gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

川上未映子責任編集『早稲田文学増刊 女性号』

2018-02-16 06:37:00 | ノンジャンル
 川上さんの責任編集で’17年に刊行された『早稲田文学増刊 女性号』。昨日は、その巻頭言を転載させていただきましたが、その他にも触れておきたい文章があるので、この場を借りて紹介させていただきたいと思います。まずはこの本に収録された川上さんの作品『試す』。

「本を試す、つめを試す、それから水曜日をうんと試して、まぶたのうえのくせ毛も試す。ペンを試して鏡をためす。約束を試して全音符をしつこく試して、牛乳の薄い膜まで何度も試す。帯を試して、帽子を試す。取っ手を試す。襟足とアキレス腱と誤字脱字と十二歳の夏を試して、書き置きを試してドアを試す。腰を試して抱きしめを試して唇からでてくる言葉を試す、すごく試す、写真を試して嘘を試して、それからまた抱きしめを試して、ふたりきりで泣くのを試す。よろこびを試して虹を試して銀行を試して薄暮を試してハンガー、まくりあげたそで、シーツの冷たくなった場所を試して遡ることを試してみる。わたしの知らないあなたのこれまでの時間の縫いかたをぜんぶ試して、匂いを試す。やさしかった昼寝を試してゆるしを試して笑顔を試す、それからまた抱きしめを試して接吻を試す、ああ、接吻を試す。五年のあいだ試しつづけて一番最後に別れを試す。」

 この詩の魅力に圧倒されました。

 この詩以外にも、川上さんが直接携わった文章としては、『審問』と名付けられた詩、樋口一葉の『大つごもり』の現代語訳、桐野夏生さんとの対談『女性と地獄』があり、それ以外にも斎藤美奈子さん司会による対談「小澤英実+倉本さおり+トミヤマユキコ『われわれの読書、そのふたつの可能性~批評と書評~』」など、詩、エッセイ、短編・中編小説、写真集などが59篇も収録されています。その中で私が名前を知っていた方は、津村記久子さん、伊藤比呂美さん、中島みゆきさん、ヴァージニア・ウルフさんだけでした。タイトルを見ただけで魅力的なものもたくさんあり(例えば『フェミニズムと女性に近づくかもしれない23冊』といったリスト)、税抜きの定価2200円は十分もとが取れる値段だと思いました。調べてみたところ、アマゾンでは新品も中古品も買えるので、最寄りの本屋さんでも注文すれば取り寄せてくれるかもしれません。川上さんのファンの方に限らず、文学一般、写真集が好きな方にもオススメできる本です。お金に余裕のある方、是非手に取ってみてください。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)