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阪本順治監督『団地』その6

2018-02-28 10:27:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 テレビ「ご主人が行方不明なのに平然としておられると」。井戸端会議のメンバー「これ疑いそのままやん」「決めつけたも同然でひどいわ」「団地の評判が下がる」正三「ったく」君子「あんたが情けないからよ。あんたが調べて何もなかったら全て収まるんよ」。(中略)
 正三「自分が行きまーすって志願者いないのかよ」「しっかりね」「じゃあ行ってくるよ」ヒナ子「あんた行徳さんが」「そうか、来はるか」「報道はやっぱりえげつない。真城さんに連絡しとくで」「終わったからな」「終わった。終わった。僕のこと、しつこう聞かれるで」「任しといて」。訪ねてきた正三「これは漢方薬の臭いかね」「はい、生薬の。主人、2年やったんです。ナオヤがあないなって私がおかしくなり、そうなって、もう頼むから廃業してって言ったんです。悪いことしました。生きがいでしたから。主人にとっては。そやから生薬捨てきれずに全部ここに移したんです」「でも清治君は今?」「雲南省かと」「えっ、中国の?」「漢方の道を極めたいと」「偉い! 久しぶりに偉い!」。
 正三「ということで、清治君は雲南省」「アホな」「相手の言うこと鵜呑みにして」「鵜呑みじゃないよ。あんた。相手の表情に動揺がないかしっかり監視した上でだよ」「ヒナ子さん、いつ聞いても主人は裏の林ですって。雲南省のことなんか一言も。あれ、嘘やったん?」「雲南省の林のことじゃないの?」吉住「何でやねん? 臭いは?」「死臭はせえかったんですか?」「俺ベーヤンだしさ、その漢方の臭いがきつくて」「それともドライアイスで凍らせたから?」「冷蔵庫も臭い臭います」「主婦だけやな、それ分かんの」「主婦の話じゃないだろ? 雲南省の話をしてんだよ」「雲南省?」「凍らせたんは細菌や。臭いがきつなって。あわてて凍らして。凍らした方が切りやすいしな。絶対まだ臭うはずや。せや。換気扇にまだ臭い、残っとんとちゃうか?」「あんた、もういっぺん行ってきて。臭いもしっかり嗅いでね」。
 正三「済まんねえ。何度も。いやあ夕日がきれいだろうねえ」。換気扇の当たりをクンクンする正三。「夕日はあっちですけど。そんなに皆さんは私を人殺しにしたいんですか?」「雲南省にいる証拠ないかな?」「待ってください。国際電話します。あっ、もしもしあんた、いまそちら何時?あっ、そう。明け方にご免やでぇ。ほな、寝て。ほれ」「ほれって、一人芝居に見えたけど」「疑い深い」「突き上げ食らったんだ。このままだとまた突き上げ食らっちゃうんだよ」「あっ、もしもし、何べんもごめんやでぇ。何か大きな声で言うてぇ」。ヒナ子、携帯を正三の方にかざす。「コケコッコー、ビビンバ食べたい」。「ほら、今度こそ」。「こっちから声がしたような。それに今の、韓国料理だし。電話通じるの早すぎない? 怖い顔してる」「もうどうでもよろしいわ。人殺しでも何でも」。
 正三「って、捨て台詞みたいに」「ホンマにヒナ子さんがそう言うたの?」「開き直ったんよ。これ以上逃げきれないと思って」「まあそう決めつけるのはまだ早いだろ」吉住「何悠長なことを。決まりや。皆気をつけた方がええで」正三「俺はヒナ子さんが人間を殺すような人には見えない!」「見える」「見える」「見える」「見える」「君子、何か言ってやれよ」「見える」「ゲフッ」「あたしがアホやった」「アホやったって」「あとは遺体をどこに隠してあるかよ」「お前までよせ!」「聞いたことあんのよ。うちも時々しょうもないこと言ってケンカしますって」「うちもってどういうことだよ。そんでお前、テレビ見ながら可哀相とか言ってたろ」「だから裏切られたんよ。あのバカ笑いは変よ」「そやねん。まったくそやねん。殺人犯はカメラ向けられるとごまかし笑いするんや。旦那がそう言ってた」「間違いない。あんた部屋行ってあちこち見たの?」「トイレ行きたくなったから。ちゃんとついでにトイレも見たよ!」「あのね、トイレに遺体隠したら、トイレ行かれへんでしょ。トイレ行かれへんだったら、生活できないでしょ」「妄想はよせ。ありえない。そんなことありえない」君子「ありえないことがありえるのが団地でしょ!」。ヒナ子、現れ「今晩人を泊めます。ちょっとうるさいかもしれませんけど、一晩だけなんで。警察呼ぶなら呼んでください。ついでにマスコミも」。ヒナ子、去る。「これでホンマに決まりや」。正三「もしもし、警察ですか?」。
 真城と宅急便と赤ん坊を抱いた女性、山下宅へ。「あのバッグは何や? ペシャンコやないか?」「バラバラにしたって噂や。どっかに運び出すんや」「これ何の組織や? 宗教か?」。
 警官「来ました」。(明日へ続きます……)