
この川は湯川といって、白糸の滝を源流とする。このほとりに星川温泉がある。ぼくは軽井沢に温泉があるなんて知らなかったが、昔は、この近くに沓掛宿があり(そういえば沓掛時次郎まんじゅうを売っていた)、草津の強い温泉に入った帰りに寄る、仕上げ湯として名高かったそうだ。
そこに、星野嘉助が大正3年(1914年)、現在の”星のや軽井沢”の前身となる温泉宿を開業した。当時の旅館名は”明星館”といって、ぼくの散歩道、北鎌倉の円覚寺の管長さんが命名してくれたということだ。それ以来、100年近い年月がたった。その間、与謝野鉄幹・晶子夫妻、北原白秋、島崎藤村ら、そして嘉助と親交のあった、野鳥研究家で歌人、詩人でもあった中西悟堂ら文化人も逗留するようになった。彼らの詩碑、歌碑等も広大な敷地の中に建っている。
雑木林の中に湯川から水をひいた小川が流れ、池がある。その敷地の中に一軒家風の宿泊棟が点在している。ぼくらの入った家は山側で、山小屋風のつくりだった。ベランダからは、今は盛りの山藤をみることができる。食事はメインロビー棟にある和食、”嘉助”でしてもいいし、宿着で林内の小路を5分ほど歩き、宿泊客以外の人も利用できる”村民食堂”で、でもいい。そこに”トンボの湯”という大きな露天風呂があり、ここも一般の人が利用できる。ぼくらは、ここでお湯につかり、そこで夕食をとった。ぼくが最近よく晩酌している、信州の銘酒”眞澄”と、ほかの地酒2本いただいた(汗)。とてもいい気分だった。
前述の中西悟堂は日本野鳥の会の創設者だが、ここにもバードウォッチングの小屋があって、自然観察ツアーなども毎日、やっている。鳥ではないがムササビ観察ツアーも夕方ある。ムササビの巣に定点観測カメラを向けていて、その画像をその小屋でみることができる。夜行性なので、昼間、寝ている姿を画面で観ることができた。こんな話を聞いてうれしくなった。5,6年前、新しい宿泊棟を建築する際、一本の木を切る計画だったが、自然観察ツアー係から、この木を切ると、ムササビが木々の間を飛べる距離を越えてしまうと反対があり、木を残し、宿泊棟をずらしたそうだ。
新幹線ができてから、軽井沢は近くなった。今回は一泊だったけれど、連泊して、近くの山路を一日歩いてみたいと思った。・・落葉松の林を過ぎて落葉松をしみじみと見き 落葉松は淋しかりけり旅行くは淋しかりけり 落葉松の林を出でて 落葉松の林に入りぬ 落葉松の林に入りてまた細く道は続けり・・ ぼくの一番好きな詩、北原白秋の”落葉松”は、ここに逗留しているときに出来た詩だそうだ。
。。。
鈴(りん)や梵鐘のような、癒しの音色で迎えられる。

宿泊棟からの景色

室内

宿着で歩く

与謝野鉄幹・晶子夫妻の歌碑
一むらのしこ鳥のごとわかき人明星の湯にあそぶ初秋 (鉄幹)
秋風に しろく なびけり 山ぐにの 浅間の王の いただきの髪 (晶子)

中西梧同の歌碑

巣中のムササビ生中継と実際の巣


北原白秋の詩碑 ”落葉松” 活字体で全節の詩。右上は自筆の第8節。”世の中よ、あはれなりけり 常なれどうれしかりけり 山川に山がはの音”

可愛いワンコがいた。ワンコも泊れる家が一軒だけあり、予約待ちが多いらしい。

カルガモの親子は自由に泊れるらしい。
