけのわからなさ」に対する解説というよりアジテーションを重ねていくような行為に近かったのでは。

一番でかいカボチャは屋外に展示されていて入場しなくても接近できる。子供が寄ってきていて、禁止されていなかったら中に入って遊びたさそう。

草間彌生 わが永遠の魂

ティツィアーノとヴェネツィア派展

2017年03月08日 | アート
まずヴェネツィア派の聖母子像がかなりの数並び、そこの赤ん坊がキリストだから常人と違って半分立っているようだったり、一応成長してから会うはずの洗礼をほどこしたヨハネとかマグダラのマリアといった人物がもう傍にいたりする。かといって赤ちゃんらしさをまったく排しているわけでないのが微妙なところ。

目玉の「フローラ」はなるほど肌がきれいで匂い立つようで、一般的な人気が出たわけだと思わせる。技術的にレベルは高いけれど、そっちを極めるのとは微妙に違う。

当時のヴェネツィアの繁栄ぶりを物語る解説も街の俯瞰図、貿易の発展などかなり充実。


ゴッホとゴーギャン展

2016年12月17日 | アート
順路に沿っていくと、まずゴッホの初期(といっても、20代後半)の作品から始まり、それから同時期の画家の作品が比較するように並び、その中からゴーギャンが浮上して特別な位置につき、共同生活と互いに与えた影響がわかるように並べられ、それからゴッホが亡くなりゴーギャンのタヒチの生活わ描いた作品群に移行するといった具合に、構成がきっちりしていてわか
りやすい。
ゴッホとゴーギャンそれぞれが描いた椅子やひまわりなど、まあ対照的。

壁紙がそれぞれの時期で色が統一され、ゴッホの弟のテオのをはじめとした書簡の引用が直接壁紙にプリントされて読めるようになっている。
子供向けに目線を下げて見るようになっているこども新聞風の解説があったりする。

ゴッホとゴーギャン展



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「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造―」 山種美術館

2016年11月25日 | アート
御舟の二十代の時のかなりリアルな虫や木の葉などの写実と抽象的な画とが平行して展示されているのを見たあとで、小さな別室に置かれた「炎舞」がぽつっと置かれていると、なるほど両者の描写法がこの一枚に流れ込んでいるなと思わせる。
しかもこれは三十一歳の作品で、亡くなったのが四十歳というから頂点も終わりも早すぎということになる。

しかし美術展もあまり大がかりだと見るのが大変で、これくらいの規模のがじっくり見られていいなと思う。負け惜しみじみるけれど、若冲展は4時間とか5時間待ちというので結局見逃したが、若冲そのものは実はけっこう他で見られてはいるし。

「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造―」 山種美術館



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ダリ展

2016年11月24日 | アート
ダリの15歳くらいからの画を順を追って見ることができるのが収穫で、初めはあからさまに印象派風、それからキュービズム風と当時の先端を追っていたこと、ポスターや衣装デザインなど商業美術も早くから手掛けているのもわかる。

10代の頃の自画像があって、20代の後半に差しかかった頃にまた肖像画があるからまた自画像かと思うとルイス・ブニュエルのでした。この頃の二人は結構顔が似てる。
ダリとブニュエルの二人が共作した「アンダルシアの犬」の上映に黒山の人だかり。かつて封切りでは上映禁止になり、カソリックの司祭がスクリーンを聖水で清めてまわった映画がこういう扱いになろうとは。

舞台デザインと並んで舞台の実写もモニターに映され、ダリの多彩な仕事ぶりをうかがえる。
ヒッチコックの「白い恐怖」の夢の場面の美術案のデザイン(ヒッチコックに言わせるとイングリッド・バーグマンの顔が割れて無数のアリが這い出して来るといったとても映画にできないようなアイデアだらけだったらしい)なんてのがあったら良かった。

ダリ展 国立新美術館



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「キョンシー」

2016年10月12日 | アート
かつての「霊幻導士」に代表されるホラー・カンフー・コメディとはうって変わって笑いの要素ゼロでおどろおどろしさ全開の作り。
カンフー調の肉体アクションも出てくるが、それ以上にCGが活用されているのが今風。

舞台になる巨大集合住宅の古ぼけた質感と迷路のような作りがかなりの見もの。
双子の女の悪霊というのが「シャイニング」と伽椰子を混ぜたみたいな造形で「アンダーワールド」の狼男族のように壁や天井を走り回ったりと、いろいろ入ってます。

人物配置が割とぐずぐずで誰をメインにして見ていいのかシーンによってバラけているのが困る。
旧作にあった鶏の血とかもち米といったキョンシーに効くアイテムが曖昧で、どうすれば防げるのか倒せるのかはっきりしないもので、クライマックスがにぎにぎしい割に盛り上がらない。
(☆☆☆)






「怒り」

2016年10月05日 | アート
東京、千葉、沖縄でそれぞれ展開するストーリーに登場する正体不明の男三人が、八王子で起きた殺人事件の犯人かもしれないと思わせてながら捩り合いながら展開する、という趣向で、三つの直接関係はない話がカットバックしながら進行するというのは何やら遥か昔1916年(100年前!)の「イントレランス」みたい。
不寛容に対して怒り、というやや抽象的だが生々しいモチーフ。

真犯人がわかって後のが関係なくなるか、というとそうではないので、それぞれ定住できない事情を抱えた人間と、それに対する生活者の側がともに抱えた鬱屈、やり場のなさから来る怒りという点で結びついている。ただ、着地とするとやや足元がふらつく感じはある。

カットバックが、それぞれ別々の場所と人間たちを交互に見せるという以上の、シャッフルされたイメージを新しく生み出している

手配写真がそれぞれの容疑者(松山ケンイチ、森山未来、綾野剛)のどれにも似ているように出来ているのは上手い。

ゲイが母親に対して子孫を残せないという後ろめたさを感じるというのは、吉田修一の初期作品「最後の息子」にもあったモチーフ。かなり一般的な悩みなのかもしれない。
沖縄の少女暴行シーンにしても、肉体に何ものかが刻み付けられる生なましさがある。
(☆☆☆★★)

怒り 公式ホームページ

怒り|映画情報のぴあ映画生活



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映画『怒り』 - シネマトゥデイ

伊藤晴雨 幽霊画展

2016年08月22日 | アート
江戸東京美術館で「大妖怪展」が大人気(いや、すごい混雑でした)な傍らで、伊藤晴雨の幽霊画展というのも別口でやっていた。

晴雨というとまず責め絵というのが相場だし、宮下順子、山谷初男主演、田中登監督、いどあきお脚本の映画「発禁本「美人乱舞」より 責める!」がすこぶる印象的だったせいもあり、やや意外の感とともに見ることになった。この展覧会を進めたジブリの鈴木敏夫の言でも、晴雨に幽霊絵という印象はなかったとある。

責め絵はここでは展示していなかったが、風俗画でいくつかあるできりきりと縄で縛りあげられた女囚の絵などは事実を伝えるのが目的だが明らかにそういうテイストがある。

幽霊画そのものは、皿屋敷とか牡丹灯籠といった元ネタがはっきりしているものもあるが、物語の挿絵といった感じではなく、その場にあるものをスケッチしたような臨場感と勢いがある。これが生首をくわえた狼(幽霊関係ないだろ)となると、もっと生々しい。

幽霊だから足はないのがリアルとは違うのだが、そういう約束事はきちんと守るというのが売り絵画家としてのルールだったような感じもする。

展示物はすべて五代目小さん師匠のコレクションをもとにしているというのもびっくり。

伊藤晴雨 幽霊画展「幽霊が美しい-スタジオジブリ鈴木敏夫の眼-」