昨日の続きです。(一部改変しました。)
・「さらに将来的には、人工衛星を使って宇宙空間で重力波を観測する計画もあります。(中略)それによって見えるのは、宇宙誕生直後の姿です。これまで天文学で使われてきた電磁波で見えるのは、宇宙誕生から40万年後の世界です。しかし重力波は(中略)一度発生すると減衰することはないため、宇宙誕生の《10億×10億×10億×10億》分の1秒後の姿が見えるだろうと考えられています」
・「(天体の)半径は、天体の質量によって決まります。たとえば地球の場合、シュワルツシルト半径は9ミリメートル。地球の質量を維持したまま、サイコロ程度のサイズまで圧縮すると、光が脱出できなくなるのです。太陽のシュワルツシルト半径は、3キロメートル。常識では想像もできにくいほどの密度の高さです」
・「(前略)ハッブルはこの天文台でもっと大きな発見をしました。遠くの銀河ほど、速い速度で地球から遠ざかっていることを明らかにしたのです。その速度は距離に比例しており、これは『ハッブルの法則』と名づけられました」
・「(マイケルソン=モーリーの実験は)光が『波』であることを決定づけました。さらにその数十年後には、マクスウェルの電磁気理論によって、光が『電磁波』の1種であることがわかります。20世紀を迎える前に、光の正体は完全に解き明かされた……かのように思われました」
・「光は『波だと思っていたら粒でもあった』のに対して、電子は『誰もが粒だと思っていたのに波の性質もあった』わけです」
・「経路和を計算するファインマンの手法は、コペンハーゲンの面々が築いた量子力学とは異なるアプローチによるものでしたが、その結果はまったく同じでした。要するに、粒子の運動は確率的にしか予測できず、実際に観測するまで定まらないのです」
・「ここまで、量子力学と特殊相対論を組み合わせたときに何が起こるのかを見てきました。ここでいちばん重要なのは、何もない真空から対生成によって粒子がボコボコと出てきてしまうために『粒子の数を決めておけない』ということです」
・「物理学の世界では、新しいフロンティアを切り開くたびに、従来の理論を統一する理論が築かれてきました。たとえばマクスウェルは電気現象と磁気現象を統一して電磁気学を確立し、そのマクスウェル理論とニュートン理論の矛盾を解消するためにアインシュタインの特殊相対論が登場しました。さらに、その特殊相対論と量子力学を融合させることで『場の量子論』が発展したという具合です」
・「標準模型では、素粒子を、物質のもととなるフェルミオンと、そのあいだの方を伝えるボソンに大別します。陽子や中性子の中にあるクォークはもちろん、電子やニュートリノも物質を構成するフェルミオンの一種です。これに対し、光子は、前述したとおり電磁気力という『力』を伝える粒子ですから、ボソンです。また、素粒子の質量の起源とされるヒッグス粒子もボソンの仲間に含めます。ヒッグス粒子は、素粒子の標準模型の中では唯一見つかっていない粒子ですが、LHCで発見されると期待されています」
・「現在の宇宙論では、ビッグバンの直前に、宇宙が『インフレーション』と呼ばれる急膨張をしていたという考えが主流です。この理論は、1981年、日本の佐藤勝彦とアメリカのアラン・グースがそれぞれ独立に提唱しました。それは体積が倍々ゲームで増えていく指数関数的膨張であり、10のマイナス36乗秒からマイナス33乗秒という短時間のうちに、宇宙が10の78乗倍にも膨れあがったと言われます。このインフレーションによって、それに続くビッグバンの初期条件が決まりました。なにしろ短時間でそれほどの膨張を起こしたのですから、その速さは光速を上回ります。すると、前にお話ししたとおり、光の届かない『宇宙の地平線』ができる。ブラックホールの事象の地平線と同じです。その近くで粒子が対生成すれば、やはり一方が負のエネルギーを持ったまま地平線の向こうに飲み込まれ、こちら側には正のエネルギーを持つ粒子が残されるでしょう」
・「物理学であれ化学であれ生物学であれ、自然科学の基礎には『因果律』があります。宇宙の現在の状態を知っていれば、自然法則によって未来に起こることはすべて原理的に予言できる。また過去の状態も、現在の状態から導き出すことができるという考え方です。これがベースとならなければ、科学は成り立ちません」
わかりやすい文体で、具体的な数字が出てくると面白かったのですが、内容的にはやはり難解でした。ただ物理学、天文学、そして科学一般に興味がある方は、おそらく楽しめる本だと思います。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)
・「さらに将来的には、人工衛星を使って宇宙空間で重力波を観測する計画もあります。(中略)それによって見えるのは、宇宙誕生直後の姿です。これまで天文学で使われてきた電磁波で見えるのは、宇宙誕生から40万年後の世界です。しかし重力波は(中略)一度発生すると減衰することはないため、宇宙誕生の《10億×10億×10億×10億》分の1秒後の姿が見えるだろうと考えられています」
・「(天体の)半径は、天体の質量によって決まります。たとえば地球の場合、シュワルツシルト半径は9ミリメートル。地球の質量を維持したまま、サイコロ程度のサイズまで圧縮すると、光が脱出できなくなるのです。太陽のシュワルツシルト半径は、3キロメートル。常識では想像もできにくいほどの密度の高さです」
・「(前略)ハッブルはこの天文台でもっと大きな発見をしました。遠くの銀河ほど、速い速度で地球から遠ざかっていることを明らかにしたのです。その速度は距離に比例しており、これは『ハッブルの法則』と名づけられました」
・「(マイケルソン=モーリーの実験は)光が『波』であることを決定づけました。さらにその数十年後には、マクスウェルの電磁気理論によって、光が『電磁波』の1種であることがわかります。20世紀を迎える前に、光の正体は完全に解き明かされた……かのように思われました」
・「光は『波だと思っていたら粒でもあった』のに対して、電子は『誰もが粒だと思っていたのに波の性質もあった』わけです」
・「経路和を計算するファインマンの手法は、コペンハーゲンの面々が築いた量子力学とは異なるアプローチによるものでしたが、その結果はまったく同じでした。要するに、粒子の運動は確率的にしか予測できず、実際に観測するまで定まらないのです」
・「ここまで、量子力学と特殊相対論を組み合わせたときに何が起こるのかを見てきました。ここでいちばん重要なのは、何もない真空から対生成によって粒子がボコボコと出てきてしまうために『粒子の数を決めておけない』ということです」
・「物理学の世界では、新しいフロンティアを切り開くたびに、従来の理論を統一する理論が築かれてきました。たとえばマクスウェルは電気現象と磁気現象を統一して電磁気学を確立し、そのマクスウェル理論とニュートン理論の矛盾を解消するためにアインシュタインの特殊相対論が登場しました。さらに、その特殊相対論と量子力学を融合させることで『場の量子論』が発展したという具合です」
・「標準模型では、素粒子を、物質のもととなるフェルミオンと、そのあいだの方を伝えるボソンに大別します。陽子や中性子の中にあるクォークはもちろん、電子やニュートリノも物質を構成するフェルミオンの一種です。これに対し、光子は、前述したとおり電磁気力という『力』を伝える粒子ですから、ボソンです。また、素粒子の質量の起源とされるヒッグス粒子もボソンの仲間に含めます。ヒッグス粒子は、素粒子の標準模型の中では唯一見つかっていない粒子ですが、LHCで発見されると期待されています」
・「現在の宇宙論では、ビッグバンの直前に、宇宙が『インフレーション』と呼ばれる急膨張をしていたという考えが主流です。この理論は、1981年、日本の佐藤勝彦とアメリカのアラン・グースがそれぞれ独立に提唱しました。それは体積が倍々ゲームで増えていく指数関数的膨張であり、10のマイナス36乗秒からマイナス33乗秒という短時間のうちに、宇宙が10の78乗倍にも膨れあがったと言われます。このインフレーションによって、それに続くビッグバンの初期条件が決まりました。なにしろ短時間でそれほどの膨張を起こしたのですから、その速さは光速を上回ります。すると、前にお話ししたとおり、光の届かない『宇宙の地平線』ができる。ブラックホールの事象の地平線と同じです。その近くで粒子が対生成すれば、やはり一方が負のエネルギーを持ったまま地平線の向こうに飲み込まれ、こちら側には正のエネルギーを持つ粒子が残されるでしょう」
・「物理学であれ化学であれ生物学であれ、自然科学の基礎には『因果律』があります。宇宙の現在の状態を知っていれば、自然法則によって未来に起こることはすべて原理的に予言できる。また過去の状態も、現在の状態から導き出すことができるという考え方です。これがベースとならなければ、科学は成り立ちません」
わかりやすい文体で、具体的な数字が出てくると面白かったのですが、内容的にはやはり難解でした。ただ物理学、天文学、そして科学一般に興味がある方は、おそらく楽しめる本だと思います。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)