ノー天気な艶笑劇だと思っていたのだが、ちゃんと見直してみると意外と観念的。
色っぽいお手伝いさんが母親を亡くした男ばかりの家庭にやってきたものだから父親と息子二人全員が発情してしまう、というストーリーはパゾリー二の「テオレマ」の突然謎の青年がブルジョワ家庭に闖入して家族全員と性別関係なく性的関係を結ぶという話を、普通の感覚に接近させてわかりやすくした感じ。
とりすました外見の下のスケベ根性を暴く形でブルジョワの偽善性をたっぷりと皮肉っているあたりは、結構トゲがあります。
お手伝いさんの名前がアンジェラ(天使)というのは、「テオレマ」とやはりパゾリーニの「アポロンの地獄」で二ネット・ダヴォリが共通した役名で演じたアンジェロ・ザ・メッセンジャーを思わせる。
サルヴァトーレ・サンペリ監督のこの四年後の「スキャンダル」は下男がブルジョワ夫人を性的に征服する笑いの要素のまったくない映画で、クライマックスで光の点滅を使って秩序の崩壊感覚を演出しているところも一緒。
調べてみると、サンペリは1944年生まれ、日本でいうなら団塊に近く(イタリアは早く降伏したものね)大学を左翼活動をしすぎて中退し、22歳の若さで監督デビューしているという。ベルトリッチ並みの早熟ぶりです。亡くなるのも早かったが(64歳)。
撮影がなんとヴィットリオ・ストラーロ。「暗殺の森」の三年後です。