長い火箸で取り出して、鉄の台の上に載せてかなづちでたたいて形をつくる。
その隣は松田の鍛冶屋だった、ここにはよく見に行った。
鎌、各種の鍬、包丁、日本刀まで作っていた。表は2間ほどの間口でガラス戸が4枚ほどあり入って左側にフイゴとコークスを燃やす場所、
その横にコークスがつんである。
右には出来上がった、鍬や包丁が並んでいた。土間全体が、土で作った窯のような形で裏に普通の部屋があったが、
裏に行くのにちょうつがいでとめた動く戸がはめてあった。
その戸の中に狭い引き戸がついていたが、その戸をあけてそこにすわって作業を見学するわけだ。
どんな会話をしていたのかは覚えていないが、30分~1時間見ているのだからいろんな話をしていたのだろう。
コークスが真っ赤になったところへ鉄の塊を入れる。長い火箸で取り出して、鉄の台の上に載せてかなづちでたたいて形をつくる。
冷えてきたらまたコークスの中にいれる。火力が弱ってきたら、ふいごを動かして風を送る。
この操作を何度も繰り返してだんだん鍬や包丁に変わっていく。備中ぐわは3本にわかれているので、鉄をつながなければならない。
真っ赤に焼けた2種類の鉄を重ねて手早くたたく、数回繰り返すと鍬らしくなってくる。
昔は、白装束で日本刀を作っていたこともあるという。おっさんのちょっちした自慢話も聞かされた。
5歳ほど上のAさんともう少し上のRさん姉妹がいた。Rさんは小学校の先生になった。