3時間半という長尺にも関わらず、すぐ体感時間が慣れるのは、文体が一貫しているせいが大きいと思う。
正確に真正面からか真横からカメラを固定して撮った端正な構図、音楽を使わず効果音を少し強調した使い方、極端に少ない、本心はおよそ出さないセリフ、などなど。
1975年の製作だから、パソコンもスマートフォンもないのは当然として、テレビがなくてラジオだけというのは不思議。あるいは製作年度より遡った設定なのか、それほどベルギーではテレビが普及していなかったのか。
いずれにせよ、現代の生活よりは気晴らしが少ない。
気がつかなくて初めはヒロインの夫なのかと思ってたが、「客」を迎えるのにジャガイモを一袋雑貨屋で買ったあと、出した料理の皿にマッシュポテトがちゃんとついている、それを持ってくる時に髪をちょっとなでつけるといった肌理の細かい描写が見られて、それもいわゆる暖かい生活感のある描写ではなく「手順通り」「習慣として」にことを処理するといったニュアンスになっている。
何を思い立ったのか、魔法瓶のお湯を捨ててヤカンで熱湯をわかしてコーヒーをドリップする、いれて飲むのかというと、飲みはしないでポットにいれてほったらかしにしておく。このあたり、どこか「壊れた」感じが底冷えのするような感触で迫ってくる。