在日コリアン学者が初の韓国木簡学会会長に
イ・ソンシ早稲田大学教授
脱民族史観を持つ朝鮮半島古代史研究者
「韓中日の研究成果の共有で学会を国際化
さまざまな専門家の学際間研究の活性化も」
4日、韓国木簡学会会長に就任したイ・ソンシ早稲田大学教授。国外の人物が韓国の学会の首長の座に就くのは初めてのことだ//ハンギョレ新聞社
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日本で生まれ学んだ在日(在日コリアン2世)の研究者が、韓国の歴史学界で初めて学会の会長になった。
朝鮮半島の古代史と木簡・金石文研究が専攻の早稲田大学文学学術院のイ・ソンシ教授(65)は、4日に開かれた韓国木簡学会総会で会長に推戴された。名古屋出身で20年あまり韓日学界を行き来しながら研究活動を行ってきたイ教授に、チュ・ボドン前会長(慶北大学教授)をはじめとする学会関係者らが木簡学を伝える役割を担ってほしいとその椅子を任せた。学縁や地縁などが左右する韓国の学会の風土で、国外の人物が学会長を務めるのは前例のないことだ。
2007年に創立された木簡学会は、木片の文書である木簡や古い石碑などに刻まれた古文字記録を解析、研究する歴史学術団体だ。特に、この日の総会に先立って開かれた学術発表会で公開された慶尚南道咸安郡(ハムアングン)の城山(ソンサン)山城から出土した赦免木簡が、6世紀の新羅が法治国家であったことを実証する韓国最古の地方行政文書として確認されメディアに報道されると、彼は鼓舞された表情をありありと見せた。
「韓国木簡学会は韓国の学界で最も躍動的な学問活動を展開してきました。新羅、百済領域の遺跡から木簡史料が続々と出土し、中国や日本の木簡とも内容や形式がつながる手がかりが見つかっています。学会を東アジア木簡学会として国際化する目標を持っています。東アジア木簡学という大きな枠組みで、韓中日共同研究を本格化するつもりです」
木簡とは木片に官庁の行政報告などを記録した古代の文字記録だ。日本では約3万点、中国では約2万点、韓国では約800点が今までに出土した。古代東アジア共通の漢字文化圏を示す文字遺産であり、その時代の具体像が込められたタイムカプセルともいわれている。イ教授は特に韓国・日本の木簡の親縁性に注目すべきだと指摘した。「これまで日本木簡学会に韓国側の発掘研究成果を紹介してきたが、最も大きな結果物として韓国の木簡が日本の木簡のルーツと密接だという点を取り上げるほど、両国の研究交流が重要な関心事になった」と話した。今回出てきた城山山城の出土木簡も「某の前に白(もう)す」という「白」の文字で文章が終わる「前白文書」形式だが、7世紀の日本の行政文書の木簡に見られる典型的な特徴だという。日本に文書の形式が伝わったと推定できるという見解だ。
「昨年、ベトナム北部で漢字を刻んだ4世紀頃の石碑が出たが、満州・集安の高句麗碑と似ています。この石碑を含め、中国古代漢字文化が周辺にどのように受け入れられたのかについて、4月に国際学術大会を開きます。私が提案したのですが、学会会員たちの瞬発力と情熱のおかげで実現できます」。彼は国民国家の「一国史」の代わりに古代史料を客観的に再構成し、古代東アジア史を当代の立場から見るという脱民族主義史観を力説してきた。
2001年の史論書「作られた古代」で、従来の韓中日の古代史が19世紀の国民国家の登場による近代的発明だという論旨を展開して反響を起こし、広開土王碑文や百済・新羅、楽浪系文字の遺物を詮索し、古代史研究の新しい道を拓いてきたという評価も受けている。2013年に創設された早稲田大学韓国学研究所で活動しながら、昨年、韓国国宝78号の半跏思惟像と日本の中宮寺の半跏思惟像の韓日巡回展を実現させるのにも一役買った。イ教授は、「国民国家で疎通していた20世紀の歴史学を超越するには、多様な分野の研究者と協力し学際間研究を活性化しなければならない」として「木簡学のグローバル化」を誓った。
文・写真ノ・ヒョンソク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )