prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「卒業の朝」

2004年04月09日 | 映画
本筋の時代設定は1975~76年にかけてなのだが、ところどころに60年代的なアイテムが顔を出す。反抗児ベルのトランクの中に貼られた毛沢東(1893~1976)の絵や、「勝手にしやがれ」(59)の英語ポスターbreathlessなど、いかにもな選択だが、設定からするといささか古い。

間違えたわけではなくて、イギリスの寄宿学校と間違えそうな伝統する男子校(ケビン・クラインが自分を紹介する時“ミスター”をつける)だからして、時代の変化が入ってくるのが遅れたということだろう。あるいは反抗児さえ遅れている、もっといえば中途半端な反逆児ということか。最近の60年代のイメージに見合っているよう。

あと、成長したベルの二人の息子の名前がジョンとロバートというのは、どっちもありふれた名前にせよケネディ兄弟と同じだ。ラストの救いになる本物の秀才を演じるスティーブン・カルプが「13デイズ」でジョン・Fの方をやっていることや、製作のアンドリュー・カーシュが エドワード・M・ケネディ上院議員の1976年の議院運動をコーディネート、1980年に同議員が大統領に立候補する際のメディア&発行物のディレクターとして活躍などという経歴を聞くと、偶然だろうかと思う。原作の翻訳は出ていないか。

結局、カンニングといったインチキの癖がぬけないまま父親の跡を継ぐことになるベル(会社の用紙にLiberty Bellと図入りで記してある皮肉)が、しきりと教育の重要性を説くのは、今のブッシュがテキサス知事時代にあげて大統領選でアピールした“教育改革の成果”が、統計のゴマカシの産物だったというCBSドキュメントを思いださせた。ことさらに時代を描いているようではないのに、あちこちにヒントがちりばめられているよう。

好評の割に、3週間で打ち切りなのは、時期が悪いか。配給の東宝東和が、製作に噛んでいるとエンドタイトルに出る。ドラマの中で「負けた方についた」王が重要なモチーフになっているのは、皮肉。
(☆☆☆★★)


本ホームページ