犯人が見つからないのは初めからわかっているのだから、捜査の進展や犯人像を描くサスペンスにはなりようがなく、2時間10分は少しかったるい。その代わり懸命に捜査を進める刑事たちが懸命になりすぎて、占いに頼ったり犯人の陰毛が見つからないのは無毛だからだろうと風呂屋でじろじろ人の裸を見ていたりといった傍から見るとずっこけた行動に出るユーモアや怖さ、容疑者たちのアヤしさが見ものになる。
釘が突き出た棒が脚にぐさあっと突き刺さった後、卓上でじゅうじゅういってる焼肉のアップを見せるあたりの変なユーモアのセンス。まったく内容は別だが、厚みのあるリアリズムと、そこから来る重い笑いは、今村昌平の「赤い殺意」をちょっと思わせる。
刑事たちが容疑者をこれでもかと責め立てるあたり、警察はどこも怖いなと思わせる一方、これだけハードに責めたててまだ辛うじて人権侵害にならないですんだ(らしい)のは、ところどころに挟まれる“中央”の動乱とともに当時の韓国の国情を伺わせる。刑事同志でもしょっちゅう暴力沙汰になるイカれぶり。
ほとんど全編を占める徹底した曇天や雨空狙いと、冒頭とラストの晴天のコントラスト。トンネルや列車のイメージのリフレイン、などリアリズムの一方で美学的統御も行き届いている。
(☆☆☆★★)

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釘が突き出た棒が脚にぐさあっと突き刺さった後、卓上でじゅうじゅういってる焼肉のアップを見せるあたりの変なユーモアのセンス。まったく内容は別だが、厚みのあるリアリズムと、そこから来る重い笑いは、今村昌平の「赤い殺意」をちょっと思わせる。
刑事たちが容疑者をこれでもかと責め立てるあたり、警察はどこも怖いなと思わせる一方、これだけハードに責めたててまだ辛うじて人権侵害にならないですんだ(らしい)のは、ところどころに挟まれる“中央”の動乱とともに当時の韓国の国情を伺わせる。刑事同志でもしょっちゅう暴力沙汰になるイカれぶり。
ほとんど全編を占める徹底した曇天や雨空狙いと、冒頭とラストの晴天のコントラスト。トンネルや列車のイメージのリフレイン、などリアリズムの一方で美学的統御も行き届いている。
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