■□その土手は向日市ではない…
「今、夜は小畑川の土手にある軽自動車の中で寝ています」
「そらあかんで! 冬になったら死んでしまうで、本籍はどこになってるのや」
「向日市です」
「向日市に本籍があるのなら話は早い、市役所に行こう」
一緒に市役所に行くと「どこに住んでおられるのですか」と聞かれ、「小畑川の軽自動車」と話しました。
「困りましたね」
「何が困ったのや」
「その場所は長岡京市です」
「本籍が向日市にあっても、車の現住所が長岡京市? 変なことをいうな!」
詰め寄っても受け付けないので、私は「わかった、長岡京市に行くから、この方の事情を担当者に伝えておいてほしい」と頼んで、長岡京市に行き、事情を話し、生活保護の手続きをしました。何日かしてアパートの敷金・礼金、生活保護費を受け取って住宅業者を訪れ、屋根の下で暮らすことができるようになったのです。長岡京市の職員からは、「本来なら私たちがしなければならない仕事をしていただいてどうもすみません」とあいさつがありました。
■□ホームレスと貧困ビジネス
真夜中のことです。燃えないゴミを南山児童公園前の集積所に持っていくと、缶を集めて生活している人が二、三人ウロウロしています。空き缶といえども市の管理しているものを無断で持っていくのだから、本来なら「窃盗罪」が適用されるのですが、私はその人々を訴える気はありません。暗い中で作業している人の中に、見覚えがある人がいました。
「○○さんと違いますか?」
声をかけると、「そうです」と応えがありました。
「何か事情がありそうですね? 夜はどこで寝たはりますか?」
「公園です」
「そらあかんわ? 明日昼過ぎ市役所へおいで!」
大阪で生活保護をもらって暮らしていた彼は、家を世話するという話にひっかかって、暴力団のような連中に手帳を取り上げられ、あばら家でにぎり飯程度のものを食べさせられて、生活保護費をピンはねされていました。そこに警察の捜査が入り、手帳を取られていた者が参考人として一人ひとり呼び出されることになったそうです。ところが彼らは「叩けばほこりが出てくる」弱みをもっているし、警察が嫌いだから、呼び出される前に逃げてきたというわけです。彼はその事件の新聞の切り抜きを持っていて私に見せました。
「苦労してたんやな、嫁も子もいたのと違うの?」と聞くと、「はように逃げられた」
「兄弟はどうしてるんや」
「いるけど勘当されてる。若いときに迷惑かけてるから、行ったら大喧嘩になる」
「そうか。けどいつまでも公園で寝てるわけにもいかへん、君は以前生活保護を受けていたのだから、 その続きとして向日市で申請しなおせばよい。どうするか」と聞くと「たのみます」と頭を下げました。
担当者を呼んで事情を話し、結局、向日市に近い場所にある、京都市内のアパートを借りて、京都市から生活費が届くようになりました。その後一度議員控え室に来たあとは連絡もありませんが、どうしているか心配しています。