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阪本順治監督『団地』その1

2018-02-23 05:28:00 | ノンジャンル
 WOWOWプライムで、阪本順治監督・脚本の’16年作品『団地』を見ました。
 団地。ラジオから「浜村淳の『人生はサバンナだ』」。ベランダとの間のサッシを開けて、掃除を始めるヒナ子(藤山直美)。空き地には棒を拾って持つ男の子。ものが割れる音。ヒナ子が下を見ると、老婦人が落とした植木鉢に入っていた土を、スーツを来た青年が、広げた紙の上に移している。青年、老婦人に「大丈夫ですよ」。ヒナ子、部屋の奥に向かって「あんた、真城(しんじょう)さんや」「真城さん? 何で?」「知らんけど」。青年「花がケガなくてよかったですね」老婦人「ありがとう」と言って去る。ヒナ子「真城さん!」真城、見上げて「あ、五分刈りです」「ご無沙汰です」「お願いがあります」「お願いって?」「そちら802号室ですよね」「302号室です。どう見ても8階に見えんでしょ?」「802の8って8階の意味なんですか? 初めて知りました」(中略)
 ヒナ子宅。ヒナ子「よくここが」真城「漢方薬局の連合会に訊きまして。これ、お米です。(ヒナ子の夫、清治(岸部一徳)に)あっ、五分刈りです」「ご無沙汰です。何年もごひいきにしてもろうたのに、突然ですいませんでしたな。それで?」「困ってるんです。山下さんの漢方薬がないと」清治「そう言ってもろうて有難いんですけど」ヒナ子「廃業は廃業なんで」「薬草は処分されたんですか?」「生薬? いや、まあ捨てきれず」「ではいつもの薬を。宅配便でも何でも送っていただけませんか?もちろん着払いで。その業者も全てこちらで手配します」「そやけど」「ありがとうございます」「強引な人やな」「どうして廃業されたんですか? あれだけの老舗を」ヒナ子「いろいろありまして、辛いことが」。真城、いきなり仰向けに倒れる。頭を抱える清治。「貧血、貧血、枕持って来て! 真城さん、大丈夫か?」。頭に枕を当てて、両手両足を伸ばしてやる2人。
 薬を煎じる2人。
 頭を起こして、薬を飲ませる2人。真城はむっくりと起き上がる。清治「そんなに効くんか? 僕の薬?」「はい、効果きしめんです」「てきめんです」「勉強になりました。特に日本語は難しい。本当です」。
 真城、玄関で「それじゃ、かしこまりました」。ドアを閉める際、手をドアに挟む。「挟みました」。手を抜いてドアを閉める真城。(中略)
 タイトルロール。
 山下宅の玄関ドア。ブザーを何回も鳴らし、郵便受けから中をうかがい、我慢できなくてドアを叩き、「宅配便でーす」と叫ぶ青年。ヒナ子「はい、また頼みます」青年「あっ、はい」「次のです(ヒナ子、新しい箱を渡し)じゃ」「申し訳ないんですが」「あっ、トイレ?」「ちょっとお腹の具合が」「あんたいつもトイレうちで貸してって何でなん?」「今のところ持病としか。すみません」。トイレに駆け込む青年。清治「またか」「持病やて。ダムの決壊みたいな音してるわ」「神経質には見えんけどなあ。社会全体がノイローゼみたいなもんやから」。トイレから出てきた青年「すみませんでした」ヒナ子「あんた、何か悩みでもあんの? 特にうちに立ち寄ると」「3分以上立ってるともたないんです」「意味が分からんな」「もうすぐ分かるかも」清治「何でもうすぐ分かると分かるんや」「もうすぐじゃないかも知れん」「どっち? とりあえず下痢止めあげとこう」ヒナ子「あんたまた流してないでしょ?」「あっ、すいません」。
 外出する清治。ヒナ子も外出する。「山下」の表札。
 行徳君子(大楠道代)、郵便ポストの前でヒナ子に会い、「ヒナ子さん、パート?」「遅番なんです」「引っ越して半年やけど、もう慣れた?」「静かで住みやすいです」君子の夫、行徳正三(石橋蓮司)「空き室ばかり増えて。ごく近くにもう一つ公営団地できたもんだから」「この人東京人やけど下町育ちやから」「転勤族だったからあっちこっち行ったけど、東京人と言っただけで肩身が狭くなったのが、受け入れてもらえたのは大阪が初めてだ。うどんがうまけりゃいいってもんでもないだろ。てやんでえ、気風だけは誰にも負けねえって突っ張ってたら、いつのまにか自治会長になっちゃって」ヒナ子「私は何人でも大丈夫です。火星人でも」君子「新しい人が入ってくるたんびに噂する人がいるけど気にせんでもいいから」「私は何て言われてます?」昌三「ネクラ。俺は嘘は言えない」君子「生真面目って意味だから気にしないで」「気にしてません。周りの人に迷惑をかけるのだけは嫌なんで、こちらこそ何かあったら言ってください」正三「偉い。久しぶりに偉い。苦情ばかり言う奴が多くてね」。ヒナ子「お先です」行徳夫婦「いってらっしゃい」。君子「ねえ、あんた俺はうそをつかないって言ってたよね、さっき」「え?」「ほんなら答えてよ。シートンの佐伯キョウ子さんと何があったの?」「誰?それ」。(明日へ続きます……)

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P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)

斎藤美奈子さんのコラム・その18 & 山口二郎さんのコラム・その4

2018-02-22 04:54:00 | ノンジャンル
 俳優の大杉漣さんの訃報が今朝の朝日新聞・東京新聞に載っていました。大杉さんといえば、やはり北野武監督での演技が心に残っています。66歳という早すぎる死。残念でたまりません。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんの「本音のコラム」の第18弾。 
 まず、2月14日に掲載された「帰郷小説」と題されたコラム。
「芥川賞を受賞した若竹千佐子さんの『おらおらでひとりいぐも』が話題である。やったぜ! と思っていたら、もう一冊私がイチオシだった上原正三さんの『キジムナーkids』が今度、坪田譲治文学賞を受賞した。
 若竹さんは六十三歳、上原さんは八十歳でのデビュー。が、遅咲きのデビュー作という以外にもこの二作には大きな共通点がある。方言を効果的に用いている点だ。
 『キジムナーkids』は敗戦直後の沖縄を舞台にした悪ガキたちの冒険譚(たん)だが、ちなみに書きだしは〈「アリアリ、アレーヌーヤガ?」/「アヤーサイ。アレー、アリヤイビール」〉。
 ウチナーグチ(沖縄弁)、完全にお手上げである。一方『おらおらで…』は東北弁で〈あいやぁ、おらの頭このごろ、なんぼかおがしくなってきたんでねべか〉。
 夏目漱石『三四郎』など、明治以来、日本文学の王道は『上京小説』だった。そして方言を抑圧してきた。川端康成『雪国』では、田舎者の駒子が東京山の手の奥さまみたいな言葉をしゃべるのだから笑わせる。
 でも、いまはちがう。故郷の言葉を自由に操れるのは、作家として最強の強み。『上京小説』ならぬ『帰郷小説』と名づけたい。日本語の多様性を感じさせる作品。わかりにくいなんてクレームは放っときゃいいのだ。もっと出てこい、帰郷小説!」。

 また、2月21日に掲載された「JOCの検閲」と題されたコラム。
「オリンピックは誰のもの? IOC(JOCを含む)とスポンサー企業の独占所有物。どうもそういうことらしい。
 開催中の平昌五輪に際しても、日本全国の学校や企業で、所属する選手の壮行会や大型ビジョンでの応援会が自粛や非公開に追い込まれた。
 なっ、なんで! JOCが脅したからだ。キーワードはアンブッシュ・マーケティング(不正便乗商法)。知的財産権と公式スポンサーの権利を守るため、スポンサー企業、自治体、競技団体以外の公開イベントはNGという。大会後の公開報告会や祝賀会もきっと自粛の嵐でしょうね。
 便乗商法の規制は前からあったが、東京五輪を前に厳しくなり、二年後に向けた規制もはじまっている。規制の中身がまたエグイんだ。知的財産には五輪のマーク、エンブレム、大会名称までが含まれ、オリンピックという言葉もダメ、『東京2020』も『目指せ金メダル』も『がんばれ!ニッポン』もダメ。選手をサポートする会社や学校の広報活動もダメ。『応援したけりゃ金を出せ』ってことである。
 JOCはIOCの方針によるとし、不正競争防止法、商標法、著作権法を論拠にするが、表現の自由を保障する憲法には抵触しないのか。IOCに過剰に忖度(そんたく)したJOCの規制のレベルは検閲に近い。こうして進む自由な市民活動の制限。戦時中かよ。」

 そして、日曜日の東京新聞に掲載されている、山口二郎さんの「本音のコラム」の第4弾。
 2月11日に掲載された「腐敗という疫病」という題のコラムを引用させていただくと、
「通常国会序盤の与野党論戦について、日本政治史の学者が他紙で、今の野党はスキャンダル追及に偏りすぎだが、安倍首相が感情的になるのも問題と書いていた。
 この種の相対主義は問題の本題を覆い隠す。野党が疑惑の追及をやめられないのは、政権が情報公開を拒否し、誠実な答弁をしないからである。
 権力者の腐敗は、国をむしばむ疫病である。英米の行動科学研究者が、二十三カ国、二千五百人余りの若者を対象とした実験を行った。二回サイコロを振り、一回目に出た数に比例して賞金がもらえる。しかし、六が出たら賞金はゼロで、二回目の数字は賞金に無関係である。結果はすべて自己申告であり、うそをついて高い賞金をもらうことも可能である。すると、独裁者が腐敗政治を継続している国の人々の申告値の平均は、西欧諸国の人々のそれよりも高いことが明らかとなった。
 権力者による政治の私物化が当たり前となれば、国民の方もごまかし、インチキを当たり前と思うようになる。近代社会は人間が正直であることを前提に成り立っているので、一般人が不正直になれば、社会運営のコストは上昇する。
 安倍政権の腐敗と野党の追及についてどっちもどっちなどと利いた風なことを言っている場合ではない。為政者の公私混同は社会を内側から腐らせる大罪である。」

 今回も歯に衣着せぬ物言いで、読んでいてスカッとする文章でした。

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高橋秀実『損したくないニッポン人』その4

2018-02-21 05:02:00 | ノンジャンル
 ロン・ハワード編集の’16年作品『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK ━ The Touring Years』をWOWOWシネマで見ました。ビートルズとしての活動の全貌を、当時のフィルムや様々な人へのインタビューで綴ったもので、ポールとジョンが二人とも母を幼いころに亡くしたこと、ビートルズが公民権運動と行動をともにし、自分達のコンサートへの人種別のベンチ指定を解除させたことなど、初めて知ったことがありました。

 さて、また昨日の続きです。

・「そして昭和に入り、イギリスが金本位制度を離脱したことを受けて、昭和6(1931)年に日本も金貨との兌換を停止し、やがて今日の『銀行券は銀行券でしかない』という管理通貨制度に移行したというわけである」

・「『日本人はおカネにうぶなんです』
━━うぶなんですか?
『だって、家計に貨幣が入ってきたのは1960年代以降ですよ。1960年まで日本は80%以上が農民だったんですから。まだ貨幣を扱いなれていないんです』
縄文時代まで考慮に入れれば、日本人が鋳造貨幣を使い始めたのもつい最近のことといえる」

・「『でも、うぶだから貨幣の本質をそのまま感じやすい。貨幣本来の特徴に忠実なんです。結婚式の御祝儀にケガレのないピン札を用意したりしますからね』
日本人にとって貨幣は経済的機能と宗教的機能が未分化の状態らしい」

・「『(富山では)間に合わんやつは、みんな売薬に行きました』
30年前に売薬行商に出かけたという寺田善治さん(78歳)が語った。当時は3軒に1軒が売薬にかかわっていたらしい」

・「親鸞の教えは『他力本願』、つまり南無阿弥陀仏と唱えて阿弥陀如来に身を任せよということである」

・「横浜中華街は横浜開港(安政6〈1859〉年)とともに生まれた中国人の町だ。当時、欧米の商社が次々と横浜に進出したのだが、言葉が通じず、その仲介役(『買弁(ばいべん)』と呼ばれる)として中国人たちが活躍した。漢字を使って日本人とコミュニケーションを図ったのだ。やがて彼らは当地に住み着き、大工、塗装業、印刷、家具製作、クリーニング業など様々な商売を展開する。今日のような一大レストラン街に生まれ変わったのは第二次世界大戦後のこと。横浜中華街発展会協同組合理事長の林兼正さんによると、『まず、戦勝国であることを武器に、食料のない時代に日本人相手に料理を売った』(中略)ことがその始まりらしい。米軍からの横流しや密輸品などを扱っていたので、『もちろん、違反であるが、当時の日本の警察は、戦勝国の人々がすることには目をつぶるしかなかった』そうで、敗戦国の弱みにつけこむように日本人向けの中華料理を次々と考案し、やがて横浜の顔というべき観光名所に成長を遂げたのである」

・「━━それで、損の裏卦はどうなるんでしょうか?
 すると教授は『損』をひっくり返した。現れたのは『咸(かん)(中略)』。『咸』とは『感』のことですなわち感じること。彼によれば『相手への共感』。そして共感から生まれる『なさねばならぬという心意気』を意味する。『易経』には『男は女に下る』とあり、女性上位にすれば『天地感じて万物化生し、聖人人心を感ぜしめて、天下和平なり』と念を押す卦なのである」

・「『女性が離婚を申し立てたら、もうダメです』
 はっきりと断言したのは東京弁護士会所属の荘司雅彦さんだ。彼はこれまで数百件の離婚訴訟を手がけてきたが、女性が申し立てを取り下げた例はわずか1件だという。その女性は結婚生活に戻ったそうだが、2年後に離婚したらしい」

・「いつの間にこうなってしまったのだろおうか。統計を辿ってみると、明治時代は今より離婚が盛んだったらしい」

・「『今日は何年の何月何日?』
 そう訊かれて、すぐに答えられる人はお金が貯まるのだという。そうでない人はお金が貯まらないということで、私などはその典型である」

・「経済学というと公的なものと思われがちですが、このたびは私事としての経済学を提唱したつもりです。『あなたこそ、この「わからなさ」がわかっていない』と切り返して情報の対称性を確保する所存です。読者の皆様には「損したくない」「貧乏くさい」を追究したひとつの思考実験だと思っていただければ幸いです」

 あっという間に読める本でした。

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高橋秀実『損したくないニッポン人』その3

2018-02-20 05:13:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

・「━━ヘッジとは、具体的に何をどうするのでしょうか?
 恥ずかしながらたずねると、彼はおもむろにメモを取り出し、線グラフを描いた。ゼロからいったん上に上がり、そこから下がってゼロを超えてマイナスになり、再び上昇してゼロに戻る、という曲線だ。
『例えば、こういう値動きをする商品があったとします。これを買う場合には、これと同じ値動きをする商品を売ればいいんです。つまり反対のことをしてリスクを打ち消す。ヘッジとは「相殺する」と考えていいと思います』」

・「外資系金融機関の宮本さんによれば、日本でデリバティブを理解できる人は実はほとんどいないらしい。アメリカなどでは現役の金融マンが講師として大学で教え、教え子が金融機関で活躍するという流れができているが、日本にはない。日本の銀行員などはアメリカの大学に留学してMBAを取得しても帰国後は国内の支店長になったりするので、デリバティブの知識もほとんど更新されないそうなのである」

・「実際、(日本銀行の)本館内には厳粛な空気が漂っていた。赤絨毯が敷かれた広い廊下。見上げていると目が回りそうな高い天井。イギリスから取り寄せたという階段は手すりに細工が施され、段差も低い。見学コースはまるで神社の社殿の中を歩くようで、地下に降りていくと、厚さ90cm、重さ15tの扉を持つ『地下金庫』が目前に現われた。
 御神体ということか。
 私はしばし呆然とした。キラキラと輝く扉が鏡に見えたのである」

・「「日本銀行は政府から独立した認可法人(資本金1億円のうち政府が55%を出資)。同行が国立印刷局に日本銀行券の印刷・製造を発注している。平成24(2012)年度には1万円券を10億5000万枚、5000円券は2億3000万枚、1000円券は18億7000万枚、合計31億5000万枚を発注したそうである」

・「世の中に出回っている券は81兆円分(2009年末現在)」

・「券の平均寿命は1万円券で4~5年、5000円券と1000円券は1~2年ほどらしい。寿命は意外に短く、だから毎年製造しなければならないのである」

・「券の製造原価は1枚当たり16円~18円ほどとのこと。製造枚数によってコストは違ってくるそうだが、いずれにしても20円には満たないそうだ」

・「銀行券は『無意味な権利』らしいのだ。かつて日本銀行券は『日本銀行兌換券(だかんけん)』と呼ばれていた。券を窓口に持っていけば、金貨に換えてくれていたのだが、昭和17(1942)年にその制度は廃止された。それまでは金貨との引換券だったものが、ただの券になってしまったのである」

・「(前略)参考までに日本銀行券の強制通用力は『無制限』だが、硬貨の場合は『額面価格の二十倍までを限り』(中略)とされている。つまりお小銭で払う場合、同じ種類の硬貨は20枚を超えると債権者が拒否できるというわけだ」

・「7世紀後半に日本で最初に鋳造されたという『富本銭(ふほんせん)』、708年に中国のマネをして発行された『和同開珎(わどうかいちん)』、その後、朝廷は(中略)いわゆる『皇朝十二銭』と呼ばれる貨幣を次々と発行したという。(中略)
『ご覧いただければわかると思いますが、皇朝十二銭は時代が進むとどんどんみすぼらしくなっていきます。やがて朝廷は貨幣をつくるのをやめてしまいました。そして日本は物々交換に逆戻りしました。以後江戸時代までの500~600年間、日本は政府が貨幣をつくらない時代に入っていきます』」

・「しかし平安時代の末期になると、農業生産が拡大し、手工業(織物・鍛冶等)が発達して交換需要が高まる。そこで盛んに使われるようになったのが中国から流入した『宋銭』らしい」

・「幕府は貨幣発行益を守るために貨幣を悪鋳、濫発してインフレを繰り返した」

・「明治政府になっても、幕府の金貨・銀貨や藩札(藩が発行していた紙幣)がそのまま使われ、政府も『貨幣司二分金』などと称する新たな貨幣やそれと交換できる紙幣『太政官札』を発行したために、それらの貨幣の交換比率が複雑になり、さらにはニセガネが横行して混乱を極めたらしい。そこで政府は明治4(1871)年に金1.5g=1円とする新貨条例を制定。竜の絵柄が刻印された『20円金貨』などを発行した。これらはすでに発行されていた紙幣(太政官札)と交換できるはずだったのだが、政府は金銀が不足しており、紙幣を回収するためにドイツに印刷を委託して新紙幣の『明治通宝札』を発行。しかし(中略)偽造も多発した。そしてアメリカのナショナルバンクにならって国立銀行を設立し、国立銀行がアメリカの印刷会社に委託してナショナルバンクそっくりの紙幣を発行する。
 その一方、政府自体も明治14(1881)年に『神功皇后札』を発行。(中略)これらも濫発によるインフレを免れず、貨幣の価値を安定させるために明治15(1882)年に日本銀行設立。3年後から1円銀貨と交換できる日本銀行兌換銀券『大黒札』などが発行された」(また明日へ続きます……)

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高橋秀実『損したくないニッポン人』その2

2018-02-19 04:36:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

・「『お客さんは包装紙でモノを買っていたわけです。中身というより百貨店の包装紙。だから日本には百貨店がこんなに多いんです』」

・「現在、日本には92社の百貨店があるが、その数は世界に類がないらしい。大雑把にいえば、日本の百貨店業界は92種の包装紙を販売しているのである」

・「聞けば、Tシャツの世界はシンプルらしい。岐阜県にあるメーカーから無地のTシャツを取り寄せ、それをプリント業者に発注して完成。製造原価は基本的に1枚当たりTシャツ代(500~1000円)+プリント代(500~1500円)で、自ら売っているので利益はいったんそのまま手にすることができる」

・「━━価格は『原価+利益』というふうには考えないんですか?
 『いや、まわりを見て考えました。僕のようなバカTシャツは、大体3000円から3500円くらいで売っていたんです』
 彼によると、Tシャツの相場はブランド品などで5000~6000円。ユニクロなど安いモノは1000円ほど。どちらでもない『バカTシャツ』はその間なのだそうだ」

・「『価格』とは、貨幣で表わす価値の『格』で、『値段』のほうは現実の市場取引そのものを意味しているのだ」

・「(テレビの通販番組で)実はその割引後の価格も最初から希望の内だったといえるのではないかと指摘したところ、そう叱られたのである。
『普通お店では、本当にその値段で売っているんですよ』(中略)
━━本当に割引なんですか?
食い下がると、彼女は呆れたように答える。
『本当に決まっているじゃないですか。通販番組は規制が厳しくて、値段もチェックされるんです』
━━電話で注文が入るのも?
『本当です。次々とオーダーが入るんですよ』」

・「ある中堅ディベロッパーの役員にたずねると、『価格の計算はすごいシンプルですよ』とその内訳をあっさりと明かしてくれた。不動産の値段は『不動産価格』と呼ぶくらいで、堂々と格付けされているようなのである。マンションの場合は、
 ・企画原価(土地の購入価格)
 ・建築原価(建築費用)
 ・営業費用(販売促進の費用)
 ・利益(総売り上げの20%)
 この合計額を全戸で割り振るのだという。このうち企画原価(土地の購入価格)は『やむおえないもの』。建築原価(建築費用)は『どのゼネコンに発注しても大体同じ』、利益については『下げても15%が限界』という具合に決まっており、下げるにしても営業費用を削るしかないらしい」

・「聞けば、ディベロッパーの事業はギャンブルに似て『ハイリスク・ローリターン』とのことだが、現物もモデルルームも見ずに買うのは、私にとっても一種のギャンブルであり、リスクが客に転嫁されているだけではないだろうか」

・「(不動産鑑定士は土地の値段を)どうやって鑑定したんですか?
 私がたずねると森田さんが即答した。
『役所が重視するのは変動率。つまり前年に比べて何%上がったかということです。まず先にこれが決まる』
 ━━鑑定する前に決めちゃうんですか?
『幹事のほうから「今年は〇〇%くらいアップかな」という話があって、それを受けて「じゃあ、これでいこうや」ということになる。まさにあうんの呼吸です』
 前年の地価に変動率を掛ければ今年の公示価格になる。つまり公示地価は役所の指導により、自動的に算出されるわけである」

・「彼によると『原価法』や『取引事例比較法』『収益還元法』も鑑定報告書を仕上げるために後から付ける理屈にすぎないそうだ。まず『エイヤっ!』と判断することが肝要。根拠に基づいて価格を割り出すのではなく、価格を決めてから根拠を導き出すのである」

・「大切なのは数字の辻褄ではなく、買う立場から『見て判断すること』。買う人の『エイヤっ!』を感じ取るのが不動産鑑定の肝なのである」

・「昨今、ビジネス用語はほとんどが英語である。それも必ず名詞形なので、聞いていると『〇〇とは何?』という疑問がわいてくる。例えば、『モチベーション』。訳せば『やる気』ということだと思うのだが、『やる気』とは微妙にニュアンスが異なる。『やる気』のほうは『出る、出ない』『ある、ない』というふうに、あくまで本人の意思を意味するが、『モチベーション』は『上がる、下がる』と言ったりするので、意思とは別の体温のようなものを彷彿とさせ、細かく数値化もできそうでグラフに描いてみたくなる」

・「『リスクヘッジ』もよく耳にするビジネス用語である。『リスク』は『損する危険』で、『ヘッジ』は『回避』。これはつまり『損したくない』ということではないだろうか」

・「『(前略)金融市場にしても人口にしても、日本が占める割合は全体の1桁(%)にすぎません。それなのに日本では外国資本を「外資系」などとひと括りにしてしまう。アメリカには「外資系」なんていう言葉はありません(後略)』(また明日へ続きます……)

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