古式豊かな吸血鬼ものだと、男が美女の血を吸うのがセックスの代償行為として描かれたもので、それをひねって美しい女吸血鬼がやはり美女の血を吸うレズビアンの図にした「血とバラ」というのもあった。
今回は思い切りセクシーで派手な女の子と、まるで地味な女の子の二人の組み合わせなのだが、レズというのとも微妙に違う、女の子同士でよくあるやたらべたべた一緒にいるくせに、男が介在したりするといきなり大喧嘩になったりする男にはよくわからん一種リアルな関係を吸血鬼ものに置き換えて描いているのが興味深く、このシナリオ書いたのは女だな、と思っていたら果たせるかな「JUNO ジュノ」でオスカーを獲得したディアブロ・ コディでした。後でポスター見たらちゃんと売りになってるのね。いかに宣伝をまじめに見ていないか。
やたらと食べ物に絡めたセリフが多く、男の品定めに使う表現のソルトを日本語字幕でスパイシーと訳したのはうまいけれど、ピーナッツ(短小)をチーズと訳したのはなんだろう。(字幕翻訳は中沢志乃)
吸血鬼側(実は映画でそうはっきり言っているわけではない)が黒髪で、被害者側が金髪というのが逆手をいっている感じ。吸血鬼=男に襲われているうちに女が自分から求めるようになるといった幻想にもさらっと反論している。
町にバーが一軒しかないって、どれだけ田舎なのかと思わせるが、造成中で放棄された家がえんえん続いているあたりの光景はサブプライムローンの名残だろう。
(☆☆☆)