おはようございます。
ぼくはわりと浮世絵が好きで、展覧会が更新されるとつい足を運ぶ。都内まで行かなくても、藤沢と川崎に浮世絵ギャラリーがあるのでありがたい。
先日は、川崎浮世絵ギャラリーで特別展、広重・六十余州名所図会を見てきた。広重というと東海道五十三次だが、全国の名所を描いた”六十余州名所図会”がある。五畿七道の68ヶ国及び江戸からそれぞれ1枚ずつ69枚の名所絵で、目録1枚を加えた全70枚からなるシリーズものである。部分的には見たことはあるが、こうして揃いで見たことは初めて。
日本全国を広重さんの案内で一周できて、こんな楽しいことはない。五畿七道とは、畿内5か所、東海道16か所、東山道8か所、北陸道7か所、山陰道8か所、山陽道8か所、南海道6か所、西海道11か所となっている。広重自身がすべてを旅行したというわけではなく、当時の観光書などを参考にしながら広重風にアレンジしているのだ。
展示は、国巡り順かと思ったが、企画者により次のようなくくりでまとめられている。
1. 絶景にようこそ
2. 異空間への誘い
3. 心震える幻想世界
4. 今も昔も定番です
5. 旅心誘うおすすめスポット
その他 大日本六十余州名勝図会(目録)梅素亭玄魚作
ここも残念ながら撮影禁止なので、ここに展示風景を残すことができない。なんとか手に入れた画像で、マイ好みでいくつかを選出して、各章ごとに記録しておきたい。
1. 絶景にようこそ
紀伊 和哥之浦 若の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺をさして鶴鳴きわたる(万葉集・山辺赤人)。この歌から飛翔する鶴を画中に入れたのであろう。

甲斐 さるはし 日本三奇橋の一つといわれる名勝「猿橋」の秋の絶景。

出羽 最上川 月山遠望

2. 異空間への誘い
越後おやしらず

薩摩 坊ノ浦 雙剣石 坊浦入口の網代浜近くの海上に、剣のような岩が天に向かって対峙するようにそそり立っ名所。

肥後 五ヶの庄 五かの庄は、球磨川の上流の地の山谷深き九州第一の僻境といわれる所。平家の落人が住み着いたともいわれる。「北斎漫画」七編の「肥後五ケの庄」から借用した図であることは知られている。

阿波 鳴門の風波 渦潮で有名な鳴門。北斎のような波も。

美作 山伏谷 岡山の名所。岡山出身の淵上旭江の版本『山水奇観』にある絵をほぼそのまま利用している。

3. 心震える幻想世界
信濃 更科田毎月 鏡台山 長野県更埴市南西にある冠着山、俗称「姥捨山」は古来、「田毎(ごと)の月」の名月の地として、土佐の桂浜・石山寺の秋の月と並んで三名月と呼ばれた。

武蔵 隅田川 雪の朝 絵の右下にあるのは待乳山(まつちやま)聖天で、このあたりは隅田川を一望できる景勝地だった。広重の雪景色はいいね。

上野 榛名山 雪中 巡礼地であり聖域である榛名寺が雪に覆われている。絶壁に架かるにんにり橋として知られる赤い橋を渡る巡礼者。

出雲 大社ほとほと図 「ほとほと」とは訪問者などの戸を軽くたたく音。小正月に姿を隠して来訪し、戸口をたたいてほとほとなどの祝い事を唱え、そこへ餅など出しておくと知らぬまにこれをとり、代りに藁細工などを置いてゆく。これと絵の関係は不明。シルエットで鳥居や杉木立を描き、そのなかで美しい着物をきた三人の女性があざやかに浮かび出ている。

4. 今も昔も定番です
丹後 天橋立

江戸 浅草市

相模 江の島岩屋ノ口 地元ということで採用しました(笑)。

伊豆 修善寺湯治場

駿河 三保の松原

山城 あらし山渡月橋 六十余州の第1図目となる京都嵐山の渡月橋の図。ちょうど桜の見頃。渡月橋の位置は現在と異なる。

5. 旅心誘うおすすめスポット
摂津 住よし出見のはま 住吉大社のあるところで、西は海に面して松原があり、古典的な美しい風景の地であった。

土佐 海上松魚釣

大隅 さくらしま

東海道五十三次巡りを定年退職後の楽しみにしている人が多いが、六十余州名所図会巡りも面白いかも。コロナワクチンの2回目が済んだら、出掛けてみようかな(笑)。

それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!