こんばんわ。
小津安二郎監督は1903年12月12日に生まれ、1963年の60歳の誕生日、12月12日に没した。それから暦が回って60年経過した今日、2023年12月12日は、生誕120年、没後60年の記念すべき日となる。
この日、小津安二郎の仕事場であった大船撮影所跡地に建造された鎌倉芸術館ホールで、小津の最高傑作といわれる”東京物語”が上映された。これ以上ない最高の舞台と日時で”東京物語”を鑑賞することができ、こんな幸せなことはない。めったにないことなので本ブログにも記載しておこうと思う。あと60年後の12月12日といえば、ぼくはこの世にいないし、芸術館だって存続しているかどうかわからない。
東京物語はこちらに越してきてから何度も見る機会があり、ブログ記事にもしているので(たとえば、これ)、ここではポスターと今回のレジメのあらすじだけを載せておこう。
(あらすじ)
年老いた親が成長した子供たちを訪ねて親子の情愛を確認しあうという題材が、小津の手にかかるとどうなるかを示す傑作。何気ない言動が教える各人の生活、思いがけない心情の吐露と発見、そして何事もなかったような人生の悲哀と深淵が見事に描かれている。
加えて、”ドライブ・マイ・カー”でカンヌ映画祭で脚本賞など四冠受賞の濱口竜介監督のトーク”東京物語”もあった。第二部では岩下志麻さんのトークもあったが、チケットはすでに完売でもう席はなかった。
濱口竜介監督は大学1年のときの初見で”東京物語”のとりこになり、その後、何度見たかわからないという。現在、自身も映画監督で、専門家の目で見ても一分の隙もない名画ということだ。登場人物の動きも実によく計算されていて、アクションのつなぎが、シンクロ(同期)、連動、反復になっている、と、それぞれのカットを画面に出し説明され、よくわかった。また、小津映画には人物間の身体的な接触はほとんどないが、この映画では紀子(原節子)だけにやらせているというのも面白かった。お母さん(東山千栄子)や義妹(香川京子)に対して示す情愛など。そして、紀子の心の深層も、終盤には明らかにされるが、それ以前には細やかな表情の変化で暗示させている、という。映画終盤の場面。東京に行っても、実の子供たちからは歓迎されなかった老夫婦。ただ、亡き次男の嫁、紀子だけには親切にされる。老父、笠智衆が、あんたはいい人だなという言葉に、”私、そんなおっしゃるほどのいい人間じゃありません・・・私、ずるいんです”という原節子。老母、東山千栄子には次男のことはもう気にかけないで、再婚してね、そうじゃないと私たちの気が済まないから、とも言われる。同じことを、老母の葬儀後、笠智衆にも言われ、”私、そんなにいつも、亡き夫のことを想っているわけではないんです、どこか心の片隅で、何かを待ってるんです”と正直に話し、涙ぐむ原節子。
この笑顔が消えるときが何度かあるが、そこも見どころだそうだ。
2023年12月12日は小津監督の”東京物語”と濱口竜介監督のトークで有意義な一日だった。
では、おやすみなさい。
いい夢を。
小津安二郎の眠る円覚寺の紅葉も、今、見頃になっています。