WOWOWプライムで、阪本順治監督・脚本の’16年作品『団地』を見ました。
団地。ラジオから「浜村淳の『人生はサバンナだ』」。ベランダとの間のサッシを開けて、掃除を始めるヒナ子(藤山直美)。空き地には棒を拾って持つ男の子。ものが割れる音。ヒナ子が下を見ると、老婦人が落とした植木鉢に入っていた土を、スーツを来た青年が、広げた紙の上に移している。青年、老婦人に「大丈夫ですよ」。ヒナ子、部屋の奥に向かって「あんた、真城(しんじょう)さんや」「真城さん? 何で?」「知らんけど」。青年「花がケガなくてよかったですね」老婦人「ありがとう」と言って去る。ヒナ子「真城さん!」真城、見上げて「あ、五分刈りです」「ご無沙汰です」「お願いがあります」「お願いって?」「そちら802号室ですよね」「302号室です。どう見ても8階に見えんでしょ?」「802の8って8階の意味なんですか? 初めて知りました」(中略)
ヒナ子宅。ヒナ子「よくここが」真城「漢方薬局の連合会に訊きまして。これ、お米です。(ヒナ子の夫、清治(岸部一徳)に)あっ、五分刈りです」「ご無沙汰です。何年もごひいきにしてもろうたのに、突然ですいませんでしたな。それで?」「困ってるんです。山下さんの漢方薬がないと」清治「そう言ってもろうて有難いんですけど」ヒナ子「廃業は廃業なんで」「薬草は処分されたんですか?」「生薬? いや、まあ捨てきれず」「ではいつもの薬を。宅配便でも何でも送っていただけませんか?もちろん着払いで。その業者も全てこちらで手配します」「そやけど」「ありがとうございます」「強引な人やな」「どうして廃業されたんですか? あれだけの老舗を」ヒナ子「いろいろありまして、辛いことが」。真城、いきなり仰向けに倒れる。頭を抱える清治。「貧血、貧血、枕持って来て! 真城さん、大丈夫か?」。頭に枕を当てて、両手両足を伸ばしてやる2人。
薬を煎じる2人。
頭を起こして、薬を飲ませる2人。真城はむっくりと起き上がる。清治「そんなに効くんか? 僕の薬?」「はい、効果きしめんです」「てきめんです」「勉強になりました。特に日本語は難しい。本当です」。
真城、玄関で「それじゃ、かしこまりました」。ドアを閉める際、手をドアに挟む。「挟みました」。手を抜いてドアを閉める真城。(中略)
タイトルロール。
山下宅の玄関ドア。ブザーを何回も鳴らし、郵便受けから中をうかがい、我慢できなくてドアを叩き、「宅配便でーす」と叫ぶ青年。ヒナ子「はい、また頼みます」青年「あっ、はい」「次のです(ヒナ子、新しい箱を渡し)じゃ」「申し訳ないんですが」「あっ、トイレ?」「ちょっとお腹の具合が」「あんたいつもトイレうちで貸してって何でなん?」「今のところ持病としか。すみません」。トイレに駆け込む青年。清治「またか」「持病やて。ダムの決壊みたいな音してるわ」「神経質には見えんけどなあ。社会全体がノイローゼみたいなもんやから」。トイレから出てきた青年「すみませんでした」ヒナ子「あんた、何か悩みでもあんの? 特にうちに立ち寄ると」「3分以上立ってるともたないんです」「意味が分からんな」「もうすぐ分かるかも」清治「何でもうすぐ分かると分かるんや」「もうすぐじゃないかも知れん」「どっち? とりあえず下痢止めあげとこう」ヒナ子「あんたまた流してないでしょ?」「あっ、すいません」。
外出する清治。ヒナ子も外出する。「山下」の表札。
行徳君子(大楠道代)、郵便ポストの前でヒナ子に会い、「ヒナ子さん、パート?」「遅番なんです」「引っ越して半年やけど、もう慣れた?」「静かで住みやすいです」君子の夫、行徳正三(石橋蓮司)「空き室ばかり増えて。ごく近くにもう一つ公営団地できたもんだから」「この人東京人やけど下町育ちやから」「転勤族だったからあっちこっち行ったけど、東京人と言っただけで肩身が狭くなったのが、受け入れてもらえたのは大阪が初めてだ。うどんがうまけりゃいいってもんでもないだろ。てやんでえ、気風だけは誰にも負けねえって突っ張ってたら、いつのまにか自治会長になっちゃって」ヒナ子「私は何人でも大丈夫です。火星人でも」君子「新しい人が入ってくるたんびに噂する人がいるけど気にせんでもいいから」「私は何て言われてます?」昌三「ネクラ。俺は嘘は言えない」君子「生真面目って意味だから気にしないで」「気にしてません。周りの人に迷惑をかけるのだけは嫌なんで、こちらこそ何かあったら言ってください」正三「偉い。久しぶりに偉い。苦情ばかり言う奴が多くてね」。ヒナ子「お先です」行徳夫婦「いってらっしゃい」。君子「ねえ、あんた俺はうそをつかないって言ってたよね、さっき」「え?」「ほんなら答えてよ。シートンの佐伯キョウ子さんと何があったの?」「誰?それ」。(明日へ続きます……)
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)
団地。ラジオから「浜村淳の『人生はサバンナだ』」。ベランダとの間のサッシを開けて、掃除を始めるヒナ子(藤山直美)。空き地には棒を拾って持つ男の子。ものが割れる音。ヒナ子が下を見ると、老婦人が落とした植木鉢に入っていた土を、スーツを来た青年が、広げた紙の上に移している。青年、老婦人に「大丈夫ですよ」。ヒナ子、部屋の奥に向かって「あんた、真城(しんじょう)さんや」「真城さん? 何で?」「知らんけど」。青年「花がケガなくてよかったですね」老婦人「ありがとう」と言って去る。ヒナ子「真城さん!」真城、見上げて「あ、五分刈りです」「ご無沙汰です」「お願いがあります」「お願いって?」「そちら802号室ですよね」「302号室です。どう見ても8階に見えんでしょ?」「802の8って8階の意味なんですか? 初めて知りました」(中略)
ヒナ子宅。ヒナ子「よくここが」真城「漢方薬局の連合会に訊きまして。これ、お米です。(ヒナ子の夫、清治(岸部一徳)に)あっ、五分刈りです」「ご無沙汰です。何年もごひいきにしてもろうたのに、突然ですいませんでしたな。それで?」「困ってるんです。山下さんの漢方薬がないと」清治「そう言ってもろうて有難いんですけど」ヒナ子「廃業は廃業なんで」「薬草は処分されたんですか?」「生薬? いや、まあ捨てきれず」「ではいつもの薬を。宅配便でも何でも送っていただけませんか?もちろん着払いで。その業者も全てこちらで手配します」「そやけど」「ありがとうございます」「強引な人やな」「どうして廃業されたんですか? あれだけの老舗を」ヒナ子「いろいろありまして、辛いことが」。真城、いきなり仰向けに倒れる。頭を抱える清治。「貧血、貧血、枕持って来て! 真城さん、大丈夫か?」。頭に枕を当てて、両手両足を伸ばしてやる2人。
薬を煎じる2人。
頭を起こして、薬を飲ませる2人。真城はむっくりと起き上がる。清治「そんなに効くんか? 僕の薬?」「はい、効果きしめんです」「てきめんです」「勉強になりました。特に日本語は難しい。本当です」。
真城、玄関で「それじゃ、かしこまりました」。ドアを閉める際、手をドアに挟む。「挟みました」。手を抜いてドアを閉める真城。(中略)
タイトルロール。
山下宅の玄関ドア。ブザーを何回も鳴らし、郵便受けから中をうかがい、我慢できなくてドアを叩き、「宅配便でーす」と叫ぶ青年。ヒナ子「はい、また頼みます」青年「あっ、はい」「次のです(ヒナ子、新しい箱を渡し)じゃ」「申し訳ないんですが」「あっ、トイレ?」「ちょっとお腹の具合が」「あんたいつもトイレうちで貸してって何でなん?」「今のところ持病としか。すみません」。トイレに駆け込む青年。清治「またか」「持病やて。ダムの決壊みたいな音してるわ」「神経質には見えんけどなあ。社会全体がノイローゼみたいなもんやから」。トイレから出てきた青年「すみませんでした」ヒナ子「あんた、何か悩みでもあんの? 特にうちに立ち寄ると」「3分以上立ってるともたないんです」「意味が分からんな」「もうすぐ分かるかも」清治「何でもうすぐ分かると分かるんや」「もうすぐじゃないかも知れん」「どっち? とりあえず下痢止めあげとこう」ヒナ子「あんたまた流してないでしょ?」「あっ、すいません」。
外出する清治。ヒナ子も外出する。「山下」の表札。
行徳君子(大楠道代)、郵便ポストの前でヒナ子に会い、「ヒナ子さん、パート?」「遅番なんです」「引っ越して半年やけど、もう慣れた?」「静かで住みやすいです」君子の夫、行徳正三(石橋蓮司)「空き室ばかり増えて。ごく近くにもう一つ公営団地できたもんだから」「この人東京人やけど下町育ちやから」「転勤族だったからあっちこっち行ったけど、東京人と言っただけで肩身が狭くなったのが、受け入れてもらえたのは大阪が初めてだ。うどんがうまけりゃいいってもんでもないだろ。てやんでえ、気風だけは誰にも負けねえって突っ張ってたら、いつのまにか自治会長になっちゃって」ヒナ子「私は何人でも大丈夫です。火星人でも」君子「新しい人が入ってくるたんびに噂する人がいるけど気にせんでもいいから」「私は何て言われてます?」昌三「ネクラ。俺は嘘は言えない」君子「生真面目って意味だから気にしないで」「気にしてません。周りの人に迷惑をかけるのだけは嫌なんで、こちらこそ何かあったら言ってください」正三「偉い。久しぶりに偉い。苦情ばかり言う奴が多くてね」。ヒナ子「お先です」行徳夫婦「いってらっしゃい」。君子「ねえ、あんた俺はうそをつかないって言ってたよね、さっき」「え?」「ほんなら答えてよ。シートンの佐伯キョウ子さんと何があったの?」「誰?それ」。(明日へ続きます……)
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)