おはようございます。
ちょっと開いてしまいましたが、メトロポリタン美術館(MET)展の第5報となりまする。テーマ別紹介ということで、今回はお待ちかねの(?)裸体画編となります。いつものように、各絵画の説明は公式サイトの解説を元にしています。裸体画というと、理想型(ルネサンス期のように理想的な裸体)、現実型(モデルを写実的に描く)、変形型(一部、全部を誇張して描く)があるが、ここでは、とり混ぜて、載せたいと思います(笑)。
裸体画編
フランソワ・ブーシェ「ヴィーナスの化粧」 1751年
18世紀フランスのロココ美術を代表するフランソワ・ブーシェは、官能的な神話場面や田園で男女が憩う情景をパステル調の色彩で華麗に描出した絵画により、王侯貴族に絶大な人気を博し、ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人から15年以上にわたって寵愛されました。《ヴィーナスの化粧》はもともと、ポンパドゥール夫人のためにパリ近郊に建造されたベルヴュー城の「湯殿のアパルトマン」の装飾画で、《ヴィーナスの水浴》(ワシントン・ナショナル・ギャラリー)と対をなしていました。ヴィーナスの裸身は磁器のように白く滑らかで、甘い官能性を漂わせます。豪奢な布地の質感がみごとに描写され、華やかな雰囲気を強調しています。

ティツィアーノ ヴィーナスとアドニス 1550年代
16世紀、ヴェネツィアの巨匠ティツィアーノは、ヨーロッパ各国の王侯貴族から注文を受け、国際的に活躍しました。女神ヴィーナスと美青年アドニスの悲劇の物語はルネサンス期に人気を博し、ティツィアーノも何度も絵画に描いています。本作品の構図は、ティツィアーノがスペイン国王フェリペ2世のために描いた有名な作例(マドリード、プラド美術館)と類似しており、危険な狩りに向かうアドニスにヴィーナスが追いすがる場面を表しています。この後、ヴィーナスの不安は的中し、アドニスはイノシシに突き殺されてしまいます。ティツィアーノは、片足を踏み出すアドニスと彼を引き留めるヴィーナスの動作の絶妙な対比や、雲間から差すドラマティックな光によって、緊迫した雰囲気を巧みに強調しています。

クルーべ 水浴する若い女性 1866
クルーべは19世紀フランスの写実主義の画家。自然のモチーフや、現実的な肉体の裸婦像を、多様な絵筆のタッチを用いた、クルーべの特徴的スタイルで表現した作品。

おまけ。ニューヨークMETで撮ったクルーべのヌード。来日していません。

クラーナハ パリスの審判 1528
「パリスの審判」は16世紀にドイツで流行した神話主題で、ドイツ・ルネサンスの巨匠ルカス・クラーナハ(父)も何度も絵画に描いています。ユノ、ミネルヴァ、ヴィーナスの3人の女神のうち、誰が「最も美しい者に」と記された黄金のリンゴを手にすべきか、判定を一任されたトロイアの王子パリスは、世界一の美女を与えると約束してくれたヴィーナスを勝者に選びました。この作品では、黄金のリンゴの代わりに水晶玉を持った伝令の神メルクリウスが、森のなかで目覚めたパリスに、3人の女神を引き合わせています。側面・正面・背面と、異なる角度から描かれた女神たちの生々しい裸体は、独特の官能性を漂わせます。甲冑や宝飾品の精緻なディテールや、うっそうと茂る草木、険しい山岳風景など北方特有の自然の細やかな描写も見どころです。

ニューヨークのMETで撮った額縁つきの作品。もちろん、六本木にもこの額縁で来ています。

ジャン=レオン・ジェローム ピュグマリオンとガラテア (1890)
ジャン=レオン・ジェロームはフランス19世紀後半のアカデミズム絵画を主導した画家です。この時代は、市民社会の趣味の変化が保守的なアカデミズムにも様々な影響を与え、歴史画の主題も変化していきます。教訓性や難解さは敬遠され、感傷的でロマンティックな物語が好まれるようになりました。ギリシア神話のキプロス島の王ピュグマリオンとガラテアの物語は、その好例です。自分が彫刻した女性像に恋をして苦しんだピュグマリオンが、ヴィーナスに祈ったところ、女神は願いを聞き届け、彫刻に命を吹き込みました。ジェロームは、均整のとれた美しいヌードの女性像が硬い大理石から柔らかな生身の人間に変容し、ピュグマリオンとキスを交わす一瞬をドラマティックに描出しています。

この絵を見ると思い出すのは、横浜中華街のトリックアートミュージアムのこの絵。額縁の外にまだ大理石の足が飛び出している(笑)。

いろいろと余計なものを入れた構成になってしまいましたが、お赦しを。いよいよ次回の印象派編が締めとなりまする。
それでは、みなさん、今日も一日、お元気で! 大谷のヤンキース戦、雨で試合開始が遅れている。昼まで終わらないかな。今日は12,13号の予定。