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初めのうち悪役扱いだった鬼が途中から実は都の人間たちに侵略されている先住民でしたという展開になるのだが、「ウルトラセブン」の「ノンマルトの使者」みたいにそれまでに十分時間をかけて善悪がはっきりした世界観が確立しているところで逆転させるのならともかく、中途半端なところで話の腰を折るみたいに良いモン悪いモンが逆さになるというのは、作品の視点を混乱させる。
話は現代から平安時代にタイムスリップしてしまった中学生を軸にして展開するわけだが、もともと平安京の住人と鬼とのどちらにも属さないよそものが割り込んできて争ってはいけないなどと「平和」を説くというのは、結果として進歩的文化人的な上から目線になるもので気色悪くていけない。自分が身体を張っているわけでもない奴が、なんだ偉そうにと見えてしまう。
それに、結局強い力を持つものが権力を掌握しない限り、平和、というか治安は保てないというのが、歴史の事実だろう。
もうひとつ言うと、エコというのも既に文明と科学技術の恩恵を受けている者の贅沢っていう面はあると思う。
鬼の正体が明らかにアイヌのような格好をしているのは、「太陽の王子ホルスの大冒険」を思わせる。
タイムスリップの描写がすっぽ抜けていたり、タイムパラドックスをまったく気にしていないのは珍しい。なくてもそれほど気にはならないが。
鬼や襖絵に描かれたもののけたちのデザインや時代考証は良くできている。
(☆☆☆)