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小林恭二『ゼウスガーデン衰亡史』

2013-05-07 05:11:00 | ノンジャンル
 ヴィム・ヴェンダース監督の'11年作品『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』をWOWOWシネマで見ました。ピナによる前衛的な舞踏とパントマイムのパフォーマンスのドキュメンタリーで、舞台、部屋、町中などで行われるそれらは、とても面白く見ることができました。

 さて、宮田珠己さんが著書『はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある』の中で紹介していた、小林恭二さんの'87年作品『ゼウスガーデン衰亡史』を読みました。
 宮田さんの紹介文をそのまま引用させていただくと([]内は私の書き込みです)、「(前略)私のなかで、キング・オブ・立体読書をひとつ挙げよと言われれば、迷わず小林恭二『ゼウスガーデン衰亡史』(ハルキ文庫)を挙げたい。
 小さな遊園地が徐々に巨大化し、異形のものとなっていくさまを描いたSF小説で、経営母体の分裂やら権力闘争やらが軸となって歴史読み物のように話が展開していくのだけれども、眼目は、そこここにちりばめられた、遊園地アトラクションの複雑怪奇なイメージである。話の筋はどうあれ、とにかく異形の空間イメージにまみれ尽くすという、至福の立体読書経験が味わえるのだ。
 『ゼウスガーデン衰亡史』が書かれたのは80年代、日本経済はバブル絶頂期だった。ところが、ゼウスガーデンの前身は〈下高井戸オリンピック遊戯場〉という廃墟同然の小さな遊園地で、壊れた回転木馬やら、スマートボールやら、ハリボテのゴジラ像やらの置かれた、今で言うところの珍物件なのである。そこのオンボロジェットコースターが[木製のために]何が起きるかわからないスリルで人気を博すところから、発展が始まる。
 このあたりが、実に妖しくていい。
 その後は『中華園』なるリラクゼーション施設[これは桃源郷をイメージしたもの]だの、エジプトのファッションを楽しむ『埃及[エジプト]館』だの、だんだん普通に豪華なアトラクションなんかも出てくる。さらには人口の火山も登場。これ、東京ディズニーシーにもあるぞ。[しかし規模が違って、高さ数百メートル、1日1回の噴火の前には周囲1キロメートルに震度5の地震が発生する。]
 そして規模の拡大につれ、『ゼウスガーデン』は再び妖しげなものになっていく。
 植物でできた観覧車、植物性動物(動物なんだけども花が咲く)の動物園、恋愛や戦争の疑似体験ができる施設、さらに乱交パーティが行われる宮殿[これは経営者らが出席できるもの]、マンダラ映像でトリップできる施設、やがては新興宗教の聖地まで取り込んで、地獄めぐりができるアトラクション[これは衰退期に地方の遊園地が単独では経営が難しくなり、新興宗教とタイアップして、その資金を獲得することで成立した]なんてのも現れ、しまいには心中を見せるショーが登場[芦ノ湖の真ん中で剣でお互いを刺し合いながら入水自殺するのを400万人の人が生で見物し、撮影も行われる]、その後も人間をとことんまで改造して行う裏オリンピック[こんなシーンはなく、宮田さんの思い違いと思われる]とか、ある時間帯だけ強姦、殺人など何をしても罪に問われない超法規フェスト[これも宮田さんの思い違いで、実際は殺人や強姦などを除いた罪で、殺人は決闘の場合だけ許される]など何でもありで、とにかく思いついたものバンバン放りこみましたというような猛烈な描写は、世の空間読書愛好家を満足させるに十分なトポスを描いていると思う。」
 実際、私は読んでいて、その途方もなさに、サドの文章を思い出しました。特に前半の様々なアトラクションの描写が面白かったのですが、後半は経営母体の権力闘争に終始していて、あまり面白くありませんでした。(それでも突然、経営者が反乱を食い、料理されてしまい、パーティに集まった客に肉として振舞われるシーンなども突然出てきたりするのですが。)ラスト、ゼウスガーデンが破壊され尽くしていく場面がせっかく用意されているので、そこでももっと突っ込んだ残酷描写がなされていれば、より楽しめたと思います。

 →Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto