みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

「おひとりさま本」ブレイクの軌跡/法研「おひとりさまの老後」(新文化10.4)

2007-10-13 09:07:52 | ジェンダー/上野千鶴子
出版業界唯一の専門紙(らしい)「新文化」に、
『おひとりさまの老後』の誕生秘話がのっている。

7月に刊行してから、たった3ヶ月で20万部を突破した
『おひとりさまの老後』ブレイクの「奇跡」。
語っているのは上野さんと編集者の弘由美子さん。

この本にして、この人あり。

著者と編集者の幸せな出会いと信頼関係で
よい本が誕生するというのはほんとうだ。

「おひとりさま本」ブレイクの軌跡
法研「おひとりさまの老後」(新文化10.4)




ちょっと長いけど、興味のある方はお読みください。
(後半は記事を拡大して読んでね)

--------------------------------------------------------------------
社会学者・上野千鶴子さんが25年ぶりの書き下ろし
「おかえりなさい、シングルアゲインの女たち」「21世紀はおばあさんの世紀」「後家楽」--こんなユーモアを含んだインパクトあるフレーズが次々に登場し、「シングルとして生きる老後に不安を持つなかれ」とエールを送る『おひとりさまの老後』が大きな反響を呼んでいる。もうすぐ20万部の大台を窺い、幅広い年代の女性のバイブルともなりそうな勢いだ。著者は社会学者の上野千鶴子さん。25年ぶりに書き下ろしを上梓した影には、出版元の・法研編集者との講師に渡る信頼関係があった。
(本紙・芦原真千子)

発売3ヶ月弱で19万部

9月5日の夕、ジュンク堂書店池袋本店4階のカフェは、異様な熱気に包まれた。『おひとりさまの老後』の刊行記念イベントで、著者の上野千鶴子さんと、『負け犬の遠吠え』などで人気のエッセイスト、酒井順子さんの対談が行われたのだ。
 事前予約には申し込みが殺到、当日会場には、すし詰め状態で椅子が並べられ、通常のイベントをはるかに上回る70人が参加した。その9割は女性だが、なかには男性の姿もあった。
 二人の軽妙なやりとりに沸く会場の片隅で、その様子を微笑みながら見守っていたのが、法研出版事業部の弘由美子さん。『おひとりさま~』は、弘さんが時間を費やして著者との信頼関係を築き、企画を練り上げ、ていねいに編集作業を重ねて生み出した、愛娘にも等しい本である。この"娘"は7月1日に初版1万部で誕生し、13日に2刷、24日には3刷5000部、その後は数日刻みで、ほぼ万単位の増刷、9月下旬には16刷・19万部と急成長した。
 弘さんと上野さんの出会いは、2001年。同社が発行する「月間介護保険」の連載インタビューのゲストとして、上野さんを招いたのが最初だった。
 「当時から、いつか本を書いて頂きたいという夢を持っていました。実際にはなかなか難しいとも聞いてはいましたが・・・」。
 女性学・ジェンダー論を専門とする社会学者として、知名度・人気ともに高い上野さんの著作は、専門書であっても確実に一定数以上の部数を見込める。が、それだけではなく、医療・介護などの専門出版社、法研似合って近年一般書を手がけていた弘さんは、上野さんの研究ジャンルに興味をもち、これまでになかったような一般読者向けの本を執筆してほしいと考えたのだ。
 しかし上野さんの多忙さを知る弘さんが、それを切り出せないでいるうちに、シングル同士の気楽さから、食事をともにするなど、個人的な交流のほうが先行していった。二人とも団塊世代のキャリアウーマン。最初から"さんづけ"で呼び合うフラットな関係をもてたこと、忙しい仕事の傍ら、老親の遠距離介護を担った共通の経験をもっていたことなども、互いの理解と共感を深めるのに役立った。
 周りから見れば、-編集者と著者というより、友人同士という二人。上野さんが先輩おひとりさまたちを尋ねて各地を回り、高齢者住宅やコレクティブハウス、老人ホームにも足を運ぶ折には、弘さんも折にふれて同行し、共通の友人知人のネットワークをつくりあげていった。 「そのときどきに、上野さんが相手の方と語った内容は、一見世間話のように見えても『おひとりさま~』のなかにちゃんと反映されているんですね。ああ、あのときのあれは取材だったのかと、原稿を読みながら一つ一つうなずきました」

"最強の負け犬トロイカ体制"
 そんな積み重ねを経て、やがて二人は、「自分たちも含めたシングル女性の切実な不安に応える、安心して老後を生きるための本」を作ろうという合意に達した。弘さんは密かに、奥付に記す刊行日を、7月12日と決めていた。その日は、上野さんの誕生日である。
「それからの弘さんは、別人になって鬼のように原稿を取り立てた」と上野さん。一般読者が読んですぐにわかる内容にするためのチェックも、入念に行われた。たとえば上野さんが何気なく使った「リバースモーゲージ」。社会学の分野では常識的な用語でも、一般人にとっては耳慣れない言葉で解説がいる。そうしたチェックや確認、校閲のため、編集プロダクションの武井真弓さんが編集作業に加わった。本文中に、おおきな級数のゴチック部分をいれたのもは、武井さんのアイデアという。
 三人の共同作業を、上野さんは「最強の負け犬トロイカ体制」とあとがきで表現している。
・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・
(新文化2007.10.4)
-----------------------------------------------------------------

同じ新聞の4ページ「この人に聞きたい!」には、
上野さんのインタビュー記事も。

写真をクリックすると拡大。その右下のマークをクリックするとさらに拡大
-----------------------------------------------------------------
 この人に聞きたい!
東京大学大学院教授 上野千鶴子氏


女性学・ジェンダー論分野のパイオニアとして、つねに社会に影響を与え続けてきた上野千鶴子さん。両親の介護・看取りを経験し、自らの負いも視野に入れた上野さんは、近年、ケアの分野を研究の対象としている。その延長線上で書いた『おひとりさまの老後』葉、多くの人びと、とくに中高年の女性たちの関心と共感を呼んでいる。これからも高齢化社会に様ざまなメッセージを送り続けていくという上野さんに、本書について語ってもらった。
(聞き手=芦原真千子)

  『おひとりさまの老後』はこれまでの研究の足跡から生まれた"幸せな副産物"

--25年ぶりの書き下ろしということですが、なぜ今、本書を書こうと思われたのですか。

 「いくつかの理由、きっかけがあります。まず私自身が50の坂を越え、この先どうなるの? という思いが切実になってきたのとほぼ同時に、介護保険制度ができた。ここ数年は、介護保険を含めたケアの問題を研究の対象にしてきました。が、研究の仕事関係の文章には"私事"は書けない。でもぜひ私の文体でも語りたいという気持ちが強くなり、心にガスがたまってきてました。そんななかで、法研の編集者の弘由美子さんに出会ったことが大きかったですね。
 今までは出版社から書下ろしを頼まれると、『時間的にとても無理、10年待って』なんて断ってたんです。だから編集者とは、基本的に友人関係は作らないようにしていた(笑)。でも弘さんとは友だちモードに入ってしまい、一緒に遊んだりおいしいものを食べに行ったりというつきあいをするうちに、ぜひこういう本を作ろう、作らなきゃという機運が高まりました。だから、この本は私にとって、これまでの足跡から自然に生まれた幸せな副産物といえます」

高齢時代、長生きすれば勝ち犬も負け犬も最後はみーんなシングル

--香山リカさんの『老後がこわい』(講談社)という本にも、影響を受けたとか。

『そう、私より10歳も若い人に『老後が怖い』なんて言われたくない。もし彼女たちの老後が怖いんだったら、われわれの老後だって怖いんだから。それで『老後は決して怖くないよ』というメッセージを送らなきゃという使命感が俄然強まった。だからリカちゃんの本は、いわばロケットの推進力(笑)」

--そのメッセージを送る相手の年代は、どのあたりを中心に考えていましたか。

 『基本的には自分と同じ団塊の世代。もうひとつは30代のシングルたち。彼女たちに、勝ち犬だろうと負け犬だろうと長生きすればみーんなシングル、ひとりで生きるのが基本の時代が来るんだから、それでオッケーと言いたかった」

--それがフタを開けてみたら、世代を問わず読まれ支持されて、たちまちベストセラーになりました。

 「すでに高齢の方も含めて、みんなそういう言葉を待っていたんですね。ひとりで生きると言ったって、本当にひとりで生きてはいけない、家族にも誰にも頼らないで最後まで頑張れると言い切れる自信はない、不安だらけのなかで、それでも大丈夫ですよ、と言ってくれる言葉を。
 しかも内容は"脱力系"でPPK主義(ピンピンコロリ=前日まで元気で、ある日コロリと逝くのが理想という考え方)とは、ある意味対極の価値観。どうしても自分で解決できなければ、最後は『お願い、助けて』と言おう、と謳っているくらいですから(笑)。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
----------------------------------------------------------------------

↑記事に載っている『中央公論』11月号も買ってきて読んだ。

 




番茶も出花はとっくに過ぎて、
お茶の木にはいまうつくしい花が咲いている。


これからが旬の「おひとりさま」。

季節はまさに「白秋」。

写真をクリックすると拡大。その右下のマークをクリックするとさらに拡大
最後まで読んでくださってありがとう
「一期一会」にクリックを 
 明日もまた見に来てね
 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする