俳優の大杉漣さんの訃報が今朝の朝日新聞・東京新聞に載っていました。大杉さんといえば、やはり北野武監督での演技が心に残っています。66歳という早すぎる死。残念でたまりません。改めてご冥福をお祈り申し上げます。
さて、恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんの「本音のコラム」の第18弾。
まず、2月14日に掲載された「帰郷小説」と題されたコラム。
「芥川賞を受賞した若竹千佐子さんの『おらおらでひとりいぐも』が話題である。やったぜ! と思っていたら、もう一冊私がイチオシだった上原正三さんの『キジムナーkids』が今度、坪田譲治文学賞を受賞した。
若竹さんは六十三歳、上原さんは八十歳でのデビュー。が、遅咲きのデビュー作という以外にもこの二作には大きな共通点がある。方言を効果的に用いている点だ。
『キジムナーkids』は敗戦直後の沖縄を舞台にした悪ガキたちの冒険譚(たん)だが、ちなみに書きだしは〈「アリアリ、アレーヌーヤガ?」/「アヤーサイ。アレー、アリヤイビール」〉。
ウチナーグチ(沖縄弁)、完全にお手上げである。一方『おらおらで…』は東北弁で〈あいやぁ、おらの頭このごろ、なんぼかおがしくなってきたんでねべか〉。
夏目漱石『三四郎』など、明治以来、日本文学の王道は『上京小説』だった。そして方言を抑圧してきた。川端康成『雪国』では、田舎者の駒子が東京山の手の奥さまみたいな言葉をしゃべるのだから笑わせる。
でも、いまはちがう。故郷の言葉を自由に操れるのは、作家として最強の強み。『上京小説』ならぬ『帰郷小説』と名づけたい。日本語の多様性を感じさせる作品。わかりにくいなんてクレームは放っときゃいいのだ。もっと出てこい、帰郷小説!」。
また、2月21日に掲載された「JOCの検閲」と題されたコラム。
「オリンピックは誰のもの? IOC(JOCを含む)とスポンサー企業の独占所有物。どうもそういうことらしい。
開催中の平昌五輪に際しても、日本全国の学校や企業で、所属する選手の壮行会や大型ビジョンでの応援会が自粛や非公開に追い込まれた。
なっ、なんで! JOCが脅したからだ。キーワードはアンブッシュ・マーケティング(不正便乗商法)。知的財産権と公式スポンサーの権利を守るため、スポンサー企業、自治体、競技団体以外の公開イベントはNGという。大会後の公開報告会や祝賀会もきっと自粛の嵐でしょうね。
便乗商法の規制は前からあったが、東京五輪を前に厳しくなり、二年後に向けた規制もはじまっている。規制の中身がまたエグイんだ。知的財産には五輪のマーク、エンブレム、大会名称までが含まれ、オリンピックという言葉もダメ、『東京2020』も『目指せ金メダル』も『がんばれ!ニッポン』もダメ。選手をサポートする会社や学校の広報活動もダメ。『応援したけりゃ金を出せ』ってことである。
JOCはIOCの方針によるとし、不正競争防止法、商標法、著作権法を論拠にするが、表現の自由を保障する憲法には抵触しないのか。IOCに過剰に忖度(そんたく)したJOCの規制のレベルは検閲に近い。こうして進む自由な市民活動の制限。戦時中かよ。」
そして、日曜日の東京新聞に掲載されている、山口二郎さんの「本音のコラム」の第4弾。
2月11日に掲載された「腐敗という疫病」という題のコラムを引用させていただくと、
「通常国会序盤の与野党論戦について、日本政治史の学者が他紙で、今の野党はスキャンダル追及に偏りすぎだが、安倍首相が感情的になるのも問題と書いていた。
この種の相対主義は問題の本題を覆い隠す。野党が疑惑の追及をやめられないのは、政権が情報公開を拒否し、誠実な答弁をしないからである。
権力者の腐敗は、国をむしばむ疫病である。英米の行動科学研究者が、二十三カ国、二千五百人余りの若者を対象とした実験を行った。二回サイコロを振り、一回目に出た数に比例して賞金がもらえる。しかし、六が出たら賞金はゼロで、二回目の数字は賞金に無関係である。結果はすべて自己申告であり、うそをついて高い賞金をもらうことも可能である。すると、独裁者が腐敗政治を継続している国の人々の申告値の平均は、西欧諸国の人々のそれよりも高いことが明らかとなった。
権力者による政治の私物化が当たり前となれば、国民の方もごまかし、インチキを当たり前と思うようになる。近代社会は人間が正直であることを前提に成り立っているので、一般人が不正直になれば、社会運営のコストは上昇する。
安倍政権の腐敗と野党の追及についてどっちもどっちなどと利いた風なことを言っている場合ではない。為政者の公私混同は社会を内側から腐らせる大罪である。」
今回も歯に衣着せぬ物言いで、読んでいてスカッとする文章でした。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)
さて、恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんの「本音のコラム」の第18弾。
まず、2月14日に掲載された「帰郷小説」と題されたコラム。
「芥川賞を受賞した若竹千佐子さんの『おらおらでひとりいぐも』が話題である。やったぜ! と思っていたら、もう一冊私がイチオシだった上原正三さんの『キジムナーkids』が今度、坪田譲治文学賞を受賞した。
若竹さんは六十三歳、上原さんは八十歳でのデビュー。が、遅咲きのデビュー作という以外にもこの二作には大きな共通点がある。方言を効果的に用いている点だ。
『キジムナーkids』は敗戦直後の沖縄を舞台にした悪ガキたちの冒険譚(たん)だが、ちなみに書きだしは〈「アリアリ、アレーヌーヤガ?」/「アヤーサイ。アレー、アリヤイビール」〉。
ウチナーグチ(沖縄弁)、完全にお手上げである。一方『おらおらで…』は東北弁で〈あいやぁ、おらの頭このごろ、なんぼかおがしくなってきたんでねべか〉。
夏目漱石『三四郎』など、明治以来、日本文学の王道は『上京小説』だった。そして方言を抑圧してきた。川端康成『雪国』では、田舎者の駒子が東京山の手の奥さまみたいな言葉をしゃべるのだから笑わせる。
でも、いまはちがう。故郷の言葉を自由に操れるのは、作家として最強の強み。『上京小説』ならぬ『帰郷小説』と名づけたい。日本語の多様性を感じさせる作品。わかりにくいなんてクレームは放っときゃいいのだ。もっと出てこい、帰郷小説!」。
また、2月21日に掲載された「JOCの検閲」と題されたコラム。
「オリンピックは誰のもの? IOC(JOCを含む)とスポンサー企業の独占所有物。どうもそういうことらしい。
開催中の平昌五輪に際しても、日本全国の学校や企業で、所属する選手の壮行会や大型ビジョンでの応援会が自粛や非公開に追い込まれた。
なっ、なんで! JOCが脅したからだ。キーワードはアンブッシュ・マーケティング(不正便乗商法)。知的財産権と公式スポンサーの権利を守るため、スポンサー企業、自治体、競技団体以外の公開イベントはNGという。大会後の公開報告会や祝賀会もきっと自粛の嵐でしょうね。
便乗商法の規制は前からあったが、東京五輪を前に厳しくなり、二年後に向けた規制もはじまっている。規制の中身がまたエグイんだ。知的財産には五輪のマーク、エンブレム、大会名称までが含まれ、オリンピックという言葉もダメ、『東京2020』も『目指せ金メダル』も『がんばれ!ニッポン』もダメ。選手をサポートする会社や学校の広報活動もダメ。『応援したけりゃ金を出せ』ってことである。
JOCはIOCの方針によるとし、不正競争防止法、商標法、著作権法を論拠にするが、表現の自由を保障する憲法には抵触しないのか。IOCに過剰に忖度(そんたく)したJOCの規制のレベルは検閲に近い。こうして進む自由な市民活動の制限。戦時中かよ。」
そして、日曜日の東京新聞に掲載されている、山口二郎さんの「本音のコラム」の第4弾。
2月11日に掲載された「腐敗という疫病」という題のコラムを引用させていただくと、
「通常国会序盤の与野党論戦について、日本政治史の学者が他紙で、今の野党はスキャンダル追及に偏りすぎだが、安倍首相が感情的になるのも問題と書いていた。
この種の相対主義は問題の本題を覆い隠す。野党が疑惑の追及をやめられないのは、政権が情報公開を拒否し、誠実な答弁をしないからである。
権力者の腐敗は、国をむしばむ疫病である。英米の行動科学研究者が、二十三カ国、二千五百人余りの若者を対象とした実験を行った。二回サイコロを振り、一回目に出た数に比例して賞金がもらえる。しかし、六が出たら賞金はゼロで、二回目の数字は賞金に無関係である。結果はすべて自己申告であり、うそをついて高い賞金をもらうことも可能である。すると、独裁者が腐敗政治を継続している国の人々の申告値の平均は、西欧諸国の人々のそれよりも高いことが明らかとなった。
権力者による政治の私物化が当たり前となれば、国民の方もごまかし、インチキを当たり前と思うようになる。近代社会は人間が正直であることを前提に成り立っているので、一般人が不正直になれば、社会運営のコストは上昇する。
安倍政権の腐敗と野党の追及についてどっちもどっちなどと利いた風なことを言っている場合ではない。為政者の公私混同は社会を内側から腐らせる大罪である。」
今回も歯に衣着せぬ物言いで、読んでいてスカッとする文章でした。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)