先日、原宿の太田記念美術館で”菊川英山展”を覗いてきた。ぼくには、あまり馴染みのなかった浮世絵師だが、ちらしの美人に惹かれて、つい入ってしまった(汗)。
没後150年の菊川英山(1787~1867)は、歌麿の亡き後、江戸一番の人気絵師だったようだ。当初は歌麿人気を受け継ぐかたちで歌麿風の美人を描いていたが、次第に、独自な、可憐でたおやかな英山美人を確立した。その対象は、武家の姫君から、愛らしい町娘、華やかな遊女まで、さまざまな女性たちに向けられた。英山の美人画は弟子の溪斎英泉に受け継がれ、歌川国貞や歌川国芳にも大きな影響を与えたとのこと。幕末の美人画は、英山から始まったという、見方もあるようだ。
前後期、200点もの作品が以下の章立てで展示されている。ぼく好みの美人がずらり、それも、客もそれほど多くなく、ゆっくり鑑賞することができた。図録は買わない主義(笑)なので、ちらしの写真を中心に紹介しよう
第1章 肉筆画の世界
第2章 英山登場/歌麿を継ぐ絵師
第3章 花開く英山美人/雅と俗のはざま
第4章 花開く英山美人/青楼の女たち
第5章 新たな女性像と次代へのかけはし
第1章では肉筆画が展示されている。芸者と若衆、雪月花図、品川遊女図など。東博所蔵が何点かあったので、そのライブラリーから2点お借りした。
品川遊女図(文化後期)と遊女道中図(東博所蔵)
以下、ちらし絵から。
傘さす娘(文化11~14年) 傘をさし、高下駄をはく娘さん。帯の花勝見模様は、文化・文政年間に活躍した江戸の人気役者、三代目 坂東三津五郎が舞台衣装に使用して流行したデザインとのこと。このように流行を取り入れて制作している。
花勝見模様(水草の一種)
扇屋と玉屋の遊女(文化末)三人ずつの並びだったが、一つ欠けている。大判の坐像の続絵は珍しいとのこと。つややかな衣装と華やかな室内装飾で見せる。
少し大きくしたものもどうぞ(笑)。
以下は後期展示のものだが、予告編として(笑)。
青楼之秋灯楼図(文化8~11年)
風流曲水ノ宴(文化6~8年)
はじめは、歌麿を、そのあと、北斎風美人を倣い、試行錯誤の末にたどり着いたのが、八頭身ではなく六頭身の美女。実際の日本人に近いスタイル。温和で、親しみやすい別嬪さん。ぼくも、とても、気に入った。英山の作品が東博で展示されたときに、写真を撮っておかねば。
外苑の銀杏並木をみてきた日でした。