通勤の道すがら見かけた出版社シリーズ、最後は“あかね書房”。
首都高の飯田橋料金所をくぐった、新目白通りを西神田交差点に向かって右手にある。
かつては路地裏の、いかにも昭和の小さな児童書出版社といった風情の二階建ての建物だったが、現在は住友不動産の高層ビルの1階に入っている。地上げにあって等価交換したのだろう。
あかね書房も今ではご縁がないが、ぼくの推理小説への関心は、西荻窪の神明中学校図書館にあった、あかね書房版の少年推理小説シリーズの中のW・アイリッシュ「恐怖の黒いカーテン」を読んだことに始まる。
一般には「黒いカーテン」と呼ばれているが、「恐怖の」という形容詞がついていたことをしっかりと記憶している。
ネット上で調べると、「恐怖の黒いカーテン」は、あかね書房の“少年少女世界推理文学全集”というシリーズに入っている。1963年の発行だから、ぼくが中学1、2年の時である。時代的にもあっている。
訳者は福島正実で、イラスト(挿画)もついていたようだ。驚くのはこのシリーズの監修者に川端康成が入っていること。たとえ名前だけだったにしても、川端が少年推理全集の監修者とは・・・。
その後も、あかね書房からは同種の少年推理全集が出ている。表紙扉に黒のパラフィン紙が挟んであったのは、これとは別の全集だったかもしれない。
それこそ、もはや「黒いカーテン」に覆われてしまっていて、記憶はない。
2010/2/21