「世紀の顔合わせ」不破・中曽根対談
マルクス、共産党論、そして核密約
『サンデー毎日』19日号
7日発売の『サンデー毎日』(7月19日号)が「世紀の顔合わせ」と銘打った日本共産党の不破哲三前議長と中曽根康弘元首相の異色の対談を掲載しています。話題は、初めての出会いから旧制高校の思い出、国会論戦からマルクス、核密約問題までスケール大きく広がりました。
最初の論戦は40年前にこの場所で
「最初にお会いしたのは毎日新聞社のこの部屋(5階貴賓室)ですね」。不破氏は、中曽根氏にこう切り出しました。これは毎日新聞が1968年から 69年にかけて安全保障問題で各党を順に政権与党と野党に見立てた政党討論会を行ったときのことです。「共産党政権への質問戦」(69年)のとき、大臣役 が不破氏で「野党」自民党からの質問者のトップバッターが中曽根氏だったのです。
これが、中曽根氏51歳、不破氏39歳での初論戦でした。
不破氏が「中曽根さんは『共産党政権になると徴兵制をやるのか』なんて(笑)なかなかの“野党”ぶりでした」、質問戦でも「引き際」を心得ていてパッと話を変える、「うまい戦法をとる政治家」だったと振り返ります。
国会論戦でも、70年の「沖縄国会」でのエピソードが紹介されました。不破氏が「安保条約の建前からいえば、どの基地を返してもらうかではなく、 どこを貸すべきかの視点で議論せよ」と迫ったとき、質問後、廊下で中曽根氏が待ちうけ「今の話が沖縄の根本問題なんだ」と“激励”したのです。
中曽根氏、 マルクスの話に水を向けて
不破氏の『マルクスは生きている』を送ってもらったという中曽根氏。マルクスの『資本論』に徳川幕府末期の日本が出てくることについて、「駐日 (英)公使オールコックの日本旅行記『大君の都』を読んでいたから、との解釈が(不破氏の本に)出てきますね」と水を向けます。不破氏はマルクスと日本と の関係について調べた経緯を説明。「選挙で多数を得て社会主義政権を作るべきだと説いた革命家は、マルクスが最初だと思いますね」と紹介します。
中曽根氏もマルクスについて「根底には“平等の思想”というような考え方がありますね。資本主義の中の『不平等的要素』や『弊害』に対する指摘は非常に鋭いし、現実においても力があった」と感想をのべました。
中曽根氏がマルクスを学んだのは「旧制高校時代」。お互いの旧制高校時代の思い出にも花を咲かせました。
「『おっかない』党だと思っていたが」(中曽根氏)
ここで、中曽根氏が昔、共産党をどう見ていたかを語ります。「戦後の一時期、共産党が暴力革命に傾斜した印象が強く、『おっかないものだ』と思い ました」。そのイメージを変えたのが、不破氏の登場だったと振り返ります。「ところが、不破さんのような市民的で教養主義を備えた幹部が出てきて、その言 動や行動で共産党のイメージを修正した。…『これは強敵が現れたな』と思いましたね」
志位・オバマの書簡交換、「政権交代」論…
対談は、内外の今の政治にも及びました。国会論戦の近況に続いて話題になったのは、核兵器廃絶をめざすと明言したオバマ米大統領と日本共産党の書 簡交換。中曽根氏は「いいチャンスを狙ったね。共産党の外交戦略が柔軟性を持ってきた」と評価します。不破氏は「大変な評価をいただきまして(笑)」と応 じました。
日米核密約をめぐる熱い議論のあと、対談の結びとなったのは、次の総選挙への見方でした。
中曽根氏は「次の総選挙で野党政権が成立する可能性もあり得る」とし、「政党や政治家は今から大変化への処し方、構えを備えた認識力を持たなきゃ いかんでしょう」と発言。続いて不破氏。「『政権交代』という4字だけが表に出て、現政権への対抗軸が明確でない点で、状況は93年とよく似ている。結 局、当時の非自民連立政権(細川政権)がやったのは政党助成金と小選挙区制だけ…『政権交代』だけで選挙をやったら何が起きるのか、今回もまったく分かり ません」
それを受ける形で、中曽根氏が「不破さんと私はそういうことも心得て、いろいろ判断していかないといけないね」と締めくくりました。
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