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畑野智美『海の見える街』

2013-05-09 05:26:00 | ノンジャンル
 北上次郎さんがテレビで推薦していた、畑野智美さんの'12年作品『海の見える街』を読みました。4章からなる小説です。
 「マメルリハ」では、海の見える街の図書館司書として働く30過ぎの僕・本田の元に、産休で休んでいる和泉さんの代わりとして、派遣社員の春香ちゃんがやってきます。彼女はハイヒールにミニスカートといった姿で、わがまま放題でしたが、見かけがかわいいせいで男性職員らに甘やかされ、女性に囲まれて受け身で育った僕も、彼女に強く出られると、フリーズしてしまいます。既婚の姉と妹に実家に呼び出された僕は、母が1階のテナントをカレー屋として貸しているインド人と再婚するつもりであることを知らされます。春香ちゃんは先輩で25歳の日野さんと本の扱い方をめぐってケンカし、僕はその日野さんに告白されますが、妹のようなものとして日野さんのことを大切に思っていた僕は、その場で断ってしまいます。ある日、春香ちゃんに近所の店を案内してほしいと言われ、一緒に歩いていると、春香ちゃんの恋人らしき男に出会い、いきなり暴力を振るわれ、その場で失神してしまいます。目覚めて病院から1人で自宅のアパートに戻ると、しばらくして春香ちゃんがやって来ますが、彼女が勝手にドアを開けてしまい、僕が大切に育てていたインコのマメルリハのマメちゃんがドアから外で出ていってしまいます。捕まえようとして2階から落ちそうになった春香ちゃんを抱きとめると、僕は彼女をそのまま抱きしめたいなと思ってしまうのでした。
 「ハナビ」では、初恋の相手がもーれつア太郎で、小学生ではホームズ、中学生では太宰に夢中になり、自室が本だらけになっている私・日野は、今まで友人も恋人もほとんど持ったことなく、学生時代は虐められてきました。現在は自分で保管しきれない本は弟の文也に預かってもらっていて、祭りの日に本田さんにもらったミドリガメのハナビを飼っています。派遣で来るようになった春香ちゃんとは、始めのうちケンカもしましたが、彼女に買物に誘われてから仲良くなり、過去に私を虐めた相手と私が出会った時、助けてもくれました。和泉さんのことを10年来好きだった本田さんに告白し、その場で振られてしまいますが、その後も本田さんは何事もなかったように振舞っています。そしてこれまでも一緒に働く機会の多かった、図書館の1階下の児童館で働く松田さんが、職場のパソコンで秘かに女子中学生の画像を見ているのを発見して、私は取り乱すのでした。
 「金魚すくい」では、児童館で学童保育の仕事を主にしている俺・松田は、子供からも親からも厚い信頼を受けていますが、先日パソコンで女子中学生の画像を見ているのを日野さんに知られてから、日野さんに避けられるようになってしまいました。以前からその事実を知っていた同期で親友の本田君はもちろんのこと、日野さんと一緒にいた春香ちゃんも俺のことを理解してくれているようです。ある日、日野さんは春香ちゃんに言われたと言って、俺に話しかけてきてくれます。俺は自分が高校生の時に中学生だった女性と恋に落ち、肉体関係にまで発展しましたが、彼女の義理の父がその事実を知り、俺の父から200万円を脅し取ったこと、彼女が義理の父から売春を強要されていたこと、やがて両親から捨てられた彼女は、俺が祭ですくってあげた金魚が死んで浮いていた濁った水を最後に飲んで衰弱死したことを日野さんに明かします。そしてある日、俺は死んだ彼女うり二つの少女と職場で出会うのでした。
 「肉食うさぎ」では、図書館で派遣社員として働くようになったわたし・春香はうさぎのデニーロを飼っていて、松田さんが突然辞めたことを知ります。わたしは恋人のDVから逃れるようにして、この町へやって来て、現在では本田さんに好意を抱いていて、図書館長からは派遣期間の延長も打診されましたが、本田さんにそれを報告しようとした時、本田さんは久しぶりに現れた和泉さんの元へと行ってしまうのでした。結局館長の申し出を断り、引越しをしているところに、マメちゃんが現れ、本田さんもわたしを引き止めに現れ、わたしはその場で本田さんと同棲することを決心するのでした。

 すべて一人称で書かれていて、語り手の気持ちの変化の激しさに付いていくのがやっとでした。

 →Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto