今年8月、堺市の全市の図書館の書架から5499冊の図書が、
いっせいに書庫(閉架)に移されました。
ここにいたる経過のなかで、ウラでは市議会議員の関与などがありました。
この経緯は福井のジェンダー図書排除事件と酷似しています。
今までも女性センターでは類似のことがあったのですが、今回はじめて、
公立図書館で同様のことが起きていることにショックを受けて、
この問題について調べ始めました。
ことの発端は、7月に「市民」となのる男性が「BL本が大量に図書館にある」と
市内の図書館に苦情の電話をかけたことです。
わたしは、7月下旬に匿名市民の投稿を「フェミナチを監視する掲示板」で知り
全国のどこかの図書館で図書排除の動きがおきたことを心配していたのですが、
具体的にどこの自治体で起きているのかが分かりませんでした。
9月上旬になって、掲示板に堺市HP「市民の声Q&A」がアップされたので、
堺市立図書館で起きた事件と分かり、事実関係を特定するために、
堺市に対し、図書リストと会議記録等、関連の公文書を情報公開請求しました。
わたしは、図書の種類・内容いかんに関わらず、
「表現の自由を守るため、図書の処分・廃棄をさせてはいけない」
という立場に立つものです。
事実経過を踏まえて、図書の処分は何としても食い止めたいと考えています。
図書は現在、全市の図書館で、「保2」というところに移動され、
引き続き「調査中」で、「保2」に移された図書は、
9/11付けの公開された図書リストでは、5706冊に増えています。
市民の声には
「中央図書館とお話し、書庫のBLも処分するとのことです。」とされ、
市の回答も、「すみやかに書庫入れにいたしました。
今後は、収集および保存、青少年への提供を行わないことといたします。」
と答えていて、関係者は、さらに処分を要求していくとしています。
○堺市HP「市民の声Q&A」 「BL図書を購入した趣旨や目的、またこれまでに購入した冊数及び購入費を教えてください」 (市民の声) 現在、北図書館・南図書館・西図書館・中図書館という堺市の4つの大きな図書館において、一般に「BL(ボーイズラブ)」と称される少女向け男性同性愛の本が大量に開架されています。 ・・・本日、中央図書館とお話し、書庫のBLも処分するとのことです・・すみやかにBLを換金し、他の有益な図書の購入費に当てるよう、強く強く要望いたします。 (市の考え方) ご指摘いただいた図書につきましては、出版されました初期には小説の一部として利用者からのリクエストを尊重し購入していた経緯がありました。図書館といたしましては、市民のご要望に応じて資料を提供することと、図書館として備えるべき資料を選択することの双方に、公立図書館の役割があると考えております。しかし、リクエスト数の増大や出版点数の増加とともに内容の過激化などの状況に対し一定の配慮が必要であると認識し、購入数は年をおって縮減しております。 これらの図書は、青少年の健全な育成を図る観点から、中央図書館では閲覧室に展示せず書庫入れとし、特に請求があった場合に閲覧可能としておりました。しかしながら館によっては、ご指摘のとおり閲覧室に展示していた状況がありましたので、すみやかに書庫入れにいたしました。 今後は、収集および保存、青少年への提供を行わないことといたします。 なお、お尋ねの購入冊数と購入金額の現時点での調査結果は、所蔵冊数5,499冊、金額3,668,883円です。 図書館は、青少年の健全育成にかかる読書環境の醸成について、その成長段階に応じた感性に十分な配慮を払い、情報社会において自律性や自主性をもって図書や情報を選択できるように、読書の環境づくりを推し進める責任を負うものと認識しております。 この度のご意見を真摯に受け止め、公立図書館として、市民の皆様とともに考えながら、期待と要求にそった適切な資料収集と情報提供に努めてまいります。 (分類) 公共(市)施設>図書館>図書館管理・運営 (受付日) 平成20年7月30日 (担当局部課) 教育委員会事務局 中央図書館 総務課 |
まえにも連れ合いが関連の記事をブログにアップしました。
◆現代版・焚書する人たち(てらまち・ねっと 9/21)
匿名市民側の図書排除の言い分や経過について知りたい方は、
長くなりますが、順番に以下の板の「過去ログ」をさかのぼって読んでください。
(投稿者「アンデルセン(途中からバーク)」)が匿名市民と推察)
●「フェミナチを監視する掲示板」
「公権力を濫用し、『男女共同参画』の名を借りて文化破壊、
家族否定の『ジェンダーフリー』政策を推し進めるフェミ・ファシズムを告発し、
国民の注意を喚起するBBSです。」
堺市図書排除事件に関する公文書はひととおり入手できたのですが、
思い立ったらすぐ実行する尻軽なわたしたち。
「百聞は一見にしかず」。
現場を見てみたくて、関西に行った翌日、堺市中央図書館に行きました。
現場に行くといろんな発見があり、おもしろかったです。
今回の堺市の問題は、10月28日になって『世界日報』にも載りました。
『世界日報』の記事がきっかけで、事件が表に出るのは、
福井事件と同じパターンだ、と思っていたら、
この報道を受けて、また「フェミナチを監視する掲示板」に、
「堺市図書館BL(ボーイズラブ)本のその後」のスレッドが立ち、
バークが「図書館から処分させることの回答を得た」ことや、
「政治家の介入の効果」を明言しています。
「堺市図書館に大量の同性愛小説」(世界日報 2008.10.28)
このような匿名市民からのメールや電話のクレームで、
大量の図書を右から左へ動かし、処分まで考えているなんて、
信じられません。
堺市立図書館には、すべての市民の知る権利、学ぶ権利を保障した、
全国に誇れるすばらしい「資料収集方針」があり、
しっかりした「資料除籍基準」もあります。
今回の特定図書を排除しようとする行為は、
思想の自由、表現の自由は憲法に定められた基本的人権を侵害し、
かつ、禁止された検閲であって、日本国憲法に違反していると同時に、
これらの規定にも違反しています。
「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会 1979年5月改定) 図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、 資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。 この任務を果たすために、図書館は次のことを確認し実践する。 第1 図書館は資料収集の自由を有する。 第2 図書館は資料提供の自由を有する。 第3 図書館は利用者の秘密を守る。 第4 図書館はすべての検閲に反対する。 図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまでも自由を守る |
堺市立図書館および行政関係者は、
図書館に対するこのような不当な圧力に屈することなく、
資料収集の自由を放棄したり、紛糾を恐れて自己規制したりしないで、
市民の知る権利、表現の自由・言論の自由を守るために、
毅然としてたたかってほしい。
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以下は、「堺市立図書館 資料収集方針」の基本方針です。
堺市立図書館 資料収集方針(1990年3月1日) 基本方針1 すべての市民の知る権利、学ぶ権利を保障するために、図書館サービス網の総力をあげて、市民への資料提供を無料で行う。 「市民への資料提供は、市民の図書館に対する期待と要求にそった資料収集を前提としている。 したがって、リクエストのあった資料は最大限提供するよう努める。」 「図書館サービス網は、構成する館各々の活動の独白性を尊重しつつ、総体としての資料の豊かな蓄積と、その流通によって発展するものである。 基本方針2 「2.すべての市民を奉仕対象とする公立図書館として、当面する次の課題にそって収集を行う。 (1)市民が資料の利用を通して学び、楽しみ、豊かな生活を創造するのに役立つ。 (2)市民が仕事のためや社会生活を送る上で、必要な知識や惜鞄を得るのに役立つ。 (3)子どもたちが読書の喜びを発見し、情緒豊かに成長していくのに役立つ。 (4)若者たち(ヤングアダルト)が多様なメディアによる資料を介して、自己の可能性を発見し、健やかに成長するのに役立つ。 (5)高齢者が、地域社会のなかで生きがいを持ち、社会参加するのに役立つ。 (6)図書館利用に障害のあるすべての人々が、市民として平等に図書館サービスを受けるのに役立つ。 (7)人権を守り、差別のない社会を創るために役立つ。 (8)地域社会の一員として、地域の文化や行政に関する理解を深めることに役立つ。 (9)主権者としての市民が、国政や地方自治など時事に関する理解を深め、行動することに役立つ。 これらの事項を達成するために、図書に限らずあらゆるメディアによる資料を収集の対象として考える。 基本方針3 資料収集にあたっては、『図書館の自由に関する宣言』を基本精神とし、思想・信条の自由は最大限に生かすことを確認する。すなわち (1)多様な、対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集する。 (2)著者の思想的・宗教的・党派的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない。 (3)図書館員の個人的な関心や、好みによって選択しない。 (4)個人・組織・団体からの圧力や干渉によって、資料収集の自由を放棄したり、紛糾を恐れて自己規制したりしない。 (5)市民の知る権利は、表現の自由・言論の自由とともに出版の自由のもとに、はじめて達成できるものである。書籍や情報の流通に深くかかわっている図書館は、書店では入手困難な出版物も、十分注意して収集し、市民に提供する役割をもつ。 資料の収集・提供に携わる図書館員は、自律的規範としての『図書館員の倫理綱領』を尊重して、その職務を遂行する。」 基本方針4 「図書館の収集した資料が、どのような思想や主張をもっていようとも、それを図書館および図書館員が支持することを意味するものではない。 民主主義の基本は、個々の多様性を認め合うことであり、各々の資料が表現する思想や主張は、一人ひとりの読者が判断するものである。そのためにも、図書館は出版流通にのりにくい資料も含めて、さまざまな考え方をもつ資料をそろえ、利用に供さなければならない。」 (以下略) |
「ボーイズラブ」はだれにとって有害で不適切なのか?/新聞各紙の報道 (11/5)
参考までに、今回の事件に先行して2006年におきた
福井「ジェンダー図書排除」事件の一連の経過を書いたものを紹介します。
『学会ニュース』日本女性学会 第108号 2006年11月 ■特集 バックラッシュ関連の動き 福井・ジェンダー図書排除事件から 寺町 みどり 事件は、2005年11月、男女共同参画推進員からの「生活学習館の図書の内容を確認し不適切なものは排除するように」との申し出に始まる。福井県は「情報の提供は学習する上で必要である」と公式に回答し却下したが、その後153冊の排除本リストを持ち込んだ推進員の排除要求に屈し、2006年3月下旬、図書を書架から撤去した。 5月に事件の一報が届いた翌日、わたしは福井県敦賀市議の今大地はるみさんと関連の「公文書のすべて」を情報公開請求。同時に、福井県に対し「住民監査請求」と「抗議文」提出というダブルアクションを起こした。 県は153冊の図書のすべてを「誹謗中傷や人権侵害、暴力的表現などの公益を著しく阻害するものがないか」を確認し、問題がないとして書架に戻した。 本を戻せば一件落着ではない。図書の排除は「思想・表現の自由および知る権利の侵害」であり、図書の内容の精査は「検閲」である。 上野千鶴子さん、江原由美子さんなど排除本リストの著者・編集者等で請求した情報公開では、5枚の「図書リスト」は「公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがある」としてすべて「黒塗り」。わたしたちは処分を不服として、情報非公開処分取消訴訟(原告20人/代表・上野千鶴子さん)の準備をはじめた。この動きを知った福井県は153冊の図書リストを公開した。勝てると確信していた提訴は「幻の訴訟」となり、わたしたちは8月26日に予定していた提訴集会を抗議集会に変更して開催した。集会では「福井県男女共同参画推進条例」に基づく「苦情申出書」を呼びかけ、80名(42人は福井県民)で提出した。(事件の詳細は「みどりの一期一会」)。 図書排除の抗議運動は、今大地さん、上野さん、行政訴訟の準備をすすめた寺町知正さん、事務局のわたしの4人を中心にすすめてきた。 自治体の政策は「条例」が根拠であり、図書の選定に国の権限は及ばない。いかなる理由であれ、権力による図書の選別・排除は許されない。図書の排除とその後の混乱は、行政のことなかれ主義と隠蔽体質が引き起こした。わたしたちは迷走する福井県に対し、法や制度を熟知し、公的な手法でたたかってきた。 恣意的な図書排除(選別)はどこでも起こりうることだ。このような動きには、まず「図書の選別・排除は違法と認識すること」が不可欠だが、さらに、(1)女性センターなどの公正な運営ルールと図書選定の透明性の確保、(2)法・制度を熟知して市民が日常的に行政や議会の動きを監視、(3)公的手段を使って対抗するノウハウの共有、(4)指定管理者委託の「公の施設」を情報公開制度のブラックボックスにさせないこと、などが必要だと思う。情報公開制度を使って事実関係を精査し、問題を明らかにすることによって、有効な解決手段を選択することが可能になる。 わたしは学問とは無縁の市民だけれど、現場の市民運動でノウハウを培ってきた。法や直接民主主義の制度をつかった現場の実践と研究者も含めたネットワークを広げ、知恵と手法を出しあえば、各地で起きる組織的なジェンダー・バッシングに対抗できると思っている。今回の事件の成果は、その一例である。 |
堺市・図書排除事件については、あすもまた続きを書く予定です。
ではまた。
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