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阪本順治監督『団地』その4

2018-02-26 07:22:00 | ノンジャンル
 『ヒッチコック劇場』のうちの1編『兇器』の原作であるロアルド・ダールの『おとなしい兇器』を田村隆一さんの訳で読みました。刑事の妻が冷凍の鶏肉の塊を使って夫を撲殺し、殺人現場の自宅に集まった刑事たちに、その鶏肉をふるまうというブラックな話で、大きい活字で25ページほどの気のきいた短編でした。

 さて、また昨日の続きです。
 台所の床下の収納から生薬を出し、替わりに自分が入る清治。「何するつもり?」「死んだことにしてくれ」「死んだことって死にたいんですか?」「言うても分からんからええ」「平凡な私が分からんということは、世間の誰も分からんということでっせ」「どうせ僕は人望がないんや」「うわー、おいしそうなトンカツ。スーパーで残り物のトンカツもろうてきたんや。(中略)」「トンカツで僕がなびくと思うんか? アホか!」「生まれて初めてアホ言いましたね。許しませんで」「そりゃ悪かったな。謝るけど、この通りや」「この通りって見えへん」「やろ? 僕は団地から消えるんや」「分かりました。どうぞ」「誰か来てもおらん言うといてくれ」「一言いいか?」「何や?」「だ~れもおらんのに隠れてもしゃあない思いまっせ」「そやな」。清治、収納から出てくる。「トイレ行きたかったんや。あれっ、トンカツは?」。ブザー。清治、急いで収納へ。訪ねてきた君子にヒナ子「あっ、どうしたんですか?」「ちょっとええ?」「今日は早番だったので。散らかってますけど」「(仏壇見て)息子さんの?」「あっ、はい」「先に拝ませてもらっていい?」。お参りする君子。
 泣く君子。「そうなんよ。除草剤撒いたらね。旦那の声が聞こえた。それでシートの上見たら、あの佐伯とかいう女とケンカしてんの」「どんなことで?」「決まってるやん。俺はもうすぐ離婚するからって。そんなこと言うてあの女をなだめてんのよ。皆に見られててもう私限界」「ああ、もう限界」「何、今の?」「さあ」「何か聞こえたけど」「君子さん、大分疲れてはるんやね。さあ、一部始終全部洗いざらい最初から言うてください。そもそも佐伯さんのことの始まりって?」。清治、股間を押さえて「おーい、そこから聞くんかい」「(中略)みんな何噂されるか分からんでしょ」。
 玄関で「ほんま、ありがとう」「またいつでも来てください」「あっ、清治さんによろしく」。君子、帰ってゆく。収納から出て来た清治に「我慢せんで声出したらよかったのに」「我慢しすぎると~が小便臭い。~体の神秘や」「何があったかしらんけど何いじけてますの?」「心配するな。僕はお前と漢方薬あったら、それでええんや。僕かて行きたいよ。ナオヤのとこへ」。
 井戸端会議。君子「それでうち言うてやったんよ。うちの面倒見てくれる人やったらどうぞどうぞ、持って帰ってくださいって。ほんで旦那の前立腺の薬、玄関先に投げつけて帰ってきてやったの」「思い切ったことやりましたねんなあ」「それなのにねえ、にやにや笑ってるだけなんよ。あの佐伯キョウ子」「恐ろしい女ですね」「もうぞーっとしたわ」「さぶいぼ立ちます」「そやろ?」「ほんまに」「ほんまに」「そうやね、もう」。
 ヒナ子の職場。「山下さん、何べん言うたら分かってくれんの? バーコードついてる方を読み取り機につけな。コードの意味ないやろ。あれただの線ちゃうねん。それと客とペチャクチャしゃべんな。ここ喫茶店とちゃうねん。やめてもろてええんやで」。主任去る。「ピッ、ピッ、細かいのお持ちじゃないですか? あっ、ありがとうございます。あらー、今日スキヤキですか? 私と息子も大好きでした。ピッ、ピッ、細かいのお持ちじゃないですか? 細かいのお持ちじゃないですか、あっ、ありがとうございます。あらー、今日おでんですか? 私と息子も大好きでした」。微笑みながらヒナ子去る。
 ゴミの収集場で井戸端会議。「めちゃごめんな。主婦は助け合わにゃ」「山下さん、いなくなって3ヶ月」「そやけど遺体の隠し場所ないのでは? 臭いもするし」「切り刻んだんじゃないでしょうか。で~で梱包して」「あなた怖いわね」「既に捨てた」「捨てた?」「えっ、ここに?」君子「ゴミは私が調べてるから、ありえへん」「そんなこと、あの、中身まで見るの、やめてください」君子「妄想で変な噂出さんといてよ。ヒナ子さんがそんなことする訳ない」「ほな自治会長さんが動いてくれな」「もう警察呼ぶべきです」「やめてよ、そんな物騒な」。
 真城、ブザー押す。ヒナ子「あー、真城さん」「ご無沙汰です」「お薬、おととい宅配便で」「はい、受け取りました。ありがとうございます。今少しいいですか?」「あっ、どうぞ」床をドンドン。「あんた、真城さんや。出てきなはれ」真城「どうしてこんなところに?」ヒナ子「前世ゴキブリなんで」清治「いらっしゃい」。(また明日へ続きます……)