恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんの「本音のコラム」の第17弾。
まず、1月31日に掲載された「守旧派の遺言」と題されたコラム。
「二十六日、元自民党代議士の野中広務氏が九十二歳で亡くなった。
氏の経歴と思想信条をはじめて知ったのは、魚住昭『野中広務 差別と権力』(2004年)を通してだった。当時の私の感想は『知らなかったよ。ごめんな野中』。
『聞き書 野中広務回顧録』(御厨貴+牧原出・2013年)」のなかで、『あのまま国鉄に勤めておれば、大阪の一サラリーマンとして、どこかの中間駅の駅長で終わっていたと思います』と野中氏は語っている。が、京都府の園部町議から町長へ、さらに京都府議へ。三十二年の地方政治家を経て国政に転じたのは五十七歳のときだった。
『守旧派』の代表をとみなされていたように、国鉄の分割民営化には反対だった。敗戦後の引き揚げ者を当時の国鉄は大量に引き受けた。その人たちが定年を迎える時期に職を失ったら大変だという理由だった。小選挙区制の導入にも反対した。多様な意見が封殺されるこんな制度はよくないと主張した。政界を引退したのは〇三年。自分が死んだら、小泉内閣を許した責任者の一人として批判される。『だからいま辞めよう。小泉内閣は間違っている。やがて歴史が証明するであろう』
まるで野党政治家みたい。主張を曲げた経緯は浪花節的だったりするものの、日本の政治がどこでどう間違ったのか、この回顧録を読むとよくわかる。」
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)
さらに2月7日に掲載された「兵糧攻め」と題されたコラム。
「四日の沖縄県名護市長選で与党推薦の渡具知武豊氏が当選。止まっていた米軍再編交付金を政府は再開するという。
なんじゃそりゃ。あんたは鳥取城を兵糧攻めで落とした秀吉か!
あまりに露骨な対応に頭から湯気が出そうになったが、頭を冷やして過去に遡(さかのぼ)ってみた。
そうだった。普天間飛行場の辺野古移設に反対する稲嶺進氏が初当選したのは2010年1月。直後には再編交付金は止められた。菅直人政権の時代。民主党よオマエもか、である。
しかし、さらに遡ると07年、第一次安倍政権の時代に行き着く。この年の5月に成立した『在日米軍再編特別措置法』が諸悪の根源で、以来、政府案をのむか否かで交付金支給の是非が決定されてきた。
この措置で、沖縄県の金武(きん)村、恩納(おんな)村、宜野座(ぎのざ)村は次々降伏。住民投票で空母艦載機の移転に反対の民意が示された山口県岩国市も、米陸軍司令部の新設に反対してきた神奈川県座間市も、市長が苦渋の決断の末に寝返った。それでも名護市は交付金に頼らない行政を貫いて、全学校への冷房設備や校舎の耐震化、小中学生の医療費無料化まで実現させたのである。
選挙中、自民党は交付金の再開を当然ちらつかせただろう。札束の力で自治体をねじ伏せ、住民を分断させる恫喝(どうかつ)政治。これ、民主主義なんですか。」
さらに、こちらも恒例となった、日曜日の東京新聞に掲載されている、山口二郎さんによる「本音のコラム」。
2月4日に掲載された「シビリアン・コントロール」を転載させていただくと、
「陸上配備型迎撃ミサイルシステム『イージス・アショア』に搭載予定の新型迎撃ミサイル『SM3ブロック2A』の迎撃実験が二年連続で失敗したという記事を読んだ。
この迎撃システムは北朝鮮のミサイルの脅威から日本を守るために必要だと主張して、導入を決めたものである。これに限らず、長距離巡航ミサイルや護衛艦の事実上の空母への転用など、北朝鮮の脅威を奇貨とした防衛装備の拡張が続いている。
一連の軍拡は憲法の専守防衛原則を崩すものだと私は考える。憲法上の点だけでなく、本当に日本の防衛に役立つのかどうか、費用と効果を吟味する必要がある。軍事ジャーナリストの田岡俊次氏は、『ミサイル防衛に当たる四隻の迎撃用イージス艦は各八発の迎撃用ミサイル“SM3”しか搭載しておらず、仮に全弾が命中したとしても最大八目標にしか対処できない』と指摘している。また、巡航ミサイルで敵基地を先制攻撃しても、すべてを破壊することは不可能で、反撃を招くだけだ。
米国の武器産業のために高価な装備を買い込み、それが国民を欺く気休めでしかないならば、何のための防衛政策なのか。納税者・国民を代表する国会議員は、シビリアンとしての気概を持って防衛予算を検証し、真に国民を守るための政策を論じてほしい。」
いずれも読みごたえのあるコラムでした。今後のコラムを読むのが今から楽しみです!
まず、1月31日に掲載された「守旧派の遺言」と題されたコラム。
「二十六日、元自民党代議士の野中広務氏が九十二歳で亡くなった。
氏の経歴と思想信条をはじめて知ったのは、魚住昭『野中広務 差別と権力』(2004年)を通してだった。当時の私の感想は『知らなかったよ。ごめんな野中』。
『聞き書 野中広務回顧録』(御厨貴+牧原出・2013年)」のなかで、『あのまま国鉄に勤めておれば、大阪の一サラリーマンとして、どこかの中間駅の駅長で終わっていたと思います』と野中氏は語っている。が、京都府の園部町議から町長へ、さらに京都府議へ。三十二年の地方政治家を経て国政に転じたのは五十七歳のときだった。
『守旧派』の代表をとみなされていたように、国鉄の分割民営化には反対だった。敗戦後の引き揚げ者を当時の国鉄は大量に引き受けた。その人たちが定年を迎える時期に職を失ったら大変だという理由だった。小選挙区制の導入にも反対した。多様な意見が封殺されるこんな制度はよくないと主張した。政界を引退したのは〇三年。自分が死んだら、小泉内閣を許した責任者の一人として批判される。『だからいま辞めよう。小泉内閣は間違っている。やがて歴史が証明するであろう』
まるで野党政治家みたい。主張を曲げた経緯は浪花節的だったりするものの、日本の政治がどこでどう間違ったのか、この回顧録を読むとよくわかる。」
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)
さらに2月7日に掲載された「兵糧攻め」と題されたコラム。
「四日の沖縄県名護市長選で与党推薦の渡具知武豊氏が当選。止まっていた米軍再編交付金を政府は再開するという。
なんじゃそりゃ。あんたは鳥取城を兵糧攻めで落とした秀吉か!
あまりに露骨な対応に頭から湯気が出そうになったが、頭を冷やして過去に遡(さかのぼ)ってみた。
そうだった。普天間飛行場の辺野古移設に反対する稲嶺進氏が初当選したのは2010年1月。直後には再編交付金は止められた。菅直人政権の時代。民主党よオマエもか、である。
しかし、さらに遡ると07年、第一次安倍政権の時代に行き着く。この年の5月に成立した『在日米軍再編特別措置法』が諸悪の根源で、以来、政府案をのむか否かで交付金支給の是非が決定されてきた。
この措置で、沖縄県の金武(きん)村、恩納(おんな)村、宜野座(ぎのざ)村は次々降伏。住民投票で空母艦載機の移転に反対の民意が示された山口県岩国市も、米陸軍司令部の新設に反対してきた神奈川県座間市も、市長が苦渋の決断の末に寝返った。それでも名護市は交付金に頼らない行政を貫いて、全学校への冷房設備や校舎の耐震化、小中学生の医療費無料化まで実現させたのである。
選挙中、自民党は交付金の再開を当然ちらつかせただろう。札束の力で自治体をねじ伏せ、住民を分断させる恫喝(どうかつ)政治。これ、民主主義なんですか。」
さらに、こちらも恒例となった、日曜日の東京新聞に掲載されている、山口二郎さんによる「本音のコラム」。
2月4日に掲載された「シビリアン・コントロール」を転載させていただくと、
「陸上配備型迎撃ミサイルシステム『イージス・アショア』に搭載予定の新型迎撃ミサイル『SM3ブロック2A』の迎撃実験が二年連続で失敗したという記事を読んだ。
この迎撃システムは北朝鮮のミサイルの脅威から日本を守るために必要だと主張して、導入を決めたものである。これに限らず、長距離巡航ミサイルや護衛艦の事実上の空母への転用など、北朝鮮の脅威を奇貨とした防衛装備の拡張が続いている。
一連の軍拡は憲法の専守防衛原則を崩すものだと私は考える。憲法上の点だけでなく、本当に日本の防衛に役立つのかどうか、費用と効果を吟味する必要がある。軍事ジャーナリストの田岡俊次氏は、『ミサイル防衛に当たる四隻の迎撃用イージス艦は各八発の迎撃用ミサイル“SM3”しか搭載しておらず、仮に全弾が命中したとしても最大八目標にしか対処できない』と指摘している。また、巡航ミサイルで敵基地を先制攻撃しても、すべてを破壊することは不可能で、反撃を招くだけだ。
米国の武器産業のために高価な装備を買い込み、それが国民を欺く気休めでしかないならば、何のための防衛政策なのか。納税者・国民を代表する国会議員は、シビリアンとしての気概を持って防衛予算を検証し、真に国民を守るための政策を論じてほしい。」
いずれも読みごたえのあるコラムでした。今後のコラムを読むのが今から楽しみです!