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高橋秀実『損したくないニッポン人』その1

2018-02-18 04:09:00 | ノンジャンル
 高橋秀実さんの’15年作品『損したくないニッポン人』を読みました。季刊誌『セオリー』に2010年3月から2012年6月まで連載した同名の連載に加筆し、再構成したものです。
 本文からいくつか引用させていただくと、

・「そもそも『景気』という言葉は、明治期に『business』『trade』の翻訳語としても使われ始めたが、それ以前はただの『気配』を意味していた」

・「経営コンサルティングの業界では、報酬額をコンサルタントにかかる費用の通常2.5倍に設定する。この価格は、コンサルティングの総費用をカバーし、かつ魅力的な差額が残るように計算されたものだ」

・「新製品の開発とはすなわち旧製品の陳腐化。家電製品の普及率は今や99.9%といわれており、すでに普及している中に新たな需要を生み出すには、前の製品を次々と陳腐化させていく以外にないそうなのである」

・「例えば、我が家で使っている品目は、
 寿命9年━━電気冷蔵庫、エアコン
 寿命8年━━カラーテレビ、ステレオ、扇風機、電子レンジ
 寿命6年━━電子ジャー、電気洗濯機、電気掃除機、電気ストーブ
 寿命5年━━アイロン
 案外、はかないものだな……」

・「『経済理論の対象にする経済現象とは、同じ種類のものが集団的に発生するものであるか反復的に発生するものであるかのいずれであってもかまわないが、歴史的に1回しか発生しないような個性をもった現象ではない』」

・「そもそも『経済』という言葉は、『economy』の訳語として使われる以前は、漢語『経世済民』の略だった。世を治めて民を済(すく)う。いうなれば『世のため人のため』という道徳的な意味なのである」

・「━━でも、(二宮金次郎は)学問はしていたわけですよね。
 『実は、子供の頃に読んでいたのは「算書」なんです』
 残された書き付けの中にその記録があるらしい。『算書』とは算術の手習い書。単位や掛け算の九九、さらには米など様々な商品の売買の計算などを覚えるためのものだ。
 『彼は数学が好きだったんです。数字が大好きだった。日記を見ればわかります』」

・「『農民に1両1分を貸して1反の土地を開墾させたりしています。それで出来高で6分の1ずつ返させるんです。そうすると6年でお金は戻ってくるし、農民もその土地を手に入れることができる。利子は取らないけど金次郎は損しない。要するに、彼らの借金の肩代わりをしていたんです』」

・「『メーカーはまず百貨店に商品を入れる。その時にメーカー側が仕入れ価格に利益をのせた値段を付けてきますので、それをそのまま『上代(じょうだい)』にするんです』
 『上代』とは百貨店が販売する際に付ける値段、すなわち『定価』のこと」

・「百貨店に置かれる商品には『買い取り』と『消化仕入れ』の2種類があるらしい。『買い取り』は文字通り、商品を百貨店が買い取る。買い取り価格はメーカーが提示した値段の60~65%。1000円の商品600~650円で購入し、それを1000円という定価で売るのである。一方の『消化仕入れ』はいうなれば場所貸し。百貨店は店舗の場所だけを提供し、売り上げの約18%を受け取るそうである」

・「『百貨店の基本は“対面販売”です。お客さんに直接対面して、「これ、どうかな?」と訊かれたら「お似合いですよ」と勧めたりする。商品知識のあるスタッフが対面で定価販売するというのが百貨店の百貨店たるゆえんなんです。一方、量販店やスーパーは「陳列販売」。商品を並べておいて、それをお客さんが勝手に選ぶという形態ですからね』」

・「━━なぜそうなったのでしょうか?(中略)
 『百貨店はもともと呉服屋ですからね』(中略)
 『言葉は悪いですが、呉服屋はぼったくりビジネスの典型ですからね。呉服の原価なんて誰も知らないし、誰も訊いたりしませんから』」

・「『呉服屋で重要なのは「御用聞き」なんです。お客さんの家に出向いて、呉服の相談などしていると、「ついでに〇〇も持ってきておくれ」と頼まれ、それを届ける。これが百貨店でいう「外商」のルーツです。御用聞きはお客さんの家族構成や親戚関係も把握していますから、必要そうなモノはすぐに用意できる。そして例えば、お孫さんの七五三があれば、隣近所の家に行って「あそこのお孫さんは七五三ですよ」と触れ回る。そこで「それじゃ何かお祝いをしなきゃ。何かいいモノはないかしら」と相談され、「これなんかどうですか」とお祝いの品を勧めて、その注文を受ける。いずれにしても贈答品ですから、安売りする必要なんてないんです』」

・「百貨店の品揃えの原点は贈答品なのである。実際、百貨店の売り上げの3割近くは『お中元』『お歳暮』が占めていた。近年、百貨店の売り上げが激減しているのも、不景気というより、『お中元』『お歳暮』を贈る習慣が廃れてきたためだと彼は指摘する」(明日へ続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)