「僕は批評家達から、二十代には残忍だと言われ、三十代には軽薄だと言われ、四十代には皮肉だと言われ、五十代にはちょっとやると言われ、現在六十代では皮相だと言われた。」
中野好夫「モームの歩んだ道」(本書所収)に引用されたモーム自身の言葉。
モーム関連《お宝》、第3弾は、中野好夫編『モーム研究--現代英米作家研究叢書』(英宝社、昭和29年[持っているのは昭和58年の15刷])。
この本も、ひょっとすると今でも入手可能で、《お宝》というほどではないかもしれない。
でも、一番スタンダードなモーム研究書のうえ、出版社の名前の中に《宝》が入っているので、許してもらおう。
《英宝社》の対訳本以外では読めないモームの作品もあることだし…。
箱と奥付には『モーム研究』となっているが、扉は『サマセット・モーム研究』となっている。
どっちでもいいことだが、図書館の人などは悩むことだろう。
「幸福な夫婦」、「凧」、「大佐の奥方」、「母親」などは、行方昭夫の岩波文庫の『モーム短編集(2)』が出るまでは、英宝社の対訳本で読むしかなかったのだが、この本によると英宝社というのは千代田区三崎町にあるらしい。
わが大学のすぐ近くではないか。いつか散歩がてら立ち寄ってみよう。
* 写真は、中野好夫編『サマセット・モーム研究--現代英米作家研究叢書』(英宝社、昭和29年)の箱。