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阪本順治監督『団地』その5

2018-02-27 06:34:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 ヒナ子、ロウソクに火。真城「一度だけやったことがあります。お参り」「衝突したトラックの運転手から何か言ってくるどころか、謝罪の手紙もない。ただ運転会社の部長やらが来て、報道陣も連れて来て。みんなで謝罪の儀式。それだけ。私らも取材受けました。荷重労働させた会社に何か言いたいことありますかって。泣き寝入りするんですかって。何が何やら分からん。静かに抜く暇もない。と思ったら、いつの間にかニュースでも取り上げられなくなって、やっと抜けると思ったら、これが中で疲れ切って、ただ悔しくて」「それで廃業なさったんですね」「近所にお悔み言われるのも、つろうてな」。3人の写真。「店舗を処分してここへ。で、今日は?」「大事なお願いがあって来ました。同郷人5000人分の漢方薬をお願いしたいと」「5000人?」「はい。みんな免疫力が落ち、私の妹ももう骸骨みたいで」「それなら漢方薬じゃなくて、ちゃんと検査を」「化学薬品は我々の体が受け付けない」「私たち? 受け付けない?」「はい、自然に即した医薬でないと」「それならもっと大きい漢方薬局が」「日本中の薬局を歩き回り、あらゆる漢方薬を試しました。その上で山下さんの薬がもっとも私たちの体に適していると。本場の中国にも行きました。でも私たちには強すぎた。それに高い。やはり山下さんの漢方薬が」「ありがたいけど5000人分は」「同郷の住人を救えるのはあなたしかいません」「そう言われてもなあ。断る時も断れへん。一月はかかるよ」「はい、2週間だけお待ちしましょう」「強引な人やなあ。第一材料の生薬が足らん。蜂蜜も」「明日には届きます。抜け目ありません」「ほう、そう」「準備万端です。バルタン星人です。あっ、今のはこの土地独特の言い方をマネしてみました」ヒナ子「頭痛薬飲みたい」「はい、どうぞ。それに私たちは一人分わずかな分量で効きます。虚弱ですから」「ほな一回分20丸のとこ2丸でもええの?」「はい。ご連絡いただけたら同郷の者が取りに行きます」「あの同郷っていつも送らせてもらう琵琶湖のそばですの?」「いえ、あの住所は架空です。そやけど宅配便に兄ちゃんが」「3番目の弟です」「弟? いつも下痢をしていたでしょう?」「それが証拠です」「それが証拠と言われてもなあ」「3分以上立っていると体に異変が現われ、放っておくと泥酔状態」「脱水状態」「それです。これまで偽ってすみません」「ほな、どこがほんまの郷土なん? いやいや、あなたはどなた?」「どこの誰とは言いづらいです」「どこの誰とは言いづらいの?」「ここに5千万あります。どうかこれで」「僕はお金じゃないんです」「でしたら提案があります。盆返しをさせてください」「恩返し?」「私も初めての子を亡くしました。だから…」。3人の写真。
 調剤をする山下夫妻。ヒナ子「ここに置いときます」「うん」。
 寝る2人。
 調剤をする山下夫妻。
 眠る2人。「蜂蜜の分量を増やそうか?」「はい」。
 錠剤にしていく2人。
 「温度と湿度は?」「27度、67%です」「クーラーを除湿にしようか?」「はい」。
 作業する2人。
 清治の背中。
 作業する2人。
 間食する2人。
 息が荒い清治。布団なしで眠る2人。清治はいびきをかき、ヒナ子は夢で粉を手でこねている。(中略)
 路上で吉住「いいおっさんが何泣いてるん。泣くな、アホ!」「落ちました」「これでええねん。はよ出せや」男性の財布から金を抜き取る吉住。女「悲しい男や」吉住、ヒナ子に「何を見とるんじゃ」。体操を始める井戸端会議のメンバー。「えらいことです」「まあまあ」「これは推測ですけど、小さなタッパーに入るように細切れに」「まあまあ」「私の想像ですけど、ドライアイスで凍らせて」「まあまあ、妄想かもしれん」「けど、みなさんの耳に入れておかなかって。これは殺人です」「まあまあ」(中略)
 箱に入れてあるドライアイス。
 ベランダにキタローを出した吉住「はよ、せんかい! うるさい、おら」。頭をこずく。ヒナ子「やめて! そんなことやめて!」「こいつが逆らうんや。ほっとけ」。ベランダで正座するキタロー。『ガッチャマン』の歌を歌うキタロー。歌い終わると金属バットを手にする。ヒナ子「きれいな歌やったで。ほんまに。きれいな歌やったで」。キタロー、バット落とす。
 ヒナ子「君子さんが相談して児童相談所が行ったら、ただの親子ゲンカやって帰されて」清治「あの子は強い。(中略)明日があることをちゃんと分かってる」。
 ヒナ子、ゴミ出し。「山下ヒナ子さんですか?」とマイクを持った男が現れる。「これは?」「ご主人が行方不明のようですが。もっぱらの噂で」「どんな?」「様子がおかしいと」「誰が?」「ご主人が行方不明なのに平然としておられると」。女性スタッフ「顔にはボカシを入れますから」。ヒナ子、笑いだす。(また明日へ続きます……)